バッジ
ジェイ王国内は人で溢れかえっていた。
完全実力主義という王国だと聞いていたのに、さっきのようなことをされては信じられなくなってしまう。
「よし、まずは腹も減ったことだし、さっき貰った金で飯でも買うか。」
あたりを軽く見回してみると、商店街と飲食店街、冒険者街、市場、教会といろんな施設やらが充実していた。
飲食店街に足を運ぶと、周りから良い匂いがしてきた。
「あぁ〜腹減ったぁ。」
「兄ちゃん!串刺しうめえぞ?」
そう言って肉がたくさん刺さっている串を見せびらかしてきやがった。
「一本いくらだ?」
「2銅貨だ。」
安いな。
1金貨が100円ぐらいで1銀貨が10円ぐらい、1銅貨は1円だ。
一本2円で食えるというのか。
最高すぎるだろ。
「んじゃ2本くれ。」
「4銅貨だ。」
「ほい。」
「毎度!!」
早速買った串刺しに齧り付く。
肉から汁が溢れて、焦げた醤油のような味が口いっぱいに広がる。
「ってこれ醤油じゃねえか!?」
思わず大声で言ってしまった。
何十年、何百年という莫大な時間が過ぎようとも、この慣れた味は忘れることができない。
めちゃくちゃ久しぶりの醤油に泣きかけてしまった。
もうちょい買えば良かったと思いつつ、2本目を一瞬で食べ、さらに奥に進んで行った。
流石、飲食店街、人が多いなと思いながら歩いていると、奥の方から揉め声が聞こえてきた。
「なんだ。なんだ?」
近くに行ってみると、地面に手をついて憶えまくってる男女の子供と今にも殴りかかりそうな男を抑えるガタイの良いおじさんがいた。
周りの人たちは珍しいものを見るかのように誰も手助けをしていなかった。
「これはなんなんだ?」
「んぉ!?見てわからねえのか?剥奪決闘が起ころうとしてるんだよ。」
「何を剥奪するんだ?先程この国に入国したばかりで何も分からねえんだ。」
「それは運が良いなぁ!今からあそこの兄ちゃんと2人のガキ達がこの国での生活を賭けた決闘が起ころうとしてるんだ。」
「負けるとどうなるんだ?」
「兄ちゃんが負けると、肩についてる白色のバッジが黒色に降格する。逆にあっちのガキ達が負けると黒色のバッジから色無しのバッジになるんだ。色無しのバッジはこの国には要らねえ。追放だ!!」
説明してくれた人の肩には赤色のバッジが付いていた。
他にも青色のバッジや黄色のバッジ、いろんな色のバッジを付けてる人がいた。
「俺にはそういうバッジは無いのか?」
「入国したてでバッジのことを聞いてくるとは度胸のあるやつだとは思うが、今はこっちの方が熱い!バッジに関して聞きたければこの国の真ん中にある管理局に行くんだな!」
観衆がどんどん増えていくので俺は目的の家具を探しに商店街に足を運んだ。