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恋愛奇譚 ~盲目的な愛のカタチ~  作者: 足利 士郎
第2章『サイアーム帝国編』
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第6話『悪寒』 (光)


 オリビエ湖で何故かマリーシアの逆鱗に触れてから約四日後、俺達はようやく最終目的地であるサイアーム帝国の帝都カタルシアに到着した。


 「……此処が帝都カタルシア……」


 初めて訪れた帝都カタルシアの風景にマリーは完全に飲み込まれていた。


 無理もない……自分が今まで窓の外から見てきた王都の風景とは明らかに違うのだから。


 そんなマリーに対して俺は機嫌が治ったマリーの姿に心底、ホッとしていた。


 何せオリビエ湖の一件から帝都カタルシアに到着するまでの間、マリーはかなりの不機嫌で馬車の中では皮膚がピリピリと感じる程の沈黙に包まれていたからだ。


 「式典が終わったら一緒にサイアームの観光に行こう」


 結局、幾度と無く繰り返された説得の末に、本来は予定されていなかったサイアームの観光を条件にようやくマリーが許してくれた。


 その時の交渉はまさに筆舌に尽くしがたいモノだったが何にせよマリーの機嫌が治ってくれて何よりだ。


 「マリーシア様御一行の方々ですね?御話は伺っておりますのでどうぞお通り下さい」


 ふと、そんな事を考えていると不意に馬車の外から男の声が聞こえてきた。


 その方向に視線を向けるとそこには二人のサイアームの兵士達が俺達に語り掛けてきていた。


 「公爵家へはこちらの道程を真っ直ぐに進んだ先にあります」


 しかし何故か兵士達は俺達を皇帝の居る居城へは案内せずに公爵家への道程を話してくる。


 「……もしかして、おじ様から何も伺っていないのですか?」


 道程を聞いた馬車は再び動き始めると同時に俺が不思議そうな顔をしていた事に気が付いたのかマリーは俺に小さく小声で話し掛けてきた。


 「式典の前日までは何かと慌ただしいので、私達を満足させられるおもてなしが十分に出来ない可能性がある為にサイアームでは名門として知られている公爵家へ招かれているんですよ」


 そう言ってにこやかに笑うマリー。


 (……そんな話は父さんから何も聞いていないぞ?)


 対して俺は情報の漏れがあった事に言い知れぬ不安を感じた。


 「それで……今日、世話になる公爵とは?」


 幸いな事にマリーはきちんとした情報を持っている様だから直接、聞くとしよう。


 「サイアーム帝国建国時から存在したとされる名門“ライテウス”家です」
















 …………何?


 ライテウス、ライテウス、ライテウス……この単語に再び脳裏を過る嫌な予感。


 先ずはライテウスという単語。


 次に事前に知らされていなかったライテウスの情報。


 そして、サイアームで執り行われる式典。


 これら三つの要素が俺の心の中でパズルの様に組合わさり始め、やがて俺の第六感は危険信号を発し始める。


 「……嵌められたか……」


 ある種、確信とも言える第六感の危険信号を胸に抱きながら馬車は青い顔をした俺と様子が変わった俺を見て小首を傾げるマリーを連れてライテウス公爵家へと走り続けるのだった……。



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