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戦闘イベント

「………………家出たときの言葉、フラグっちゃったか。……最悪だ」


 洋海の家から帰っている途中、フラグよろしく魔愚に会ってしまった。まあ会ったというより俺が異能で気配を察知したんだが⋯⋯。

 出現したところは魔愚が大好きな路地裏。

 やはり、フラグになるような発言は控えたほうがいいね。ちょっとした言葉で不幸を招く。


「今回の魔愚は人型か⋯⋯ちょっと前までは人型みたいな強そうなやつはいなかったんだがな⋯⋯」


 魔愚は形容しがたいうめき声をあげながら俺に対してその黒い腕を振り上げ、破壊力を持った腕を振り下ろす。


「おっとっ、人型とはいえまだ喋れるような知能はない、か。⋯⋯でもそのうち喋れるやつ出てきそうだな⋯⋯」


 それを俺は避けながら最近の魔愚に対する考察をする。

 そう、最近の魔愚は単純に強くなってきているだけじゃなく知能もついてきている奴が多くなってきている。

 なぜそんなことが起こっているのか俺には皆目見当もつかない。


「まあ、まだ簡単に倒せるからいいんだけど⋯⋯ねっ!」


 そう言いながら俺は異能で身体能力を強化し、まあまあ図体のでかい魔愚の頭まで一気に跳躍してそのまま頭に飛び蹴りを喰らわせる。

 そうすると魔愚は呻き叫びながら吹っ飛び、壁に激突する。

本当なら壁までぶっ壊れるところを俺の異能でそれを防ぐ。


「あ?」


どうやら魔愚はまだ動くらしい。ここまでの衝撃を喰らわせたらもう全く動かないと思ったのだが……。

だけど立とうとしたところでまたもに動けないだろう、ここは立ち上がりきる前にトドメを──


「グアアァアァアァアァァァァァァァァァァ!!」


しかし、俺の予想とは裏腹に魔愚は素早く俺の目の前まで迫り、顔に向けて拳を振るう。

───早いッ!!?


「フ───ッ!!」


俺はそれを異能と精一杯の気合で避けきる。

拳は、俺の鼻先数ミリを通り過ぎていった。

何が起こった?今までの戦ってきた魔愚と明らかに違う。

ぶっ飛ばされたあとに動くのも予想外だが、俺が一番驚いているのはぶっ飛ばされたあとだというのにあのスピードで動き、攻撃してきたことだ。

それに、あの攻撃。おそらく喰らっていたら……俺がヤバかった。

俺がぶっ飛ばされていただろう。その後の追撃の可能性も考えると、危機的だった。


「おい、なんでそんな動ける」


魔愚が強くなったんならワンチャン知能も上がって会話もできるんじゃね的な考えでいきなり危機的状況に陥ったムカつきも混ぜて問いかける。


「………グァアアアアァァァア!!」


しかし魔愚は答えない。

まあ、殴りかけてきながら獣みたいに咆哮を上げていることを考えると知能なんかちっとも上がってないのだろう。


「まあいい」


確かに魔愚は強くなった。

しかし、それで俺に勝てるといったら……勝てない。


「残念ながら、その程度では俺に勝てないぜ?……あ、不意打ちでヤバかったのは置いといてね?あれはしゃあねぇーからー!?」


その言葉を吐いてから俺はさっきの倍以上の出力で身体強化をかける。

そしてそれと同時にタイミング良く魔愚がこちらに駆け出し腕を振りかぶる。

俺はそのスピードを出し向かってくる魔愚の懐に潜り込む。


「おせーよ」


身体強化を今までに初めてなくらいの出力でかけた俺にはその動きが酷く遅く見える。


「フッ!」


まず腹を殴る。


「ハァッ!!」


そしてよろめいた魔愚の横っ腹に思っきし蹴りを入れる。

こうなったらさっきと一緒だ、ぶっ飛んでった魔愚は壁にぶつかる。


「セイッ!!」


 そしてそのまま異能でカッチカチにした右腕で渾身のストレートを放つ。

 ズガンッッ!という日常ではなかなか聞かない衝撃音を響かせながら魔愚はその存在を消滅させる。


「今回はノーダメ縛り成功……か。今回の奴はマジでヤバかった……避けられてなかったら死んでたかも知んねぇ……」


まあ生きてたし、結局簡単に倒せたしまあいいか。何事も結果論で行こうぜ。

 ちなみに、戦っているときに異能異能ばっか言っているが、使い方が多様過ぎて結局どんな能力なのかというと、これまた異次元レベルで汎用性が高いチート能力だったりする。

 それは『想造』。

 字の通り何かを想い、その状況を造るのが俺の能力。

 例えば、さっき俺が魔愚と戦う時にやったように、身体能力が高くなった自分を想うことで、実際自分にそんな動きはできないのに無理やりできるようにしたり、自分の腕を固くしたり、無駄な破壊がないように壁などの物体の硬化したり。

 あと、ここら辺一帯を知覚することで立体的な地図を脳内に造りだしたりして、魔愚の場所を察知したりしている。


「やっぱ改めて考えると俺の能力ぶっ飛んでんな⋯⋯。つっても、油断しててまともな異能発動してなかったら簡単に死ぬんだけどな」


 そう、さっきの魔愚の不意打ちの攻撃、あれはガチで油断してたから喰らうとやばかった。

 とはいえほんとに、俺の異能が科学者とかに知られたら絶対やべー実験とかされるよなぁ。

 いやダメだダメだ!こんなことを考えるとまたフラグになってしまう⋯⋯!

 こんなことがフラグになってそれが回収なんてされたらシャレにならん!絶対にそれは回避しなければ⋯⋯!

 いや、ちょっと待て。そう考えると大体人がいないところに出現する魔愚はひっじょーーに俺に優しい存在なのでは⋯⋯?

 魔愚が路地裏などという暗いところに出てくることで俺の異能の存在は人にバレてなかった⋯⋯?

 ま・じ・か。ナイス魔愚!ありがとう魔愚!!俺はお前らのおかげで平和が保たれていた⋯⋯!

 ⋯⋯じゃっ!ねえよっ!!お前らがいるから俺は異能を使わなければいけなくなってんだよ!!テメエらのことを察知するために年がら年中脳内に立体地図造って位置探ってる俺の苦労わかってんのか!?あぁ?


「ま、それさえ異能で苦労に感じさせないようにしたりなんなら疲労を回復したりできるからいいんだけどね」


 こんな自分の力での疲労を自分の力で回復、というのはよくある物語だと知らないところでガタがきて体が崩壊。とかがよくあるがそんなの知らない。だってこの力で中一からやって何もなかったんだから。


「⋯⋯帰るか、あー飯作らないといけないのかー⋯⋯なんかめんどいなー」








「あいつが同じ学校で家もこんなに近いとはな⋯⋯世界は狭いもんだ」


 今はもう風呂に入り終わってベッドでごろごろしている。

 今からはゲームしたりネット小説読んだりサブスクでアニメを見たりする時間だ。

 何気にこの時間が俺は一番好きだったりする。ボッチだから学校で話して楽しんだりする奴いないし。

 あいつは学校ではボッチだろうけど家では父親はいないが母親がいるだろうし会話も弾むんだろうな。


「家族⋯⋯か」


 俺にとってはもともとから半分足りない、しかも中一で思い出が途切れた、人が集まって作る身近なはずのその形。


「家族と過ごす思春期ってのはどんな感じなんだろうな」


 ま、考えてもいないもんはいない。無駄なことか。

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