第7話『襲撃』 (光)・前編
今回は(光)を2部構成で執筆させていただきます。
~ライテウス家・正門前~
あれからおよそ小一時間後、俺達を乗せた馬車は本日の宿泊先であるライテウス家へと到着した。
「ようこそ、おいでくださいました……私は当家の執事をしております者でございます」
ライテウス家の正門前に到着した俺達を待っていたのは初老の執事だった。
「残念ながら今、主は外出中なのですが間もなくお帰りになりますのでどうぞ先にお入り下さい」
そう言うと初老の執事はにこやかに笑いながら俺達をライテウス家へと案内し始める。
「荷物は侍女の人達が持って来てくれるそうなので私達は先に屋敷へ入りましょうか?」
対してのんびりとした口調でマリーはそう言って初老の執事に付いていく。
「…………」
流石にマリーの専属護衛をしている身としては如何なる理由であれ、マリーから離れる訳にはいかない。
先程から感じる嫌な予感を胸に抱きながらも俺はマリーの後を追った。
~ライテウス家・エントランス~
「随分と暗いですね兄ぃ様」
ドアを開き、ライテウス家に入った俺達はいきなり蝋燭の火すら灯っていない薄暗がりなエントランスホールへ通された。
「……んっ?」
その時、不意に何処からか視線を感じた。
しかし明るい場所から突然、暗がりにきたせいか眼や感覚のピントが微妙に合っていない。
「あ、あれ?執事のお爺さんが居なくなってる……」
おまけに気が付けばマリーの前を歩いていた初老の執事の姿が煙の様に消えていた。
(もしかして罠……か?)
マリーの身の安全を最優先としる為に俺はマリーを守る様に彼女の前に立つと然り気無く両腰に携帯していた風迅と雷迅を引き抜ける態勢を整える。
「…………」
そして自分の五感を身体に集中させ、いつでも攻撃可能な間合いを形成する。
刹那。
俺の右側から白い円盤状の物体が回転しながら俺目掛けて飛んで来た。
本来ならば難なく回避する所だが今は俺の後ろにはマリーが居る為に回避は出来ない。
「ふんっ!!」
仕方なく俺は鞘に収まったままの風迅で白い円盤状の物体を叩き落とす。
「これって……お皿?」
俺の代わりに後ろに居るマリーが小さく白い円盤状の正体をボソリと呟いた。
「ストライク……クロー!!」
次の瞬間、全身を黒いマントで覆い隠した謎の男が大声を発しながら二階から俺に向かって飛び出してきた。
その謎の男の両腕には長い鉤爪が付いた手甲が付いており、黒いマントも相まってその姿はまるで黒豹の様だ。
(……っと、冷静に分析している場合じゃないな)
冷静な分析も程々に俺は風迅と雷迅を鞘から引き抜くと同時に二つをクロスさせて、エントランスの二階から強襲してくる謎の男に対して迎撃を行う。
カキンという鈍い金属音と共に俺達は互いに自分の武器で相手の初撃を上手く弾く。
「くっ!」
「兄ぃ様!!?」
上手く相手の初撃を弾く事は出来たが衝撃のあまり思わず地面に片膝を折る。
「チッ!」
対して謎の襲撃者も初撃を上手く弾かれたのが気に入らないのか舌打ちをしていた。
(……分が悪いな)
襲撃者は以前に戦ったクーゲル士爵とは比較にならない程の実力の持ち主だ。
加減して勝てる相手ではなく本気で挑まないと太刀打ち出来ない。
それになりより、マリーを危険に晒す訳にはいかない。
「……マリーシア様は私から離れて何処かの物陰に隠れていて下さい」
俺はマリーにそう指示すると謎の襲撃者を射抜く様な眼で見つめる。
「嫌です!兄ぃ様、私も一緒に「マリー!!!」」
しかし、マリーは俺の身を案じていて拒否しようとするが俺は大声でマリーの言葉を一蹴する。
「…………」
俺の大声を聞いたマリーは体を一瞬だけビクリとさせると何も言わず静かに俺から離れて行った。
「意外と律儀だな」
マリーが俺から離れたのを確認すると俺は静かに襲撃者に対してそう言い放つ。
何故ならば謎の襲撃者は意外な事に俺とマリーのやり取りの間、何も仕掛けては来なかったからだ。
「…………」
謎の襲撃者は俺の言葉に一切、返答せずに無言で鉤爪を構える。
(……成る程な)
今の沈黙で二つ程、判った事があった。
一つは襲撃者はマリーを傷付ける気はないという事。
現にマリーが物陰に隠れるまでの間、ヤツは一切の攻撃をして来なかったからだ。
つまり、自分の間合いに居ては困るという事だ。
そしてもう一つはヤツのターゲットは最初からマリーではなく“俺”ということ。
ヤツの獰猛な獣の様な視線は常に俺に合わさり、警戒している。
この闘い自体がヤツにとって何らかの意味のあるモノなのだろうが俺は負ける訳にはいかない。
「さぁ……続きを始めようかっ!!」
そう言って俺は改めて風迅と雷迅を構え直す。
――何故なら俺の後ろには“譲れない者”が居るから――
最近、執筆できる時間が少なくて字数が減ってきてる……><