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恋愛奇譚 ~盲目的な愛のカタチ~  作者: 足利 士郎
第2章『サイアーム帝国編』
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第5話『出立 (光)

 あれ?何だか今回も短いな^^;



 「兄ぃ様、コッチですよ♪」


 サイアーム帝国からの招待状を受けおよそ十八日間の日程の旅路へ向かう初日の朝、正門前で馬車を待つマリーはいつもの数倍ほどテンションが高かった。


 帝都に向かう為にマリーに用意される王族専用の豪華絢爛な馬車が到着する一時間以上も早くからマリーは今や遅しと待ちわびていたのだ。


 そんないつも以上にテンションの高いマリーから手招きを受けた俺は少しだけ足早に彼女の下に駆け寄る。


 「朝から随分とハイテンションだな……それと大声で私を兄と呼ばないで下さいませマリーシア様」


 せっかく良からぬ噂が消えたばかりだというのに、また誰かに変に勘繰られたくはない。


 「無理です♪だって私、今回初めてラグレリアの外に出るんですもん♪」


 ……俺の話は一応、聞いている様だが残念の事に依然としてマリーのテンションは高く上機嫌な表情を浮かべながら俺に抱き付いてくる。


 これは昨晩、聞いた話なのだがマリーの御付きの侍女の話ではマリーは産まれてこのかた一度もラグレリア王国から出た事が無いらしい。


 その為か式典に出席するという公務とは言え、他国へ行けると言う話にマリーは興奮状態だった……との事だ。


  ……ともあれ、マリーに抱き付かれた俺は荷物の確認をしていた侍女達の視線から逃れる為に彼女を無理矢理に引き離す。


 「~~♪~~~♪♪♪~~♪♪」


 普段ならこういう事をするとマリーは頬を膨らませて不満を漏らすのだが気分は未だにハイになっている様で引き剥がすと今度は楽しそうに鼻歌を謳いながらクルクルとその場で踊り始めた。


 (……やれやれ)


 そこには慈愛と優美に溢れる月下の美姫と讃えられた王女の姿は無く、まるで遠足に行くのを心待ちにしている幼い少女の様だ。


 対する俺もそんなマリーの姿を見て少しだけ和やかな気持ちになる。


 (……そう言えば、こんなにテンションが高いマリーを見るのは随分と久しぶりだな)


 俺がマリーのこんなテンションになったのを最後に見たのは確か、数年前の彼女の誕生日以来だ。


 (公務とは言え、可愛い妹分の為だ……少しは良い思い出を作ってあげないとな)






 「マリーシア様、御待たせ致しました」


 俺が心の中でそう呟いた直後、彼女が待ちわびた王族専用の豪華絢爛たる馬車が正門前に到着した。


 「凄く素敵な馬車ですね、兄ぃ様♪」


 未だにハイテンションなマリーはそう言うと早々と馬車の中へ乗り込む。


 (……無駄に豪勢だな)


 対して俺は豪勢な馬車に思わず溜め息を吐いた。


 馬車は二台あった。


 一台は王族専用の見た目からしても豪華極まる造りの馬車で至る所に派手な装飾が施されていて馬車を引く馬も高級感漂う白馬だ。


 対してもう一つは庶民が広く利用している普通の馬車だ。


 その馬車にはマリー御付きの侍女が三人ほど乗っており、今回の旅の荷物も纏めてある。


 当然ながら俺の乗る馬車は普通の馬し「兄ぃ様、早く早く♪♪」……ではなくマリーと同席で豪華絢爛な馬車に乗り込まなければならなかった。


 (……どうも堅苦しいのは苦手なんだがな……)


 第二王位継承者の専属護衛も十分に堅苦しいと思うのだが仕事だと割り切れば然したる苦は少ない。


 しかし普通の馬車ならばそれなりにリラックスしながらのんびりと過ごしていられるが無駄に豪勢な馬車に一週間もの間、揺られ揺られ続けるのには正直耐えられない。


 我ながら何とも悲しい貧乏人の性だ。


 だがマリーは既に自分の反対側の席を空けて俺を満面の笑顔で待っている。


 加えて俺は彼女の専属護衛……行かない訳にはいかなかった。






 「それでは出発致します」


 ……かくて、俺とマリーを乗せた豪勢な馬車は動き出す。


 城下町を抜け城門を抜けて馬車は一週間の日時を掛けサイアーム帝国の帝都カタルシアまでの旅路へと向かう。















 ちなみに。


 馬車が城の外へ出てから数時間後、あれほどハイテンションだったマリーは馬車の座席で大人しくしていた。


  「……zz……zzz……」


 ……まぁ、正確には外に出た事で緊張の糸が切れてドレスが皺になるのも厭わずに座席を枕にスヤスヤと静かに寝息を立てていたのだった……。



 今回の話の短さは次の話(闇)で長めに執筆して補いますので勘弁してください^^;

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