閑話休題(3)
『ノアの方舟』に着艦したエリアルヘロンのコックピットが開く。
「はー、イベントクリアかー」
俺はコックピットを潜り抜け、同じタイミングで降りて来たミネーと合流する。
「お疲れさーん」
俺はとりあえず労った。
「おーう、ハナサギもお疲れ」
ミネーが微笑みながら言う。
「、、、、、リクがやられちまった」
「死亡フラグは折れないからな。本当に辛いのはファナリスだろうよ」
「二人ともお疲れー、いやー楽しかったね」
アリスがヘラヘラ笑いながら近づいてくる。
後ろにヴァリュートもいる。
「あんな数の相手なんかしたことなかったから、ちょっと疲れちゃったよ」
ヴァリュートが苦笑いする。
「まだログイン、ログアウトは出来ないみたいだし」
「ねー、早く帰ってご飯食べたいよー」
アリスがわざとらしく嘆く。
「まだログアウト出来ないのか。ったく困るぜ」
ミネーが呆れる。
⭐️⭐️⭐️
「黒蛇の単独撃破、彼は紛うことなきSです」
エレンがカガリに伝える。
「本当にすごいよ彼は。実を言うと少し厳しいと思ってたんだ。でも彼はやってのけた」
「そうですね。代替わりは順調、ですね。私は認めたくありませんが」
エレンがムッとしながら言う。
「そうか?いつまでも俺が頂点に君臨してもつまらんだろ?『スペースウォーリャーズ2』もそろそろ出ると言う話だし」
「どうせデータ引き継ぎできますよ」
「一から再スタートだ」
「せっかくのSの力が失われるなんて、、、、、」
「俺が培ってきた技術は消えないよ。というか、引退しないだけマシと捉えてもらえないかな?」
「はぁ、そうですか。話は変わりますけど」
「、、、、、全く動きがなかったな」
「ええ、黒蛇の出現率に違和感がありましたが、露骨な妨害はなかったようですし、運営のチートキラー機も確認されませんでした」
「エリアルイウデクスと他四機か。どさくさに紛れてハナサギを討つことはできただろう。ただあの乱戦だ、気づかんうちに倒していた可能性も大いにある」
「、、、、、やはり第十一回イベントでしょうか」
「相当無茶なことを言ってくるだろうな」
「運営みーんなカガリさんのファンなんですよね?ガツンと言ってやってくださいよ」
「いや、俺のファンと言うか、俺の親父の部下だった人たちなんだよ。少なくとも俺はそう聞いていた」
「え?」
エレンが困惑する。
「人工知能ヒナタは俺の親父が作ったんだ」
「このゲームのCPUキャラを全て動かしているかつ、このゲームの開発に大きく関わった人工知能を?」
「そうだ。親父がなんの目的でこのゲームを作ったのかは知らん。俺のSは意図的に付けられたものだ。正確に言うと、親父の命令でヒナタがつけた、というのが正しいな」
カガリから衝撃の事実が明らかにされる。
「、、、、、驚きです」
エレンが呟く。
「カガリさんのお父さんと運営はカガリさんを『スペースウォーリャーズ』でトップにするためにシンギュラリティの能力を?」
「恐らくな。そうなるとハナサギの存在がおかしくなる。運営が俺と同じシンギュラリティの能力を持つ奴を放っておくわけがない。能力の削除なり試しただろう」
「でも未だに消えていないどころかその力は増すばかり、、、、、」
「ヒナタが関わっているのかもな」
「直接聞いてみたいところですが、向こうからコンタクトを取ってくるのを待つしかないでしょうし」
「そうだな。今は何もないことを祈るばかりだ」
⭐️⭐️⭐️
「黒蛇すら倒されちゃいましたね」
「くそっくそっくそっ!なんなんだハナサギは!」
守岡が台パンを連発した。
「ヒェ」
「あの人との約束が、、、、、」
「辛抱ですよ、一ヶ月後までの」
「今度こそ、完膚なきまでに叩きのめしてやる」
⭐️⭐️⭐️
現実時間にして二時間半、ログイン、ログアウトが出来なくなるバグは解消され、ハナサギ達は『スペースウォーリャーズ』の世界からログアウトした。




