ショートホラー第4弾「1つ多い窓」
「やっぱり、変よ……」
格安で中古の家を購入した。
2階建てで築年数も決して古いものではない。
もしかしたら曰くありかと思われたがそう言った告知は無かった。
異変に気付いたのは引っ越し作業をしている時。
妻がふと、こう口にした。
「ねぇ、窓の数がおかしくない?」
何のことか最初分からなかったが話を聞いてなるほど、と思った。
家の中で確認できた窓の数と外から見た窓の数が合っていないのだ。
外から見た方が1枚多い。
件の場所に行ってみると廊下の突き当り。
だが壁を触って気づく。
「ああ、この先に空間がある」
まるで小説の世界だ。
この壁は、この先の空間を隠すためのものらしい。
「ねぇ、これってもしかして何か事故のあった部屋を隠しているとかかな?」
「かもな」
「もしくはこの向こうは壁一面に『おかあさんごめんなさい』とか壁一面にぎっしり文字が書かれてるとか」
「止めろよ。気持ち悪い」
ああ、そうだ。
妻はこういったオカルトが大好きなんだ、
□
数日後、知り合いに頼んで突き当りの壁を崩してもらう事にした。
そしてやはり、壁の向こうには扉があった。
「秘密の部屋かぁ。何かわくわくするわね」
「俺は不安しか無いよ」
不安を感じながら扉を開ける。
そこは4畳ほどの狭い部屋だった。
壁は綺麗だ。何も文字は書かれていない。
床も張り替えた後なんかは見当たらない。
何だ、倉庫とかだったのかな?
それでも何で隠してたんだろう……
「ねぇ、ちょっと変よこれ」
妻が恐怖を含んだ声を出す。
「何が?」
「だってこの部屋……『窓が無い』じゃない」
「そうだな……だから倉庫とかだったん……じゃ!?」
そこで気づく。
確かに外から見て1枚多い窓の場所はこの空間だ。
だけどここには……『窓が無い』。
廊下からの明かりで辛うじて部屋の中がわかるのだ。
「そんなバカな!!」
窓があろう位置に近づく。
そこの壁を叩くが塗り固められているとかそういった様子はない。
本当に『窓が無い』のだ。
じゃあ、外から見えていた窓は?
そんな事を考えていると、階下で物音がした。
鍵がガチャリと動く音。
間もなく扉が開き、そして閉まる。
皆が顔を見合わせた。
あの窓は何だったのか?
今も外から見たらどうなっているのか?
玄関が開いたのは何だったか?
何かが出て行った?もしくは入って来た?
敢えてふわっとぼかしてみました。
後は皆さんの想像にお任せまします。