夜の公園のガイド
目を閉じてください。
あなたは今、夜の緑地公園を散歩しています。
手元にライトはありません。頼りになるのは、遠くに見える街灯の淡い灯りだけ。
さあ、恐れずに、どんどん進みましょう。
なにか、ふわりとした、柔らかい気配を感じませんか?
あなたの周りに、木々の精霊――木霊たちが集まっています。
彼らはあなたの凝り固まった肩や、重たい首筋にそっと触れ、その疲れを吸い取ってくれているのです。
……おや? 気づきましたか?
この場所だけ、ふっと風の香りが変わりましたね。
夜の土や草いきれとは違う、どこか懐かしくて、不思議な香り。
ここが、優しい世界への入り口なのかもしれません。
その香りに誘われるように、もう少し奥へ進んでみましょう。
闇の中に、何かの黒い影が見えてきました。
……ああ、子供の遊具の鹿さんですね。
昼間はあんなに可愛い鹿さんも、夜に見ると、少しだけ怖く感じるかもしれません。
でも、よく見てください。彼は、暗闇の中でじっと立ち尽くし、あなたの孤独な散歩を「頑張れ」と応援してくれているのです。
心の中で、さりげなく「ありがとう」と伝えておきましょうか。
さて、次のお出迎えが来たようです。
ベンチの方を見てください。お爺さんが一人、横になっていますね。
(あなたの愛犬は「ただの切り株だよ」と素通りするかもしれませんが、あなたには分かりますよね?)
驚かないで。このお爺さんは、長い長い人生の役目を終えて、ここで少し休憩しているだけなのです。
ああ、手招きをして、あなたを呼んでいますよ。
少しだけ、お邪魔してみましょう。
ふわりと湯気が立ち上る、温かいお茶を点ててくれました。
夜の公園は、暗くて少し怖いかもしれません。
けれど本当は、見えない香りと優しさに満ちた、とても温かい世界なのです。
【怪異診療所よりお知らせ】
当診療所は一旦閉院致しますが、お疲れの皆様からのご相談はお待ちしております。
「どうしてもやめられない癖がある」
「苦手な人がいて困っている」
「最近、不運続きだ」
そんな症状をお持ちの方は、コメント欄にてお知らせください。
あなたの悩みを綺麗さっぱり食べてくれる、「とっておきの怪異」を処方(執筆)いたします。
(※ただし、副作用として予想外の事態が起こる場合がありますが、当院は一切責任を負いません)




