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『お疲れの皆様へ、怪異を処方しておきます』  作者: さらん


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怪異:あめフラシ


日曜日の朝、8時。

雲ひとつない、憎らしいほどの快晴だ

絶好のバーベキュー日和である

俺はトランクに、昨夜から仕込んでおいた肉と、冷えたビールが詰まったクーラーボックスを積み込んだ


炭の準備もよし

ブルーシートもよし

若手社員としての準備に、抜かりはない

運転席に座り、シートベルトを締める

「よし、行くか」

スマートキーを押し、エンジンをかけた、その瞬間だった


ドォォォォォン!!

雷鳴と共に、フロントガラスが白く染まった

ポツポツという前兆などない。いきなり、滝のような豪雨が車体を叩きつけたのだ

ワイパーを最速にしても、前が見えないほどの土砂降りである

『ブブブ』

スマホが震える

グループLINEの通知だ

『現地、急なゲリラ豪雨で川が増水中!』

『危険なので中止! 今日は解散です!』

俺はスマホを置き、ハンドルを握ったまま、うつむいた

肩が、プルプルと小刻みに震え始める

せっかくの休日。準備した肉。楽しみにしていた(はずの)イベント……


「……っ……しゃあぁぁぁぁ!!!」

俺は顔を上げ、天井に向かって拳を突き上げた


「勝った! 解放だ! 家で寝れるぞオオオ!!」

歓喜の雄叫びを上げると、いつの間にか重くなっていた肩から、スッと重みが消えた気がした


耳元で、雨音に混じって

「……外、怖い……出たくない……」

という、か細い声が聞こえた


「ん?……気の、せいか……」

俺はトランクから肉を取り出し、家で一人焼肉パーティーを始めることにした。


怪異:あめフラシ

極度の人見知り引きこもり体質を持つ、雨雲の怪異

取り憑かれた人間が外出(特に気が進まない外出)をしようとすると、「外に出たくない一心」で周囲に局地的な豪雨を降らせ、物理的に阻止する


【怪異診療所よりお知らせ】

当診療所では、お疲れの皆様からのご相談をお待ちしております。

「どうしてもやめられない癖がある」

「苦手な人がいて困っている」

「最近、不運続きだ」

そんな症状をお持ちの方は、コメント欄にてお知らせください。

あなたの悩みを綺麗さっぱり食べてくれる、「とっておきの怪異」を処方(執筆)いたします。

(※ただし、副作用として予想外の事態が起こる場合がありますが、当院は一切責任を負いません)

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