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花飾りの思い  作者: 宇佐山彩葉


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1/1

宿主と宿木1

わたしは今夢を見ている。遠い昔、幼馴染との思い出だ。

「大人になったら何になりたい?」

「僕は勇者!魔物を倒して強い勇者になるんだ。」

「わたしはね….〇〇の仲間。一緒に冒険して〇〇を助けるの!」

「えーなんで?」

「だって〇〇は弱いじゃない。」

「そんなことない。僕は強い勇者になるんだ。」

「だからわたしがついてってあげる。」

「うーーー」

「ねぇわたしを置いてどこかに行かないでよ。」

「うん。」

「どこにも行かないよ。」

「本当よ!本当!もしも約束を破ったら、覚悟していてね。くさーいカブロットおじさんの長靴を嗅がせに行くんだから。」

「えーやだな。」

「絶対よ!絶対!必ず会いに行くから。例えどんな手を使っても。」



「はっ!」

『どうしたのでございますか?』

「何でもない。」

『そうでございますか。』

やたら丁寧な話し声の主にそう答えるとわたしは目の前で、燃えている焚火に薪をくべた。

『それにしてもまだ夜は寒うございますね。』

「そうですね。毛布でも持ってくるんだった。」

わたしは今自分の頭に付いている花飾りと話をしている。

 花飾りは寄生植物でわたしは宿主だ。わたしたちの出会いは、わたしがはやり病で熱に浮かされていた時だった。

 生まれ故郷の村は、ド田舎で、近くに生息している魔物は、とても凶暴で村人でも倒せてしまうくらい弱かったからだ。当然魔物に話なんて通じるわけなくいつも戦いになってしまう。だから私は驚いたのだ。魔物の中でも友好的なのがいるのだと。

 あの時からわたしの運命は変わってしまった。彼はいなくなり、わたしは……わたしは……

『さっきから何を考えているのでございますか?』

「何も、何もです。」

『嘘はいけません。わたしに嘘は通用いたしません。』

「わかってるよ。」

わたしはまた焚火に薪をくべる。彼を追いかけ村を出てから一体何日経っただろう。村を出る時持ってきた鞄の中には、カブロットおじさんの長年履きつぶした長靴がある。

鞄を開けクンクンと、嗅いでみる。

「うぉえー」

強烈な臭いに半分気絶しそうになりながら、眠りについた。

翌朝、起きたわたしは身支度を整え出発する。いざ王都へ。

わたしに残された時間は、後3か月。それまでに彼に思いを伝えたい。


それから探していた彼らにであったのは、森の中だった。

 おそらく自分で切ったであろうちょっとしっぱいした金髪に、皮の服を着た彼は最後に会った時より大人びて見える。彼に置いて行かれてからまだ二週間しか、たっていないのにどういうことだろう?

まあいいか。とりあえず彼に話しかけよう。

わたしは薪をしている彼らのもとに向かった。

「久しぶりヒイロ。会いたかったわ。」

「ミルクどうしてここに?」

「なになに?知り合い?」

「うぉお清楚系のかわいこちゃん。」

「あなたを追いかけてここまで来たの!」

「追いかけてってミルク君は……どうして独り言を言ってるんだい?」

『独り言?いいえ。そうではございません。あいにくわたしには声帯がございませんので、この娘の口を使って話しているのですよ。』

そういってわたしは、花飾りから蔓を伸ばし彼の腕をつかんだ。

「うわぁーーー」

「びっくりした。ヒイロわたしあなたの力になりたくて、ソフラの力を借りたの!!」

『お初にお目にかかります。‘わたし一般魔物のソフラと申します‘わたし魔物ではありますが、魔王軍とは一切関係ございません。むしろその逆、わが主とともに勇者のパーティーにいれていただきたくこうして……』

「そんな訳ないでしょう!!」

火炎玉が飛んできてわたしの蔓を掠めるまで、後数センチ。ん?勇者のパーティーこんな感じ?


『ん?。』

火の玉を投げたのは幼馴染のパーティーの気の強そうな魔法使いだった。魔法使いは、きれいな腰まである赤い髪を風になびかせながら水色の瞳でこちらをにらんでいる。

「ヒイロ!騙されちゃだめよ。魔物が人間の仲間になるわけないわ!!なにか裏があるに決まっている!」

「そうだ!」

掛け声とともにわたしは剣で切り付けられ,防御する。けど蔓は少しだけ切れ目が入っただけ。やっぱりなんか変?私の蔓を切りつけたのは安そうな鎧を着た黒髪黒目の戦士だった。戦士の鎧は細かな傷がたくさんあり、一目で中古の安物だと言うことが分かってしまう。

「酷いなもう。」

わたしは体から六本の蔓を伸ばし宙に浮いた。

「ヒイロ、構えろ!奴はもうお前の知っている子じゃない!」

「でも。おれは、彼女を救いたくて……」

「ヒイロわたしを置いていかないって言ったよね?それなのにまた置いていくの?」

「ミルクそれは……」

「しっかりしなさい!ヒイロ、あなたは勇者になる男なのよ!」

「モンスターになったとはいえあんなかわいい子と知り合いなんてけしからん奴だ。」

「ちょっとあんたは黙ってなさい。」

「ふぐぅ~~」

気の強そうな魔法使いは戦士を蹴り飛ばした。飛ばされた戦士は、木に激突しそうになる。寸前の所でわたしが助けたけど。

「大丈夫?」

「助けてくれてあんがとぅーー」

わたしに向かって戦士が唇を尖らせ飛び込んでくる。わたしは蔓で戦士を拘束し吊るした。

「のぉおおーかわいこちゃん。それはないぜ。下ろしてくれよ。」

「ちょっとあんた卑怯よ!早く戦士を下ろしなさい。」

「ミルクやめるんだ。」

「かわいこちゃん。かわいこちゃん。おろしてくれよ!」

わたしは騒がしい戦士の口にそこら辺で摘んだ木の実その他諸々を押し込む。

「ごめんね。これでも食べておとなしくしてて。」

「フガフガふが。」

「さっきから降ろせ下ろせって言ってるけど自分で攻撃しておろしてあげないの?』

わたしは戦士を吊るした蔓をわざとヒイロたちの前に出し、挑発する。よしよしさっきのは何かの間違いだ。仮にも勇者のパーティーがあの程度の実力なんてありえない。

「くっ。」

 わたしの指摘に魔法使いは杖を握りしめる。

「さあ、焼くなり煮るなり好きにしてみなよ?こっちからは攻撃しないからさ。」

「いったわね。ファイヤー」

魔法使いは杖から火の玉を出し蔓に当たることなく、見事にカーブを描いて反対側に飛ぶ。どうやら魔法使いは魔法のコントロールが下手らしい。

「なんの!!」

魔法使いは火の玉を何発も投げるが全然当たらず、しまいにはマジックポイントがきれたのか肩で息をしだした。

「ヒイロは蔓に攻撃して仲間を助けないの?」

「俺は仲間たちもミルクも大事だ。だから攻撃しない。」

うん。相変わらずヒイロは優しい。

「大変。戦士が何か変よ!」

「え?」

 気の強そうな魔法使いの声に蔓でつるしていた戦士のほうをみると、戦士は蔓でぐるぐる巻きにされた上に青緑に変色していて、おまけに口から金色の泡を吐いている。

「大丈夫か?戦士!」

「すぐ、おろしてあげるね。」

「ふん。きれいな子に鼻の下伸ばしてるから罰が当たったのよ。」

わたしはすぐに戦士を地面におろし、拘束を解いた。そして背中をさすり吐き出させる……と吐しゃ物の中に黄金に光り輝く草があった。

「ヒイロ、これ!」

「間違いない。」

 それを見たヒイロと魔法使いは顔を見合わせる。

「なんかちょっと近い。」

 わたしは二人の間に割って入る。ふふふっヒイロの隣は誰にも渡さない。

ヒイロと魔法使いは割って入られたことなど気にしていないようで、草と紙を見比べている。

「間違いない。黄金王の足の裏草だ。」

「よかった。これで今回の依頼は達成ね。」

「ぷわ,はっ、はっ、ここは、」

「よかった。ブロス。無事だったか!さあ早く。町に帰ろう!」

「そうね。これで皆を見返せるわ。」

「なにがなんだかわからねえが、おう。見つかってよかったぜ。」

 三人は嬉しそうに準備をし始めはたと気が付いたように空を見た、空には綺麗な大小のきれいな三日月が浮かびその周りをたくさんの星がきらめいている。森の中はもちろん真っ暗だ。

『まだ夜…でございますね。』

「そうだね。」

「あっ明日の朝になってからでもいいじゃ、ないかしら?」

「そっそうだね。」

「そうだな。」

 三人組は怖そうに震えている。

『あっでも明かりなら。蔓が明かり代わりになりますが…』

花飾りが言いかけるも、三人組は激しく首を横にふる。

「そんなに、怖い?』

三人組は今度は縦に首を激しくふる。

「しょうがないな。朝まで待って一緒に町まで行こうか。」

それからわたしたちは朝まで薪をして過ごした。その時にわたしは先ほどから抱いていた疑問を投げかけてみる。

「もしかしてヒイロは勇者じゃないの?」

「うっ。」

「心が。」

「なによまだなってないだけよ!」

なるほど大体わかった。どうやらヒイロたちは‘まだ‘勇者ではないらしい。

その後ついた町でヒイロたちの置かれている状況が厳しいものだとはその時のわたしは想像もしていなかった。

冒険者ギルトのある町は、大きくもないけど小さくもないそこそこ栄えた町だった。なんでも森から一番近い冒険者ギルドにしたらしい。人通りも多い。田舎の村から出たことのないわたしはもの珍しさも相まって、よそ見をすると人にぶつかった。

「あっごめんなさい。」

「こっちこそごめんよ。」

わたしがぶつかったのはふっくらした体型のおばちゃんだった。おばちゃんは、頭の上に食材を入れたかごを乗せノッシノッシと歩いていく。

「ふぉー。素敵あんな風になりたい。」

「なに目をキラキラさせちゃってるの?」

「ヒイロお前の幼馴染すごいな。」

「そんなことないよ。ミルクは大柄な女性にあこがれてるんだ。」

わたしはそんなヒイロ達の会話が耳に入ってなかった。

「よそ見すんじゃないわよ。」

ふいに魔法使いに手を引っ張られ連れられて行く。

「君って面倒見がいいんだね。」

「そんなんじゃないわよ。」

「ニーナ、乱暴はよしてくれ。」

(なるほど魔法使いはニーナっていうのか。)

「いいないいな。ミルクちゃんとおてて繋いで。」

「もううるさいわね。ほらさっさと行くわよ。」

「はーい。ママ。」

『ママ!』

「ママじゃないわよ!』

  そんなことを話しつつわたしたちは、町の中で一際大きな建物の前に着いた。建物のドアの前でニーナが切り出す。

「いいこと。あんた達は中では大人しくしていること!何も話さないでね。」

「どうして?』

「どうしてって、あんたは・・・、」

「ニーナ、これ以上は言ってはいけない。」

「むっしょうがない。ほらさっさと行くわよ。」

カンカランとわたしたちは、冒険者ギルトの扉を開ける。室内は明るくカウンターで忙しそうに働く職員達や冒険者達、美味しそうに何か食べている人までいる。たくさんの紙が貼られた壁の前にたくさんの冒険者達がいるのは何でだろう?

「受付はこっちだぜ。ミルクちゃん!」

「早くしなさいよ。」

「はぐれないでね。」

わたしたちは受付カウンターまで来た。

「はいはい。次のかた。」

受付のお姉さんがわたしたちを呼ぶ。

「3クローバーです。今日はご依頼の品を持ってきました。」

そう言って、ヒイロは、紙と黄金王の足の裏草を差し出す。

「え!?」

その瞬間紙と草をみた受付のお姉さんが、驚いた顔をした。

「少々お待ちください。」

お姉さんは、神経質そうなおじさんに耳打ちした。

 それを聞いた神経質そうなおじさんは、慌て始める。

2人は奥に引っ込んだまま戻ってこない。

「どうしたんだろう?」

「さぁ?」

「おいおい。勘弁してくれよな。俺は腹ペコなんだ。」

 周りの音がうるさ過ぎてヒイロ達は何が起こっているのかわかってはいない。

やれやれしょうがないヒイロのためだ。髪飾りに偽装した蔓をちぎり透明化の魔法をかけ、息を吹き飛ばす。よしよし家具の隙間にわたしの分身を忍ばせることができた。これで職員達の声を聞くことができる。なになに、わたしが分身を通して知ったのは職員達のこんな声だった。

「絶対にとってこれない草を依頼したはずですよね?」

「そうだとも。中々Fランクから上がらない彼らに冒険者を諦めてもらうために、特別難しいやつを用意したはずだ。大昔の植物図鑑に載っていたやつだよ。見つかるわけないと思ったんだがね。」

「どうします?見つけてきちゃいましたよ。」

「しょうがない。彼らをEランクにあげよう。」

「はい。そうですね。」

ふんふん。それで職員達は驚いていたわけか。ヒイロたちがおかれている状況は、かなり悪いらしい。だけど大丈夫。わたしが必ずヒイロたちを勇者にして見せる。よーし頑張るぞ!!

「ちょっと気持ち悪いわよ。」

「ごめんね。」

それから数分後ギルトの職員から冒険者ランクを上がったことを言われたヒイロたちはとっても喜んだ。

「ヒイロよかったね。』

 そうわたしたちは、喜びの言葉を贈る。

「ちょっと何ボーとしてるのよ。」

 魔法使いニーナがわたしに気づき近づいてくる。

「何でもない。」

「嘘!なんでもあるときに。何でもないっていうの!」

「本当の本当に何でもないよ。」

「そうそれならいいけど。」

「ありがとう。ニーナ。」

 わたしはニーナにお礼を言う。

「別に。ほっといたら悪さするんだから監視してるだけよ!」

 ニーナはフンっと鼻を鳴らすと横を向いた。もしかしてこの子素直じゃないだけで実は良い子?

 とりあえず今の目標は、ヒイロ達を立派な勇者にすることだ。どうしてヒイロ達を勇者にするかは、わたしにはわからない。それがソフラとの約束だから。

期限まで後三ヶ月。三ヶ月経ったらわたしはわたしでなくなってしまうのだから。

「ミルク僕たちが拠点にしている宿屋はこっちだよ。」

夜のとばりが降りる頃わたしの時間は終わり、わたくしの時間が始まる。


















見ていただきありがとうございます。

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