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act 3

金髪の短髪。背はディアナよりも、15センチほど高い。

グレーのシャツに、細めのパンツ。なのに、その体には、しっかりとしている。きっと余分な肉なんて、一つとしてついていない。

そして、一瞬だけ見えたグリーンアイ。

「ご、ごめんなさいっ」

間違っても、見とれてたなんて考えたくもないけれど、いまさら、ディアナは頭をさげた。

その頭をあげた時に視界の中に入ったのは、もうすでに歩きだしている背中。あまりに一瞬のことで、ディアナは、それこそ、息をするのも忘れていたようだった。

そしてシンとしていた、ディアナの周りが、騒がしかったままだったと、気づいた。

「ディアナ~!」

取り残されたディアナに、さっきからずっと叫ばれていたであろうノアの声がやっとと、耳にはいる。

警備員のその隙間から、懸命になって、手をさしのべていた。ディアナはその手をとった。

瞬く間にうもれた人ごみの中、あの瞬間、助けてくれたのは、あの人だと、ディアナは確信していた。


翌日、ディアナはスクールではなく、教会へいた。

去年、18歳の誕生日を迎えたことをきっかけに、子供好きがこうじて、教会が主催する子供会へと入会した。この場所には、主に恵まれない子供達が集まっていた。


ディアナは近くで借りている農園で、野菜を収穫していた。

リクトアクトでは、季節限定の野菜は存在しない。年中ありとあらゆる野菜が収穫できる。その要となっているのが、天属性を持つ能力者だった。もう何年も、リール教授が、ここら辺いったいの天気を管理している。一年前くらいに、めったに荒れない天気が、大嵐になって大変だった事があった。


原因は夫婦喧嘩であり、奥さんであるマリアさんが家からでていってしまった事。

リール教授の落ち込みは半端じゃなく、このままでは、街が沈没してしまうんじゃないかと本気で心配した街の皆が、マリアさんに、どうか仲直りをしてやってくれと頭を下げにいった事は、記憶の片隅にある出来事のひとつ。



教会の鐘が三度なると、それは正午の合図。子供達がいっせいに大広間へと集まってくる時間だった。

収穫した芋の皮を皆でむき、それを用意していた大きな大きな鍋にといれる。

水属性のシスターアリが、両手を空へと伸ばすと、彼女の掌に、ふわふわと水の塊ができた。ほどよい大きさになったら、それをまるでボールをゴールポストへといれるように、鍋の中にシュートした。


ばっちゃ~んと大きな水しぶきを飛び散らせながら、芋を大量にいれた鍋の中に水がたんまりと入った。すると次は、火属性のシスターカミールが大きく腕を回した。わぁっと言う子供たちの歓声とともに現れたのは、柔らかい炎の塊が、鍋を包み込んだ。ほんの数分すると、鍋の中からグツグツと湯が沸騰する音が聞こえてきた。カミールが腕をゆっくりおろすと、それに伴って、火は小さくなり、巨大な鍋は地へとついた。パチンと指をならすと、跡形もなく火は消え去った。

「後は、30分ほど待つだけよ」

大きな鍋は、余熱でグツグツと音をたてている。

子供達は、毎日ちょっとだけ見せてくれる、シスター達の属性能力のパフォーマンスを、こうしてみるのが大好きだった。

勿論、その中の一人に、ディアナもいる。


「ねえ、ディアナ。何かディアナも見せて」

まだ幼い子供が、手をひっぱってディアナにいう。その眼差しはとてもキラキラしていて、何をしてくれるのだろうと期待にみちている。ディアナはふわりと笑った。

「そうだね、何を見たい?」



教会で昼食を済ませたディアナは、午後からスクールへいくために、シスターたちにあいさつを済ませて、街までの一本道を歩いていた。すると上空の遠く向こうから、確かに今、名前を呼ばれたような気がして空を見上げた。


「ディアナーっ」

聞こえた声は、確かなものだった。ディアナの南方向、空高い位置から聞こえてくる声は、どんどんと近くになる。

もうスピードでディアナに突っ込んできたと思ったのは、白いリボンをまるで、ブランコのように尻の下にしき、両手で端っこをつかんで、キュキューっと止まった、サーシャ。

夕べは帰れないと電話があったけれど、どうやら、彼女も今、帰り道だったらしい。

サーシャの属性は飛翔属性。親譲りのその属性は、飛翔属性の中でも優秀。本当は、何も持たなくても空中をいききできるけれど、彼女いわく、これは自分のスタイルの一部だそうだ。


「ね、乗ってく?」

白いリボンは、ディアナと、サーシャを包む。その端っこをサーシャはつかむと、もう片方をディアナに持たせた。

つま先をトンと浮かせると、サーシャの足元は空中に浮く。白いリボンは、ディアナをきゅっとしめると、その体をふわりと浮かせた。

初めて、サーシャに乗せてあげると言われたとき、ドキドキしながら乗ってみたけれど、二人分の体重を支えるほどの力をまだ持ってなく、リボンがちぎれてしまった事があった。その後、縄や綱でやってみたりはしたけれど、重すぎてとばなかったり、思う方向へ飛ばなかったりで。様は、サーシャの能力が足りないという結論が分かり、いろんな経験を重ね、今の二人がいる。


ふたり分の体重を抱えているはずなのに、白く細いリボンは、まったくぶれる事なく安定している。ゆっくりと地上から離れた二人分の足は、一気に空高く舞い上がる。空気の抵抗が、体に顔にとぶつかるけれど、それが気持ちよくてたまらない。

「ひゅ~~~っ! いっちゃうよ~~っ」


思い切り声を出したのは、サーシャ。

このスピードに慣れるのは時間がかかったけれど、今ではもう、お手の物だとばかりに、二人して、両手をあげた。

真っ青な空の中、まるで風の一部になったように、二人はコテージへと消えていった。



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