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恋愛奇譚 ~盲目的な愛のカタチ~  作者: 足利 士郎
第2章『サイアーム帝国編』
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第5話『旅路』 (光)

 なかなか長い文章が投稿できないよパト●ッシュ><



 豪華絢爛な馬車に揺られる続けること約三日目。


 俺達を乗せた馬車はようやくラグレリア王国とサイアーム帝国との国境沿いへと辿りついた。


 「御苦労様です」


 本来ならば此処で荷物検査やら通行書の確認やらでかなりの時間を掛けて待たされるのだが其処は流石に王族。


 マリーが馬車の窓から顔を出し、ニッコリと優しく微笑みながら王族専用の通行書を出すと国境を警備する兵士達は驚きの表情をさせながらも何の制限も無く国境を通過させてくれた。


 「いよいよ……いよいよサイアーム帝国ですね兄ぃ様♪」


 初めての異国の地の土を踏む事にマリーは目を輝かせながら興奮気味に馬車に取り付けられた窓から顔を出しながらそう言い続ける。


 「……それじゃ、サイアーム帝国について少しおさらいでもしてみるか?」


 対して既に何度かサイアーム帝国へ行った事がある俺はマリーを宥める意味合いも込めてマリーに幾つかの問題を始める。


 「まずは簡単なモノから……サイアーム帝国は水源の国と言われる程に水が溢れているがそれが何故だか判るか?」


 とりあえずは小手調べの意味で初歩的な問題から始める。


 「はい。サイアーム帝国の領土には巨大な水脈があり、それらが枝分かれする様に帝国中に広がっているからです」


 これは簡単過ぎたな。


 「では二つ目だ。枝分かれした水脈は土地によって水の効能や色合いが違うがそれは何故か?」


 次は少し難しくしてみる。


 「それは先程お話したそれらの水脈がサイアーム帝国中にある色々な土地の土壌の影響によって様々な効能のある水が抽出されているからです」


 ……うぅむ、流石は王族。教養に関しては文句なしだ。


 「ならば最後の問い掛けだ……サイアーム帝国で最も美しいとされる場所は何処だ?」


 最後のこの問い掛け……如何な王族と言えども判るまい。


 「一番美しい場所……ですか?……うぅ~~ん」


 フフフッ……随分と悩んでいる様だな。


 何故、いきなりこんな問題をマリーに始めたのか。


 それにはちゃんと理由がある。


 一つは先も言った通り、興奮気味なマリーを落ち着かせる為。


 だが、その裏にはもう一つ理由がある。


 (……確か、ここいらだったな)


 「すみません……少しの間だけ馬車を停めて貰えませんか?」


 俺は馬車を引く人にそう言うと直ぐにその場から降りる。


 「……兄ぃ様?」


 突然の事で訳が分からないといった表情をするマリーに俺は周囲の人間にバレない内に馬車から降りる様に手招きをする。


 「宜しければ少々、私とご一緒に散歩でも致しませんかマリーシア様」


 まぁ、これも予定より少しだけ早く馬車がサイアームへの道程を進んでいた為に出来ることなのだが。


 折角の初めての異国の地への旅路だ、少しでもマリーに良い思い出を作ってあげたい。


 純粋にそういう気持ちだった俺はマリーを“ある場所”へと誘う。


 「……はい……?」


 そういう意図があって相も変わらず訳が分からない様子のマリーを連れて俺はホルスヤードに居た頃の友人から教わった横道へと向かう。


 「あの、兄ぃ様……どちらへ……?」


 俺に付いてくるマリーは多少ながら不安げな声をさせるがそれを無視して俺は歩を進める。


 獣道……とまでは酷くはないが本来のルートとは異なる道を歩いている為に不安もあったが十分ほどの時間が経過した後に俺達は目的地へと辿り着いた。


 「……やっと着いたか」


 友人の話では直ぐだと言っていたがマリーを連れていたせいが意外と時間が経ってしまった。


 「マリー……先程の問いの正解は此処“オリビエ湖”だ」


 サイアーム帝国で最も美しいとされる場所……それは今まさに俺達が居るこの“オリビエ湖”だと言われている場所だ。


 馬車の移動ルートにたまたまオリビエ湖のすぐ近くを通過するのを知った俺は事前に馬車を引く人に速めに移動してもらう様に交渉していたのだ。


 「マリー、この湖の湖畔を良く見てみろ……」


 このオリビエ湖は只の湖ではない。


 「……凄い……水が透き通って湖の底まで見えてる……」


 オリビエ湖の水は透明度が非常に高く、湖を泳ぐ魚は勿論の事、湖全体の底の部分までもが見渡す事が出来る。


 豊富な土壌と美しい水……そして様々な要因が重なってこの湖は創られている。


 自然界でこれほど美しいモノにはそう御目に掛かる事は出来ないだろう。


 「…………」


 あまりの美しさのせいかマリーは無言でジッとオリビエ湖を眺めている。


 そう言えば。


 「……そう言えば、昔に此処を教えてくれた友人が言ってたんだが」


 「満月が湖を照らす月明かりの夜に愛の告白をすれば生涯離れる事は無いらしいぞ」


 ……と言ってもそんなのは迷信だろうし、今は真昼間だが女の子はそういったモノに目がないらしいと聞いた事がある。


 「生涯離れる事は無いっ!!!」


 刹那。


 先程と打って変わって顔を真っ赤にしたマリーは何故か俺の眼を見つめる。


 「……マリー……」


 「ひゃ、ひゃい!!?」


 ……お前は一体何に緊張しているんだ?















 「お前もいつか素敵な男性に巡り合えると良いな」


 妹分の幸せを本心から願いながら俺はそうマリーに言い放った。


 しかし。


 「………………………………」


 えらく長い沈黙の後。


 「兄ぃ様の……兄ぃ様の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 何故か近年、稀に見るほどのマリーの怒りが爆発した……。



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