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僕等が求めたモノ  作者: 那泉織
第3章ー胸に秘める理想
11/29

①関係

 

(side 露華)



 一緒に暮らす仲間が一人増えた。

 名前はアスト・カオス・シンセティック。

 あだ名は“混沌の支配者”。年齢不詳で性別は男。魔族だ。

 ……ちょっとびっくりした。

 オレでも知ってるあの“混沌の支配者”が雪吹の保護者っぽい立場の奴で、雪吹が混血だったなんて。

 軽蔑するつもりは全く無い。だってオレは雪吹が言ってたみたいな混血への差別とかそういうのも気に入らなくて天界を出ようって思ったわけだし。

 …………まあ、いつかは話すつもりだけど、それだけじゃなくて他にも色々理由はあるんだけどな。


「……露華。さっきから何を考えているの? 表情がころころ変わっているけど」

「ふぇ?」


 雪吹に指摘されたオレは口に朝食のおかずを頬張り、間抜けな声を出す。


「ひやー。ほふはんはえふぁらふぉのへんふぁーふへーなーほ」

「『いやー。よく考えたらこのメンバーすげぇなーと』だって」


 いつものように癒既がオレの言葉を翻訳する。言ったこと一字一句間違っていないパーフェクト。

 ……雪吹も疑問に思っていたけど、よく分かるなーってオレは思うよ。

 オレ自身も聞いてる側は意味分かんねぇだろーなー、って思うし。


「ふぇんふぁいはらふへふぁ、ふぉれはひっへ、そーふぉーひへんひふるひゅーはんはへ?」

「『天界からすれば、オレ達って相当危険視する集団じゃね?』だって。……危険視されてるのって、特に僕とアストだよね」


 癒既はくすくすと笑いながら麦茶を自分のコップに注ぐ。そして首を傾げた。


「そういえば、前に鑑達と戦った時、露華と雪吹はあの人達と知り合いみたいだったけど──どういう関係なの?」


 ああ、そういえば癒既に言ってなかった気がする。オレは麦茶を飲み、口の中の物を全て胃に送った。


「鑑、宝剣、光珠の三人は従兄弟の関係でさ。オレと宝剣の親同士がすげー仲良くて、それでよくオレもあいつらとツルんでたんだよ。……で、雪吹はオレを通じて鑑達と知り合った。オレと雪吹が喋ってた時にあいつらがオレんところ来たから紹介したの」

「……友達ってこと?」

「いいや? 腐れ縁。鑑と光珠ならともかく、宝剣と仲良し子よしだったらオレは死ぬ」


 癒既の言葉を否定する。マジで宝剣と友達というのだけは遠慮したい。


「何で?」

「あいつ、オレと性格似てるんだよ。オレと宝剣は気を許しあってる所もあるけど、意見のぶつかり合いも多いからさ」

「大体会うたびに口喧嘩が絶えないんだよね。それでいつも俺と光珠さんでそれを止めてるんだ。鑑はオロオロしてる」

「…………何かその場面が想像出来たよ」


 オレと雪吹の説明を受けて、癒既は苦笑した。

 

「む……。三人とも、そろそろ家を出なければ……」


 オレ達がそう喋っているとそれまで会話に参加せず食事に集中していたアストが壁の時計を見て言った。

 言われてみると、確かに学校へと向かわねーとヤバい時間だ。


「あ、そうだね。じゃあアスト。留守番よろしく」

「ああ。任せておけ」


 アストは雪吹に頷くと再び食事に集中し始めた。

 話によると、天界でアストに出されていた飯は口に合わなかったらしい。

 人間界の食べ物の方が旨いらしく、毎回食事の時は集中している。

 ……と、言っても、オレみたいにガツガツ食ってるわけじゃない。ゆっくりとよく噛んで味わって食事してる。

 雪吹が「露華もアストみたいな食べ方してくれたら……」とよく呟いてるけど、オレは自分の食い方を変える気は全くない。てか、無理。ちびちび食うのが性に合わねぇんだよ。仕方ねーだろ?


 オレは雪吹達よりも量が多い朝食をしっかりと完食すると自分の部屋に戻って鞄を引っ掴み、玄関へと向かう。


「露華、遅い」

「早く行こう」


 オレよりも先に食事を終えて準備完了していた雪吹と癒既は玄関でオレを待っていた。


「悪い。でも、まー気にするな」

「気にするに決まってるだろ? また遅刻したらどうするの?」


 雪吹の言うとおり、この間オレは食事に夢中になったせいで遅刻しました。

 ……うん。だから最近は前より十五分も早起きして朝飯の時間を確保してるんだけど。


「でも、まさか朝食の為に露華が少しでも早起きするようになるなんて……。叩き起こしに行かなくてもよくなったから楽でいいけど」

「あーもう、話はいいから行こうぜ! マジで遅刻する!」


 オレは雪吹の話を切って終わらせ、玄関を出た。


「もう! せっかく待ってあげたのに先に行くなよ!」

「雪吹……落ち着いて」


 先を行くオレの後ろの方で癒既が雪吹をなだめている声が聞こえる。


「早くしねーと置いてくぞーっ!」

「あーっ! もう、待って!」

「え、ちょっと待ってよ!」


 オレは走り出し、それを追うように雪吹が駆け出す。そしてそんなオレ達に慌てて癒既がついて来た。


 オレは前を向いて笑いながら学校へと急いだ。




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