思ってたのと違う
日本語ムズカシイよ~
「朝はコーヒー?誰があんなもの飲めるっていうんだ。」
俺は木でできた椅子に座り、言葉を吐き捨てた。
俺しかいない空虚で静かな部屋には、埃まみれの本と廃物廃物が散乱していた。
「はぁ、ここで何年、何百年と過ごしているが変わらないなぁ。」
朝日が昇り始めたころに起き、家の外にある樹で薪を作り、お昼ごろにご飯を食べる。
読み残した本を完読し、新たな知識をつけるべくまた本を読み漁る。
そんな暮らしを望んだのは他でもない自分自身なんだが、思っていた生活では無かった。
豊かな森での暮らしに慣れてしまったせいか、昔のような生活はできなくなってしまった。
無限に無限にある時間ある時間のせいで、暇なので、日々堕落した生活を送っている。
「そろそろ片付けなきゃだなぁ......。」
天井近くまで積み上げられた今にも崩れ落ちそうな本を見つめながら、水を飲みほした。
コップを机の上に置いた瞬間、机の脚が壊れ、その振動で座っていた椅子も壊れた。
「やっべ!」
自分自身の時が動かなくても、周りの時間は進んでいるので家具や家は経年劣化が来ていた。
そんなことよりも今もっとも注意しなければならないのは本だ。
今の振動でこっちに倒れてきている。
倒れこんだ衝撃で腰を強打してしまった。
その間にも本は俺を覆いかぶさろうと崩落している。
「【魔鎖】」
炒められて、宙を舞う炒飯のような芸術的軌道で本は動きを止めた。
「ふう、助かった。」
本を元の位置に押し戻し、壊れた愛しい家具たちを眺めた。
「久しぶりに街に行ってみるか。世界は変わったのかね。」
経年劣化...いや、ヴィンテージな小物入れから通貨を探してみた。
あっちの世界でこんな物持ってたら、なんでも買えていたのだろう。
金貨と銀貨、念のために、銅貨も持っていくか。
後は、身分証と小さなポーチも。
家周辺からは出なかったので遠出をするときのいつもの持ち物のセットを忘れてしまった。
「まぁ、足らなかったら...それはそれでいいか。思い立ったらすぐ行動だ。さ、行くか。」
勢いよく外に飛び出したが、綺麗な星空に涼しい森。
時間的概念に支障をきたす程の人間になってしまったのかとややショックを感じたものの、ポーチから杖とローブを取り出し、森に向けて魔法を放った。
「【復元】」
空気が震えだし、鳥や生物たちが騒ぎ出す。
そんなことを気にもせず、魔法を行使し続ける。
数秒経った頃、一点に集中するように吸われ続け、逃げきれなかった生物たちが飲み込まれていく。
現実離れした魔法だとは自覚している。
思ったところで俺には何とも感じない。
住んでいた家ごと吸われ、森ごと消滅していた。
黒い球となった物体はポーチに吸い込まれていった。
「さて、行くか。」