パーンチ!
王女が泣きながら事情を話し始めたことで、男も状況を理解したところでやっと、そっちのミスという事が分かったのか、顔色が悪くなっていた。
「おい、それでどうなんだ?」
「ぇと、その...。」
「ここの王国は王女様を助けた者には拘束という名のプレゼントでもしているのか。あぁそうなのかぁ!」
「我々の身勝手な行動、本当に申し訳なかった!」
男は重そうな鎧を着ているにも関わらず、素早い動きで土下座した。
「おぉ、綺麗な土下座だ。(この世界にも土下座はあるのか。)」
「私からも、すみませんでした。」
「おっ、良いもん見れたぜ。」
まぁ、完全に俺は悪く無いからな。
「んであいつらどうしよっか。」
あいつらとは、廃人宣言してやった兵隊達のことだ。
魔淵の森の一部分を引っ張り出して、森の代名詞とも言える単語を言うだけで発動する固有魔法だ。
「我々の兵達は...。」
「廃人になってると思うがそれでも良いか?」
「廃人...。そ、そうでした!普通に今立ってるこの場所、一体どこなのですか!?私たちは検問所にいたはずだったのに。」
「ここは検問所でもあり、『魔淵の森』の一端でもある。
『魔淵の森』は俺の魔法魔法だ。」
「あの森はバシー地方の最奥にあったはず!その森があなたの魔法...?」
「説明めんどいから省くけど、とりあえず兵隊達は返しとくわ。【異界・吸収】」
形成された森が水を吸うスポンジのように俺の手の穴に戻っていく。数秒も経たないうちに森は姿を消した。
真っ赤な手のひらは何事もなかったかのように、傷跡が塞がっていた。
「まぁ、こんな感じだな。今の魔法使いには理解できないと思うが、昔の魔法だ。あぁ、ほらあそこに...。」
指を指した場所には積み重なるように重なった兵士達が横たわっていた。
誰一人として動いておらず、死んでしまったのか?と思っていると、ぴくりと反応を見せ、一人、また一人と立ち上がっていった。
「おい、お前たち大丈夫か!?」
男が急いで向かうが兵士たちは上の空だった。
空に向かって、うー、あー、しか言っておらず、半目でゾンビでも見てるかのようだった。
「まぁ仕方がないよな。俺に攻撃したんだから。相応の結末だ。」
「にしても、これは...。」
「何か不満でも?完全実力主義の人間なら、対戦する敵の実力ぐらい見極めなくては。」
パーンチ!
へへっ、傷ついた相手に精神にも攻撃をする。
気持ちいいぃ〜!」
「じゃあ要件も...済んでねえわ。俺ここに来た理由があったんだったわ。」
「で、では案内の延長上と言うことで...。」
「いや、対価はもう支払われた。これ以上は要らん。自力で探すわ。」
そう言って、王女と男を放置して、守るものが誰もいなくなった検問所を素通りしていき、王国内に入った。