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メキシコの恐怖伝説とその他の物語  作者: Rocket_Ghost


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死者の口笛

ある場所では、夜は突然訪れない。

まるで大地の様子をうかがうかのように、ゆっくりと降りてくる。


獣たちは一匹、また一匹と沈黙し、

風は不規則になり、

静けさはもはや自然なものではなくなる。


その時、聞こえてくる。


――口笛だ。


軽やかではない。

澄んでもいない。

呼吸の仕方を忘れてしまった者が無理に鳴らしているような、

ひび割れた口笛。


古い村々では語り継がれている。

すべての口笛が生者のものとは限らない、と。


あるものは記憶。

あるものは警告。

そして、ただ一つ――

今なお歩き続ける「罰」。


それが、**笛吹き(シルバドール)**と呼ばれる存在だ。


一、誰も語りたがらない起源


伝説が形を持つよりもずっと昔、

一人の男がいた。

――いや、かつては男だったもの、だ。


彼は暴力で知られ、人との絆を一切持たぬ存在だった。

酒に溺れ、躊躇なく殴り、

言葉には底知れぬ憎悪がこもっていた。


とりわけ父親に対して。


父は厳しかったが、公正な人間だった。

最後の瞬間まで、息子を正そうとした。


だが、あの夜。

口論はなかった。

挑発もなかった。


ただ、決断があっただけだ。


息子は武器を取り、

冷酷なまでの静けさで父を殺した。

山の空気さえ凍りつくほどの無感情さで。


そして、人としての痕跡を消すかのように、

死体を切り裂き、

骨を一つ残らず古い袋に詰め込んだ。


その最中、彼は口笛を吹いていたという。

不器用で、歪んだ音色を。

まるで行為そのものを嘲笑うかのように。


帰宅すると、祖父が待っていた。


長い沈黙。

言葉はなかった。


ただ一つ、

殺人者の心に初めて恐怖を刻み込むほどの、

深く、冷たい視線。


老人は、教えられることのない儀式を知っていた。

死を超えた罰を与える方法を。


彼を柱に縛りつけ、

皮膚が皮膚でなくなるまで鞭打ち、

傷口に塩と灰を擦り込んだ。


さらに、犬を呼び寄せた。

殺すためではない。

痛みを、肉体よりも深い場所に刻み込むために。


そして、呪いの言葉を告げた。


「お前は死なぬ」

「歩き続ける」

「己の罪の骨を背負い」

「制御できぬ口笛で、己の存在を告げ続けるのだ」


夜が明けても、男は呼吸していた。


だが――

もはや人ではなかった。


二、誰もいない道を歩く者


それ以来、笛吹きは

「一人でいるべきでない場所」に現れる。


田舎道。

果てしない平原。

早すぎる時間に人影が消える街路。


その姿は背が高く、

不自然なほど痩せ細っている。

腕は異様に長く垂れ下がり、

背中は疲労ではなく、

“何か”の重さで曲がっている。


背には必ず袋を背負っている。


中では骨がぶつかり合い、

歩調を刻む。


カツ。

カツ。

カツ。


だが、

誰も最初に彼を見ることはない。


必ず――

先に聞くのだ。


三、嘘をつく口笛


死者の口笛は、

六つの不完全な音で構成されている。

上がって、下がる。

まるで覚え損ねた哀歌のように。


本当に恐ろしいのは音そのものではない。

その理屈だ。


口笛が近くに聞こえるなら、

まだ危険はない。


遠くに聞こえるなら――

それは、すでに笛吹きがすぐそばにいる証だ。


なぜそうなるのか、誰にも分からない。

説明できた者はいない。


確かめようとした者たちは、

誰一人として戻らなかった。


ある者は言う。

この口笛は空気を伝わるのではなく、

罪悪感を伝って響くのだと。


四、彼が探す者


笛吹きは、無差別には狙わない。


過去の罪を終わったものだと思っている者。

謝罪をしなかった者。

裏切り、殺し、捨て去った者――

特に、血を分けた存在を。


見つけると、すぐには入ってこない。


外に立つ。


口笛を吹きながら。


何時間でも。

一晩中でも。


恐怖が理性を削り取るまで。


もし、扉を開けたら。

窓を覗いたら。

口笛に応えたら――


二度と、その姿は見られない。


夜明けには、

袋が少し重くなっているだけだ。


五、数を数える者


一部の村では、

笛吹きが家の前に立つのは

誰かを連れて行くためではなく、

数えるためだと言われている。


袋を開き、

骨を一つずつ取り出す。


無言で数える。


数が足りなければ、去る。

もし、一つ欠けていれば――


家族は理由を知らない。


ただ、

誰かが目覚めないことに気づく。

沈黙が、昨日よりも重くなる。


六、生き延びるための掟(それでも確実ではない)


だから、老人たちは子供に教える。

書かれていない掟を。


口笛が近くに聞こえたら、動くな。


遠くに聞こえたら、振り返るな。


口笛が止まったら――

息をするな。


笛吹きが口笛をやめる時、

それはもう、

存在を知らせる必要がない時だからだ。


七、終わらない終わり


笛吹きは、決して止まらないという。

その罰に、終わりはない。


告白されぬ罪が存在する限り、

彼は歩き続ける。


夜明けに、

不自然な方向へ伸びる影を見たという者もいる。


風のない夜、

誰もいるはずのない場所で、

不器用な口笛が聞こえたという者もいる。


もし、あなたがそれを聞いたなら――


距離を信じるな。

沈黙を信じるな。


死者の口笛は、到来を告げない。


それは、

すでに手遅れであることを告げているのだから。

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