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4.孤児院と突然の覚醒

 その宇宙人はありえないほど巨体であった。大きさはゾウ二匹分くらいあるだろう。肌は血のように真っ赤で、こぶしほどもある目玉はぎょろぎょろと目まぐるしく動いている。足など百本は軽く超えているようだった。

「ま、ま、魔王さま……」

 ウィリーが真っ青になってつぶやく。この宇宙人が魔王だと知り、ララたちはぎょっとして目を丸くした。

 一方魔王は、赤い肌をさらに真っ赤にしながら叫んだ。ライオンの吠え声のような声だった。

「貴様……! 我が城にこんなものを作りやがって! 断じて許さない! 死刑判決だ!」

「お、お許しください、魔王さま……。ど、どうか命だけは助けてくださりませんか……」

 おばさんがふるえながら命乞いをする声すらも、魔王の耳には聞こえていない。目をつりあげながらぐんぐんおばさんに向かっていく。

「この方になにをするつもりですの⁉」

 孤児院がしんと静まり返った。おばさんの前に、レベッカが立ちふさがっている。両手を広げ、魔王のことを刺すようににらみつけていた。

「この方がなさったことは、とても大事なことですわ! 命を狙われている子供たちを守り、育てていらっしゃいますもの! 殴るならわたくしを殴ってはいかがかしら? プルトン公爵家の血縁ですもの」

 レベッカは正論を叫んだだけだったが、魔王にはそれが挑発に聞こえてしまったらしい。怒り狂い、魔王はレベッカに攻撃しようとしたのだ。

 そのとき、ウィリーはひどくおびえていた。

(どうしよう……。魔王の攻撃を真正面から食らったら、レベッカは塵も残らず消えちゃうよ……。……魔王、最低だ!)

 ウィリーの気持ちは、おびえから怒りへと変わった。魔王の理不尽な行動が、許せなくてしかたがない。ウィリーはレベッカに気を取られている魔王に向かって、無意識のうちに叫んでいた。

「サンダー‼」

 すると、ウィリーの目からなにかが飛び出してきたのだ。それは光線だった。まぶしい黄色の光を放ちながら、高速で魔王のほうへまっすぐ向かっていく。

「ぎゃあああああ!」

 魔王は悲鳴をあげる。

 光線は見事に魔王にぶつかった。その瞬間、魔王は真っ黒に焦げたのだ。元の赤い肌がうそのよう。魔王はにくにくしげにこちらを見たあと、

「覚えとけ!」

 と叫び、あっけなく散った塵のごとく去っていった。

 ウィリーのおもわぬ行動に、ララとレイエス、そしてレベッカはぽかんと口を開けて驚いてしまった。そのまま固まっている三人に、ウィリーはにっこりと微笑む。

「宇宙人ってね、激しい『怒り』という感情を覚えたとき、覚醒するんだよ! だから、ぼくは光線が打てたんだと思う!」

 理由を説明され、ララたちは納得したように何回もうなずく。それから、ぱっと笑顔になった。

「ウィリー、すごいわ!」

「尊敬しますわ!」

「心強いなぁ!」

 いっせいにまくし立てられ、ウィリーは少し照れたように顔を赤くする。

 もうそれからのことはよく覚えていない。たしか、いらいらするほど広いインファキャッスルの中を必死に歩き回り、やっとマーティンを見つけたのだ。檻に入れられたマーティンを救い出したあとは、みんなでUFOに乗り込み、アビーギャラクシーから脱出したのである。

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