第十一回イベント-終わりの始まり
エリアルSプライマルの振るうエナジーブレードがエリアルアイリスのライフルを切り裂いた。
エリアルアイリスがつま先からエナジーブレードを射出して蹴りつける。
「やりたい放題だな」
カガリが呟く。
エリアルSプライマルが宙返りして避け、ミサイルを放つ。
エリアルアイリスは後退してファンネルを射出して迎撃した。
爆発でエリアルSプライマルの姿を見失う。
「見失ったか?」
『真下だ!』
守岡の脳内に直接豊の声が轟く。
咄嗟にエリアルアイリスを反転させて、エリアルSプライマルの突き出したエナジーブレードをいなす。
「ちっ、気付かれたか」
カガリが舌打ちする。
『緊急回避を!』
カガリの脳内にヒナタの声が響く。
エリアルSプライマルがその場を離れる。
そこにレーザーが雨あられと浴びせられた。
『ファンネルを待機させていたのか。危うかった』
エリアルアイリスがファンネルと共に攻勢にでた。
ファンネルがオールレンジ攻撃でエリアルSプライマルの動きを制限する。
「そんな腑抜けた機動で俺は止まらないぞ!」
エリアルSプライマルがオールレンジ攻撃をしのぎきった。
「今度はこっちの番だ!」
エリアルSプライマルが超機動力でファンネルを圧倒する。
一瞬動きを止めて『隙』をつくり、ファンネルを誘う。
ファンネルはそれにつられて動きを止めて射撃する。
エリアルSプライマルはまた超機動力で正面のファンネルの後ろに回り込んでブレードを振り抜いた。
いくつかのファンネルが真っ二つになって爆発した。
後ろからエリアルアイリスが投擲したエナジーブレードが迫るが、難なく弾き返した。
エリアルアイリスは突っ込みながら弾き返されたエナジーブレードをキャッチしてそのまま斬りかかる。
エリアルSプライマルが回避するが、ファンネルの攻撃は正確にエリアルSプライマルを狙った。
『任せてください』
エリアルSプライマルが放たれたレーザーをエリアルアイリスの方へ弾き飛ばした。
『その程度』
エリアルアイリスがその間を掻い潜って肉薄する。
二機が激しく切り結ぶ。
凄まじい火花が二機のフェイスを鈍く照らす。
両者は互角のように見えたが、僅かにカガリが優勢になっている。
エリアルSプライマルの振るったエナジーブレードがエリアルアイリスのウィングに掠った。
「くっ、流石シンギュラリティ!」
守岡がお返しと言わんばかりにつま先からエナジーブレードを射出して蹴りつける。
「もう通用しないぞ!」
カガリはそれを難なく防いだ。
「それはどうでしょう」
エリアルアイリスの指先からビーム刃が飛び出す。
「そこにも!?」
エリアルSプライマルが後ろに下がるが、肩に損傷を負った。
残りのファンネルもここぞとばかりにレーザーを放つ。
エリアルSプライマルがライフルで狙撃して全て撃墜した。
「いつまで亡霊に縛られているつもりだ、守岡!」
カガリが守岡に呼びかける。
「亡霊?豊さんは常に私のそばにいてくれます。現にあなたと戦えているのがその証拠です。肉体に縛られなくとも人は存在できるのです。明確な意思を持って私を導いているのです。ヒナタが同じように明確な意思を持ってあなたを導いているように」
「ヒナタはただの人工知能のはずだ」
「あぁ、知らないんですね。豊さんには娘がいたんですよ。あなたが生まれてすぐに亡くなった日向という娘が」
カガリを強い衝撃が打ちのめす。
『所詮創造主の命令も順守できない出来損ないだ。一応役には立ったがな』
豊の声がガンガン頭に響く。
『私は日向の精神を人工知能に組み込み『スペースウォーリャーズ』計画を始動した。人間の限界を知るために、そしてその限界を突破するための方法を探るために』
「限界だと?」
『そうだ。シンギュラリティとは人間の脳を100%活性化させるものだ。ゲーム内での能力向上も少なからず関係している。最初の方は突然の酷使により副作用が出る可能性があるが、一度100%を経験している脳とそうでない脳の性能差を考えれば安いものよ』
「ただの人体実験じゃないか。取り返しのつかないことになったかもしれない」
「それだけのリスクを孕んでなお行うだけの成果があるんです」
守岡が答える。
「豊さんが言ったように100%使用された脳とそうでない脳には決定的な差があります。実際あなたはシンギュラリティの力を発揮しなくても黒蛇を倒せるようになったでしょう?シンギュラリティによって覚醒させられた脳は現実世界にも影響を及ぼすかもしれません。覚醒した人類がそうでない人類を淘汰していき、人類を次の段階へ押し上げるかもしれないんです」
「何が言いたい」
「要は、シンギュラリティによる覚醒が現実世界に影響を及ぼした場合、あなたは世界で最初の新人類になるかもしれなかったと言うことです」
「俺が新人類?」
『お前が人類の特異点となってこれからの世界を次の段階へ押し上げる、そう言う筋書きだったのだが』
「そんな.....そんな子供じみた妄想に俺を巻き込んで、同じシンギュラリティに覚醒したハナサギを苦しめたのか?」
『排除は試みたが苦しめたつもりはないな。奴が新人類に加わるのは少々癪だがな。どちらかといえば奴の方が期待できるかもしれん。あそこまでの成長スピードは予想外だった』
『すいません、カガリ。あなたにこの真実を伝えるのは酷かもしれなかった』
「いーさ、別に。親父に期待してた訳じゃないし、子供じみた妄想が俺のせいでおじゃんになるんなら本望さ。それより俺の姉ってマジなの?」
『データにはそう刻まれています。人工知能になる前のデータログは一切所有していませんが』
「そうか。くだらん御託を並べてもらったところ笑いが俺はあんたらを倒すことにしか興味ないんだ。親父がマッドサイエンティストもどきなんて笑えないからな」
エリアルSプライマルがエナジーブレードを構える。
ウィングが蒼く光り輝く。
『守岡、受けろ』
「了解しました」
エリアルアイリスが武装を全てパージした。
「行くぞ、ヒナタ!」
『いつでも』
エリアルSプライマルがエリアルアイリスに突撃する。
エリアルアイリスのコックピットをエナジーブレードが貫いた.....ように思えたが。
「な、なんだと」
エリアルアイリスの胸部に緑色のシールドが展開されており、エナジーブレードを弾いていた。
『何者かに干渉を受けています、気をつ』
ヒナタの声が途切れる。
「ヒナタ、どうした?おいヒナタ!」
『お前は所詮道具でしかないんだよ』
豊の声が異様に響く。
一瞬で悟った。
『ヒナタが親父に乗っ取られた.....意識が』
感覚がコックピットを飛び出して真っ暗な空間に放り出される。
『ハナサギを始末したら戻って来させてやる。それまで辛抱しろ』
エリアルSプライマルのウィングの光が蒼から碧色に変わる。
豊に乗っ取られたエリアルSプライマルがエリアルアイリスに乗った守岡に指示を出す。
『お前はログアウトして中継映像をシャットダウンしろ』
「わかりました。それでは」
エリアルアイリスが消える。
『さあ、アサルトシップを撃ち落とせ、ハナサギ。それが開戦の合図だ』
⭐️⭐️⭐️
ジリ貧で耐えていた俺たちは、アサルトシップのシールドが消えたのを見て歓喜の悲鳴をあげた。
「やった、シールドが消えたぞ!」
「カガリさん達がやってくれたんだ!」
《全機、最大火力をもってアサルトシップを攻撃しろ!》
エレンが指示を出す。
生き残ったアーマードスーツ達がアサルトシップに激しい攻撃を繰り出す。
「バーストマグナム、フルチャージ!」
赤いエネルギーの奔流がアサルトシップに大きな傷をつける。
「シールドがないと段違いに脆いね。全弾フルチャージでアレなのは目を瞑るとして」
ヴァリュートがバーストマグナムをパージしながら言う。
「行くぞハナサギ!」
ミネーが促す。
俺も勢いよく応えた。
「応!」
エリアルヘロンとエリアルシュトレインがアサルトシップに突撃する。
「「うおおおお!」」
二機がエナジーブレードを同時に振り抜いた。
アサルトシップが真っ二つに裂ける。
「よっしゃぁ!」
「やりぃーっ!」
「勝ったー!」
《やるじゃん》
《少ししか手伝えなくてすまなかった》
カナとグレイスが戻ってくる。
「そろそろラスボスか?」
俺が口にした疑問にユカが答え合わせをする。
《そのとうり、アーマードスーツが一機、そちらに超高速で接近中、ご丁寧に機体名まで教えてくれてるわ。機体名エリアルシンギュラリティ》
《シンギュラリティか、随分幕引きにピッタリなラスボスじゃないか》
カナがワクワクしたように言う。
《気を引き締めましょう》
エレンが自分に言い聞かせるように呟く。
エリアルSプライマル改めエリアルシンギュラリティが接近してくる。
《おい、あの機体は》
グレイスが驚愕する。
「とんだサプライズだね」
ヴァリュートが冷や汗をかく。
《エリアルSプライマルがラスボスねぇ、まさかこんなタイミングで願いが叶うなんてね!》
カナが大興奮する。
「これで最後だ、勝とう!」
俺はエリアルヘロンにエナジーブレードを構えさせた。
「もちろん、ただアリスがここにいないことが残念だけど」
「運営なんかに負けるわけにはいかないからな」
ミネーとヴァリュートが言う。
エリアルシンギュラリティがエナジーブレードを振りかぶる。




