驕りの代償(2)
エリアルヘロン達の前に三機のアーマードスーツが並び立つ。
「チャレンジャーはお前らか?」
真ん中のプレイヤーが尋ねてくる。
「チャレンジャー?まあ、そうだな」
俺は答えた。
「この基地は返してもらう」
「ふん、じゃタイマンね。ルールは特になし。やられた方が負け」
右のプレイヤーが自信満々にルールを提示する。
「じゃあ俺から行くぞ」
ミネーが前に出る。
「頑張れよ」
俺とヴァリュートは後ろに下がった。
「僕がやるよ」
左側のアーマードスーツがエリアルシュトレインの前へ出る。
《ジークフリート、負けるなよ》
《負けたら鬼ダサだからね》
二人が煽りながら後ろに下がる。
《負けるわけないだろ?僕は天才だぞ》
随分な自信だ。
『初手からビットンを射出してくるか?ならすぐ終わりそうだが、、、、、」
《エリアルキラー、準備よし》
『エリアルシュトレイン、オーケーだ』
《それでは、始め!》
合図が出されると同時にエリアルキラーがエンジン全開で切り掛かってきた。
「そう来たか!」
ミネーはそのままエリアルキラーの振り下ろしたエナジーブレードを防いだ。
《逃げないだと?》
ジークフリートが呟く。
エリアルシュトレインがエリアルキラーを振り払う。
「天才とか言ってたけど、こんなもんか」
《なにを!》
二機が激しくぶつかり合う。
エリアルキラーの繰り出す攻撃はどれも鋭いが、エリアルシュトレインにはかすりもしない。
全て避けられるかブレードで受け止められてしまう。
《今までの奴とは違う、、、、、》
「そりゃあ、それなりに場数踏んだからな」
ミネーがそっけなく返す。
「お前、装備頼みだろ?特にビットン系の自動追尾兵器」
《うっ、ち、違う!》
「図星か。別に悪いことじゃないけどな」
ミネーはそう言いながらエリアルシュトレインを巧みに操り、エリアルキラーの攻撃を防ぐ。
《クソァ!》
エリアルキラーががむしゃらにエナジーブレードを振るう。
『プライマルクランはこんな奴らに負けたのか?』
《ビットンさえあれば、お前なんか!》
エリアルキラーがエリアルシュトレインから距離を取る。
『来る』
エリアルキラーからビットンが射出される。
ビットンはエリアルシュトレインを目標に設定し、飛翔する。
エリアルシュトレインは全速でビットンに突っ込んでいく。
《な!自殺するつもりか!?》
ジークフリートが驚く。
ビットンからレーザーが放たれるが、エリアルシュトレインはそれを避けながら確実にエリアルキラーとの距離を詰めていく。
《ヤバい!》
ジークフリートがそう言って機体を後退させる。
「逃すかよ」
エリアルシュトレインがビットンを切り裂く。
《な、なんだよアイツ》
《ふ、ふん、なかなかやるじゃない!》
二人は驚きを隠せないようだ。
《チート使うなよ!卑怯者!》
ジークフリートが叫ぶ。
「使ってねぇよ!癒着女と一緒にすんな!」
ちなみに癒着女とはブルーファイターズのリーダーのことである。
《嘘つけ!運営に通報してやる!死ね!》
実に子供らしい返答である。
「直接的な暴言はマナー違反だぞ!」
エリアルシュトレインがエナジーブレードを構える。
《うるさいうるさい!》
エリアルキラーが自棄になって突っ込んでくる。
二機がぶつかる瞬間、エリアルシュトレインが機体を捻り、エリアルキラーの突き出したエナジーブレードを避けてそのまま頭部から股までズバッと切り裂いた。
《そんな!》
エリアルキラーが爆散した。
「よーし、俺の勝ち」
ミネーがそう言ってハナサギ達の所へ向かう。
「やっぱ勝てたな」
俺がそう言うと、ミネーは呆れたように返した。
「流石に負けねぇよ」
「てかめっちゃ強くなったね」
ヴァリュートが感心したように言う。
「あんだけ戦ってきたんだから、それなりに強くなるだろ」
「次はボクが出るよ。お仕置きしてあげないとね」
《やられるとか鬼ダサ。ゴッド、あんたなら負けないよね》
《当たり前だろ。ジークフリートは運が悪かったんだ》
ジークフリートとヴァリュートのアーマードスーツが向かい合う。
《エリアルグレイプニル、準備よし》
「エリアルゴースト、大丈夫だよ」
「じゃあ、よーいスタート!」
エリアルグレイプニルが後ろに飛び退る。
先ほど同様、ビットンが射出される。
「さっきの見てなかった?」
ヴァリュートが距離を詰めようとするが、エリアルグレイプニルから放たれたバーストマグナムに阻まれる。
「うわっと、そこまでバカじゃないか」
ヴァリュートが笑いながら言う。
《子供だからって舐めるなよ!》
ビットンとバーストマグナムの攻撃がエリアルゴーストに降り注ぐ。
「なかなか激しいね!」
ヴァリュートが楽しそうに言いながら攻撃を避ける。
《こいつも避けやがる!》
ゴッドが驚愕する。
「なに驚いてんの?予想できたでしょ!」
『新しい装備を使ってみるか』
エリアルゴーストが淡い緑色の光に包まれる。
ビットンから放たれたレーザーが湾曲する。
《え!?》
「わー、すごいねこれ。五秒の制限時間と移動速度低下はあれど、全然戦えるね」
ヴァリュートが自機にブーストをかけて一気にエリアルグレイプニルとの距離を詰める。
《正々堂々と勝負しろ!大人だろ!》
「ボクに手を抜けって言うの?君は本気でやってるのに?君が本気を出すならボクも本気を出さないと、正々堂々と勝負出来ないよ?」
『なかなかの詭弁かもだけど相手は子供だし大丈夫でしょ。実際黙っちゃったし』
《うっ、、、、、ぐすっ》
『えー、泣いてる?そこまで刺さるとは思ってなかった』
「はーっはっはっは!大人の力、思い知りなさーい!」
エリアルゴーストがエリアルグレイプニルを真っ二つに切り裂いた。
《、、、、、っ!なんなの?昨日はあんなに強い奴らいなかった》
残った一人が唖然とする。
「ふー、次はハナサギ君だね」
ヴァリュートが戻ってくる。
「お、おう。頑張るよ」
「あいつらホントに大したことないみたいだし」
「そ、そうなんだ、ははは、、、、、」
俺は何故か性格の悪くなったヴァリュートにちょっと引きながら残りの一人の前に向かった。
《あたしはあいつらとは違うからね》
「えーと、プレイヤーネームは?」
《、、、、、アテナよ》
「戦乙女だっけ、かっこいいね」
《う、うるさい!ぶっ殺してあげる!》
アテナが怒鳴る。
「エリアルヘロン、準備完了」
《エリアルククバーヤ、準備完了よ》
両者のボルテージが上がる。
ミネーとヴァリュートが固唾を飲んで見守る
ミドリも緊張した面持ちで見守っている。
「それでは、始め!」
ミネーが開始を宣言した。




