表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/18

部活作り

「なあ、竜也よ。ついに俺の膨大な計画を、実行に移す時が来たようだ。お前には、ぜひとも協力してもらいたい」


 放課後、教室には俺と雄大しかいない。

 俺は雄大に放課後呼び止められ、生徒がいなくなるまで教室に残らされていたのだ。


「計画? そんなの初耳だぞ!」

「当たり前だ。この話をお前にするのは初めてだからな」

「わかったよ。俺にできることならなんでもするさ」


 俺はこの時つい、壮大な想像をしてしまった。膨大な計画と聞いて、スカートの中撮影とか、更衣室隠しカメラ大作戦などなど、その他もろもろを想像してしまった。

 だが俺の壮大な想像は次の雄大の一声により、すべてが壊れた。


「そうか……部活を作るぞー」


 ……はい? ……部活?

 俺の脳内はあっけない返事によって、一瞬停止した。

 だがそんな俺の脳内も、雄大に対する文句と共に蘇る。


「てめえ、なんだよ部活って! 壮大な想像をしてしまった、あの時のときめきを返しやがれ!」

「部活をなめるな! 部活はな、高校生の愛と勇気なんだよ! 部活はな、冷戦並に壮大なんだ。覚えておけ、帰宅部!」

「なんだよ、愛と勇気って! 部活は、子供に大人気のちびっこヒーロー的存在かよ!」


 ついでに、帰宅部! と雄大は叫んでいたが、雄大も進行形の帰宅部である。

 そしてこのまま、変な言い合いが何十分にもおよび続いた。


「ゴッホン! それよりも、俺の計画に協力してくれるか?」


 雄大は一度咳払いをし、この場の雰囲気を作り直した。


「……そもそも、なんでいきなり部活作りなんだよ」


 雄大は一度下を向き、話をためらう素振りを見せたがすぐに頭を上げ、口を開いた。


「……部活会って、聞いたことあるか?」


 部活会……か、なんだか雄大には似合わない言葉だな。

 当然俺は聞いたことがないので、首を横に振る。


「そうか……なら始めから話をしよう。来週体育館にて、全部活動が集まる顔合わせ会的なものがあるんだ」

「そこに雄大が求めるものがあるのか?」


 雄大が求めるもの、それは美少女だ。それも、通常状態の美少女ではなく、この部活会だからこそ見られる美少女だ。


「ああ、そうだ。部活会には一つの部活動につき、男子二名、女子二名のみが来ることができる」


 ふむふむ、ここまでは普通の話だな。部活内で部長や副部長といった人たちが、他の部の部長や副部長と交流を深める。なんとなくだが、部活会のいともつかめる。


「今から部活に入ったとしても、代表の二名には選ばれないだろ? ならば、自分で作ってしまえと思ったのだ。どうだ、協力してくれるか?」

「ああ、わかった。協力するよ……て、言うと思ったか!」

「ふっ、さすが我が友とゆうことか。俺の考えは全てお見通し、とゆうことか」


 雄大が部活を作ってまで、部長やらなんやらが集まるだけの行事に参加したがるとは、到底思えない。つまり雄大は、なにか俺に隠していることがある。それも雄大が俺に話すのをためらっているところを見ると、きっと学校内の中でも数人しか知らないトップシークレットに違いない。


「実はな、俺の目的は部活会などではない」


 とゆうことは、まだ俺の知らないなにかがあるとゆうことか。まったく、どれだけこの学校は広いんだよ……


「部活会を一時間近くやった後、女子だけは二次会がある」

「そこにロマンがあるのか!」

「ああそうだ! 女子だけの集まり、そこは普段とは違う、ちょっとピュアな美少女をたくさん見ることができる。これに俺は参加したいんだ!」


 俺にはわかる。これは雄大の心の中からの言葉だ。嘘偽りはない。


「わかったよ。協力する。まず何をすればいい!」

「さすがわが友よ! わかってくれると信じていた。まずは部活設立申請をするため、職員室に行くぞ!」




 その後俺たちは、職員室へと足を運んだ。

 職員室へと向かう途中、詳しい情報を雄大から聞いた。

 まず女子会の場所は、部活会のどこかで女子だけにひっそりと教えられること。雄大曰く、どこで知らされるかはわかっている。問題は部活会にどう忍び込めば良いか、とゆうことだったのだが、部活会は警備が厳しく、侵入するには部員として部活会に侵入するのが手っ取り早い。だから部活を作るのだそうだ。


 ちなみに雄大は俺が女子会侵入に協力してくれたら、女子会で撮影する写真の一部を譲渡してくれることを約束してくれた。

 俺がやることはまだ教えてくれなかったが、それほど辛いことではないと雄大は言っていたし、いつも世話になっている雄大の頼みを断る理由はない。


「失礼します」


 俺たちは南校舎二階にある職員室へと入っていった、

 職員室には放課後だけあって、人が少なかった。

 部活を作るには、教頭が部活設立申請書を受理し、生徒会の許可がおりればはれて部活設立だ。


「こんな申請書、通るわけないだろ!」


 教頭はデスクの上に、申請書類を投げ置いた。


「なぜですか、教頭」

「教頭先生だろ。せ・ん・せ・い」

「教頭……先生、なぜですか」

「なんでって、そりゃあ決まってるだろ! なんだこの撮影部って。うちには、写真部っつう、立派な撮影する部活があるんだ。撮影部なんて、受理できるわけないだろ」


 教頭の言っていることは、最もだと俺は思う。

 俺はちゃんと言ったぞ。撮影部とゆう名前じゃあ、申請は通らないと。だがけっきょく雄大は退かず、撮影部のまま申請を出すことになったのだが……

 そして不意に後ろを振り向くと、雄大は拳を握り震えていた。


「撮影の……撮影のどこが悪いんですか! 写真部は写真を撮る。そして俺たちは行事などを、動画として記録に残す。なんの問題もないでしょ! 俺はね、学校行事を写真は撮る部活があっても、動画を撮る部活がないのにイライラしてるんですよ!」


 まあ雄大は行事ではなく、秘密の花園を撮ろうとしてるが……


「どんな御託を並べようと、意見は変わらん。さっさと帰りなさい」


 俺はまだ、教頭の言葉を耐えることができた。

 ……だが、雄大は違った。拳に思いっきり力をいれ、……顔が相当怖い。今にも教頭を殴ってしまいそうで怖い……


「いいじゃありませんか、教頭先生」


 金聖高校の制服を着た、長身のイケメン男性が近づいてきた。

 

「いくら安藤君の頼みといえど、こればっかりは……」


 教頭は困ったような素振りを見せ、頭を掻いた。


「なあ、今教頭と話してるやつ誰だよ」


 俺は雄大の耳元でつぶやいた。


「この学校の生徒会長、安藤 誠二だよ」


 どこかで見たことある顔だと思ったら、集会の時に挨拶をしていたあの人だったのか。まあ、集会の時たいてい寝ているから、覚えてないのも無理はないが。


「でもさ、なんだか教頭、敬語使ってないか?」


 教頭と生徒会長の話を聞く限り、断然生徒会長の方が偉そうに見える。


「ああ、あの生徒会長な、この学校の理事長の孫らしいんだよ。だから、この学校に生徒会長に頭の上るやつなんていないんだよ」


「教頭先生。私は彼らの意見が最もだと思いますよ。写真部があるなら、撮影部があってもおかしくない。もっともな理由じゃないですか」

「しかし……やはり……」

「そうですか……では」


 生徒会長は教頭の近くまで行き、なにかをつぶやいた。

 …………


「ああ君たち、ええっと、部長はどっちだっけ……」


 なんだか教頭の声がやつれているのは、気のせいだろうか……


「あ、俺です!」


 雄大が教頭のデスクの前へ出る。

 

「撮影部の申請書類は受理した。あとは生徒会の承認しだいだが……」


 三人の視線が、生徒会長へと集まる。


「私にの答えは決まっている。今をもって、撮影部の設立決定だ!」


 よし! と俺は拳を握る。

 後ろでは、雄大が怪しげな踊りを踊っていた。


「では、私はこれで失敬させてもらうよ」

「あ、あの……今日はありがとうございました!」


 俺はペコリっと頭を下げた。


「気にしなくてもいい。まあ、せいぜい私を楽しませてくれよ」


 俺はこの時、正直言って怖かった。

 だってよ。ちと物事がうまくいきすぎてないか? 

 俺は思ったよ。この後、なにか良くないことが起きるんじゃないかと。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ