後28日。魔法使いの魔法
「えー僕たちが育成勇者に!?」
「ええ。何でも幻の黄金王の足の裏草を見つけたパーティーならば将来有望に違いないとの上の判断です。」
受付のお姉さんの話によるとこの国には育成勇者が何組かいるそうでそれぞれ競い合わせて、最終的に真の勇者を決めるシステムがあるらしい。なんでも勇者を一人に決めておくとろくなことにならないらしく、地位におばれ高慢な態度をとるものや泥棒に入るものもいるらしい。そんな時に助かるのがこのシステムで、そのような行いをした者はランクダウンや逮捕されるのだそうだ。
「とてもいい話ですが僕たちは・・・」
「やります!やらせてください。」
「どう言うつもりなんだ!モニカ!?」
「私達が強くなるチャンスでしょう!」
「でもっもしバっ・・・・グフっ」
膝の裏をけられた戦士は、頭から崩れる。
「ぜひ私たちにチャンスをください。」
「はい。育成勇者にご登録ですね。パーティー人数は何人でしょう?」
「えっと戦士のヒイロと戦士のブロウとあたし、魔法使いのモニカ!それと鞭使いのミルクで。」
「え?」
こうしてヒイロ達は育成勇者の一番下のランクになることが決まった。
「ヒイロ達!良かったね。私を仲間って言ってくれてありがとう。」
「うん。そうだよ。まさかニーナから言い出すだなんて思わなかったよ。」
「そうだぜ。ミルクちゃんのこと毛嫌いしてたのに!」
「ふん。別に監視するのに都合が良かっただけよ。」
ギルトを出たら外はお昼を過ぎたあたりだった。道には多くの人が行きかいにぎやかだ。こんな中私達は森に向かっているギルトに本当の実力が知られないように少しでも鍛えておくつもりだ。
「よしここならあまり人もいないな。」
私達は木々が生い茂っていて中央が少し開けている広場に着いた。
「それで皆んなの実力は、どのくらい?どこでも好きに攻撃してきていいよ。」
そう言うと私は背中から蔓を6本生やし、戦闘体制に入る。蔓に力を込め4本足の動物のように宙に浮いた。
「ミルク!無茶しないで・・・」
「それじゃあ俺から!」
ヒイロの心配する声を遮り戦士ブロウが私に切り掛かる。
「うん。」
私は蔓を前に交差させ防ぐ・・・までもなくブロウの一撃はちょっとかゆいぐらいだ。小型モンスターなら倒せるだろう。多分。
「火の玉よ!」
一撃を喰らわせたブロウは横に飛び、後ろから魔法使いニーナの火の玉が援護射撃で飛んでくるはずだった。
火の玉は大きく右に曲がり木に被弾。木はスス煙を上げ表面に焦げ目を作る。
「もう当たってよ!」
その後ニーナは何撃か火の玉を投げ込んでくるがどれも明後日の方にいってしまいどれも当たらならかった。ついでに火の玉は何故か消えずに残っていて、私たちの周りを漂っている。
「やっぱり。」
段々このパーティの問題点が見えてきた。
「ヒイロは攻撃してこないの?」
「ぼっ僕は嫌だ。ミルクに攻撃するなんて・・・」
「でもこのまま私が完全に乗っ取られて敵になるかもしれないよ。その時は戦わないと駄目だよ」
「嫌だ。僕には出来ない。」
(ヒイロは相変わらずだな。そこが良いんだけど。だけど私に残された期間はあと少し。ここは心を鬼にしなくては・・・・)
「そっちが攻撃してこないならこっちからいくよ!!」
私は無数の蔓をヒイロに向かって飛ばしていく。
「くっ」
即座ヒイロは剣を構え応戦していく。うん。攻撃はいい。だけど防御がなってない。ヒイロの体には蔓からの攻撃が無数の傷を刻んでいく。
(そう言えばヒイロって昔からこんなだったな。剣の基本を教えてくれた父にもよく注意されてたっけ。)
「もう駄目だ。」
数秒後ヒイロは座り込んでしまった。
「ヒイロの課題は持久力だね。後、ニーナさんの課題は、コントロールと命中率と。ブロウさんは?」
私は慌てて戦士ブロウの姿を捜す。そう言えば私に一撃入れてから、一度も姿を見ていなかった。
「大丈夫だよ!あいつなら、木下でお昼寝してるから。」
ヒイロのが言ったように、ブロウは木下でお昼寝していた。
「なんでこんな所に、」
「こいつ戦闘中は一回しか攻撃できないんだよ。」
「それじゃあ魔物が群れで来たらやられちゃうじゃないの。」
(果たしてこのパーティで、真の勇者に選ばれるのだろうか?私はとても不安に思った。)
ことが起こったのは私達が帰り支度をしていた時のこと。突如魔物の群れが私達を取り囲んだ。
[どうしよう?ブロウはまだ寝てるのに・・・・」
頭に紫色のキノコを生やしながらヒイロは弱音を吐く。
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!!ほらヒイロも早く攻撃して!」
とニーナが火の玉を連発しながら怒鳴りつける。勿論出された火の玉は魔物に当たることなく明後日の方に曲がって行ったり、その辺を漂っていたりまちまちだ。ただでさえ命中率が低いニーナが焦って攻撃しているのだから、当たらなくて当然だろう。
「どうしよう?とりあえず私が倒しちゃってよろしいですか?』
私は手首から蔓を生やし一本の鞭のように擬態させる。一応これから先誰かに見られても良いように、するための練習だ。
「えい。』
私は鞭を手に魔物を全体攻撃する。
「ぎゃーー」
魔物が数体倒れる。うん。まだ残ってる。後はヒイロに任せた方がいいかな?
「ヒイロ後は頼むね。」
私はヒイロの方を見たけど肝心のヒイロは体育座りで、頭からキノコを生やしながら小声で何か言っている。近づいて聞いてみると「死にたくない。死にたくない。死にたくない。」と呟いていた。なるほどこれは戦う以前の問題だ。さてこれからどうしよう?
「ガーーーーー」
痺れを切らせたモンスターが一直線にこちらに向かってくる。
「ちょっとどうにかしなさいよ。」
「死にたくない。死にたくない。死にたくない。」
「んがーーー。」
「しょうがない。」
私は鞭に擬態した蔓を強く握り締め攻撃しようと腕を大きく広げかけたその時・・・、何かが回る大きな音がしだし何かが私たちの周りを包んだ。
「え!?」
「うそ・・・」
「嫌だ。嫌だ。嫌だ。」
「がおーーー」
「うそっダメージが入ってる・・・誰も何もしてないのに。」
「うーん。これは。」
見ると私達の周りを漂っていた火の玉が、円になって高速して回っている。まるで主人を守る守護神のようだ。
そんなまさか何故かいつまでも消えなかった火の玉が私達を助けてくれるだなんて。どこかの偉い人が言っていた攻撃は最大の防御だと言うのはまさにこのことか。ダメージも入ってるし。
「ニーナさん。これはあなたが作り出した。結界だよ。貴方の魔法は凄いよ。時間はかかったけどちゃんと私たちを助けてくれた。」
「嘘よ。嘘なんだからだって私魔法が下手なの知っているだもの。いつも当たらないしだって。」
その間外の魔物は結界に攻撃しづづけ、結界からは継続的なダメージを受けている。
「キュルキュル。」
【魔物は倒れた。ヒイロ達は、経験値を入手した。ニーナはレベル3になった。】
「レベルが上がった・・・」
「良かったですね。』
「よく寝た。何があったんだ?」
「皆んな無事で良かった。」
ブロウが起きて、ヒイロが元に戻った。
さて後は一回しか攻撃できないブロウとメンタル面で問題を抱えてそうなヒイロを何とかしなくては。
「そう言えばどうして魔物がここに私たちがいることが解ったのよ!」
ポツリとニーナが呟く。
「おう。そう言えばどうしてだ。」
なんだそんな簡単なことと私はため息をつく。
「ちょっと何あんた。自分は何でも知っていますみたいなため息つくのよ!」
ニーナが私のほっぺをつねってくる。
「いってて。ごめんね。そんなもの簡単だよ。」
私は周りを見渡し高らかに言う。
「だってブロウの最初の一撃で周りの木が切り倒されて広場が丸見えだもの。」
そう私のブロウに対する評価は間違っていた。
読んでいただいてありがとうございます。




