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僕等が求めたモノ  作者: 那泉織
第5章ーぶつける感情
22/29

④紹介


 ***


「……で、あんたは僕をどうしたいわけ?」


 そう訊かれるのは承知の上。僕は白兎に向かって笑ってみせた。


「……僕の仲間に会って貰おうと思って」


 現在、僕は白兎を連れて自宅前に居た。

 何も目的を話さずに無理矢理一緒にここまで転移したからか、白兎の顔は今、ものすごく不機嫌そうだった。


「何で僕があんたの仲間に……」

「神の所に行くとき多分僕らと一緒だから、今のうちに会っておいた方がいいと思って」


 そう言うと、白兎は口をつぐんで恨めしそうに睨んできた。


「っ…………分かったよ」


 小さな声で、仕方なさそうに了承の意を示した白兎に苦笑していると、ドタドタと騒がしい足音が近付いてきて、玄関の扉が勢いよく開けられた。


「癒既! いったい何が…「落ち着け、馬鹿者」ぅっ……」


 顔を出したのは慌てた様子の露華。彼は何か言おうとしたが、途中でアストの手刀を頭に食らった。


「………………どうしたの?」


 現状が把握出来ず、呆れたように露華に向かって溜息を吐いたアストに尋ねると、彼は眉間に皺を寄せた。


「気にするな。単なる早とちりだ」

「早…とちり?」

「お前の他に別の誰かの気配がすると俺が言ったら、こいつ、敵と一緒なのかと思って焦ってな」


 敵と共にいるなら、お前も殺気やなんやら出しているはずだから分かるだろうに。と続けて口にしたアストは、額に手をやってさらに溜息を吐いた。


「う~……だってさ……」

「……ごめん。先に連絡しとけば良かったね」


 ちょっと申し訳なく思って謝罪すると、「別にあんたのせいじゃないだろ……」という声が後ろから聞こえた。呟いたのはもちろん白兎だ。

 その呟きが耳に入ってようやく気付いたのか、露華が顔を上げて首を傾げた。


「……癒既、そいつは──?」

「ああ、彼は────」

「雪城白兎。呼ぶんだったら“白兎”って呼べ」


 僕が紹介する前に、白兎は自ら名乗った。…………のはいいんだけど、何でこんなに偉そうな言い方するんだろう?


「……お前、見た目に似合わず口、悪いんだな」

「────どういうご想像をされていたんですか?」


 急に丁寧な言葉遣いをした白兎に感心した。そして同時に、浮かべている笑顔と、放っている黒いオーラに、今更ながら白兎が腹黒いのではないかという考えに僕は至ったのだった。


「……で、結局の所、こいつとお前の関係はどういったものなんだ?」


 白兎の笑顔は少し前にあった雪吹のお説教で彼が浮かべていたのと酷似していた。

 その時のことを思い出したらしく硬直する露華をスルーするアストにそう訊かれる。


「中で話すよ。……白兎、入って」

「……」


 白兎は再び不機嫌そうな顔で頷き、僕の後に続いて家に入った。────未だに動かない露華を置いて。

 その露華はアストに襟元を掴まれ引き摺られながらリビングへと移動させられた。


 ────何か、露華の扱いが最近雑で可哀想になってきてる気がするのは僕だけなんだろうか?

 あれじゃ首が締まる気がするんだけど大丈夫……かな?


「あ、癒既。お帰り」

「ただいま」


 リビングに着くと、マグカップを両手で持ち、椅子に座っている雪吹が優しい笑顔で迎えてくれた。


「露華。ひとの話はちゃんと聞かないと駄目だろ」

「……はーい」

「…………まだその状態なの?」


 雪吹の注意を、アストに引き摺られたままの体勢で片手を挙げて応えた露華に苦笑すると、露華の頬が子供っぽく膨らむ。


「だって、アストが手を離してくれないんだも~ん」

「…………キモいよ、露華」

「あ、酷っ!!」

「……ごめん、僕もフォロー出来ない」

「癒既まで!?」


 ようやくアストに解放された露華は、ガーンという効果音が聞こえそうなくらい落ち込んだ様子で、床にしゃがみこみ、いじけ始めた。


「…………このひと、面倒臭い」


 ポツリと呟いた白兎の声は思ったよりも部屋に響いて、露華の雰囲気がさらに暗くなった。……ような気がする。


「馬鹿だからな」


 さらに続けてアストが言ったのを肯定するように、雪吹がしきりに頷いている。

 ────露華を見ていると情けなくて涙が出そうだ。


「……えと、そろそろ本題に入っていいかな? ……白兎、そこに座ってくれる?」

「ここ?」

「うん」


 白兎が座ったのを見て、僕はまだ席に着いていないアストと露華にもそれを促した。

 そして、全員が席に着いたのを確認すると、一度深呼吸をしてから口を開く。


「改めて紹介するよ。……彼の名は雪城白兎。──六花の弟だ」

「つまり、僕と十六夜癒既の関係はあんまり良くない。僕にとってこいつは大事な肉親を殺した許せない相手だから。……こいつの話と、姉さんの言葉で……まぁ、憎んではやらないけれど」


 雪吹の視線がこちらを向いた。その瞳が言いたいことは分かっている。


「……僕はもう、大丈夫」

「そっか……」


 安堵の表情を浮かべる雪吹につられて、僕は微笑んだ。

 驚いたけれど、白兎に再会出来たのが良かった。

 ────今はちゃんと、気持ちの切り替えが出来る。


「……白兎、だね。俺は月夜里雪吹。天使と魔族のハーフです。好きに呼んでくれていいよ。……で、こっちの馬鹿が望月露華。そして黒いのがアスト。──アストは魔族だよ」

「……って、おい! 馬鹿って何だよ!」

「……黒い、か。……まぁ、分かりやすくていいが」


 雪吹の説明に対し、紹介された二人がそれぞれ言った。


「馬鹿って言われるのが嫌なら行動を改めてよ。露華の取り柄って幻影魔法だけだろ?」

「ぐっ…言い返せねぇ……」

「アストって普段もその黒尽くめの格好だから……。説明は分かりやすい方がいいと思ってさ。気に障ったならごめん」

「いや。気にしていないさ。キヨウにもよく言われていたしな」

(…………雪吹のお父さんにも言われてたんだ)


 僕はアストの言葉に苦笑する。

 そんな僕の左斜め前に座る露華は不機嫌そうだった。


「っ……何、この扱いの差」

「仕方ないよ露華。露華とアストなら、雪吹は迷わず付き合いの長いアストを優先するだろうし」

「───癒既ぃ~っ!」


 少し見兼ねてフォローを入れると、露華はぶわっと瞳に涙を溜め始め、それを見た雪吹が軽く彼を小突く。


「こら、癒既が困るだろ!」

「っ……酷いですよ雪吹さん」

「…………何か露華に敬語って似合わないから笑えるね」

「同意する」


 “笑える”と口で雪吹は言ったが、顔に浮かんでいるのは呆れ果てたような表情だった。

 そんな雪吹の言葉に頷いたアストは可笑しそうに笑っているけれど。




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