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蛙の恋煩い  作者: E’zSHOW
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蛙に相談

誰かの話を聞くことで今の自分を客観的に見ることが出来る。

そんな時ってないですか。

自分の事すらまともに出来ていないのに他人の面倒を見るのは傲慢だとも取られますが、同じ穴のムジナの方が気持ちが分かる分どうすればよかったのか意見できます。

成功者はその選択で失敗していなかったので逃げの選択も提示してきます。

【うらやまし蛙】

放課後のチャイムが鳴り、生徒会室へと向う史上暦の前に同じクラスの女子が立ちはだかる。

先程からチラチラと視線を送っていたため、何か話があるのだろうことは容易に察する事ができた。

そのため、1つため息を吐き出すと手近な席を引いて座るように促す。

「私に話が有るんでしょ仁科更にしな・さらさん」

「うん、こよみんはこういうの得意だって皆に聞いて!」

思い当たるのは歴史のテストである。

テスト勉強の面倒を見てほしいというのは度々相談を貰ったことがあるので、今回もその類なのだろう。

「まあ、人並みには……ってなると謙遜になっちゃうけど」

「やっぱり百戦錬磨って噂は伊達じゃないんだ!!」

悪くない響きである。

百戦錬磨の戦国武将だったら誰が居ただろうか。

武田信玄、上杉謙信、豊臣秀吉、徳川家康、織田信長。

指折り自分が比肩させられていそうな百戦錬磨を妄想し没頭する思考回路。

それを叩き起こしたのは次の発言だった。

「恋の百戦錬磨のこよみんに相談に乗って欲しいの!」

「え?」

史上暦は男女別け隔てることなく人気の生徒である。

だがしかし、こと恋愛においては優等生ではない。

むしろ劣等生が当てはまり、それどころか厄介な性質を持っている。

この史上暦も蛙化現象に悩まされている一人の女なのだ。

蛙化現象をするようになったのは趣味が周りと合わない事によるものだ。

共通の趣味が無くて長続きせず、話をしても話が合わない事から恋愛が苦手になったのだが、この女全く他の趣味を作れないし打ち込めないのである。

「恋……恋かぁ」

しかし、恋も全く専門外という訳ではない。

百戦錬磨程の経験は無いが、歴史オタクの入口が美少年化された戦国武将のSRPGシュミレーションアールピージーであり、戦略性のあるチェスのように武将を動かしては恋模様も描かれるというものだった。

故に、伊達政宗と上杉謙信という推しになけなしの小遣いを貢いだ悲しい過去を持つ。

歴女であり、恋愛ゲームに打ち込んだ経験が彼女を動かす。

過去の恋愛ではなく、恋愛ゲームを参考にする辺り彼女の思考の沼が露呈している。

「ちなみに相手は誰なの?」

「歳下の……」

「てことは、一年生?」

「うん、流石に中等部の子は子供っぽいかなって思うし」

仁科は頬をかき、やや照れながらそっぽを向いた。

「一年生かぁ、それなら話をする機会あんまりないよね」

「で、でもでも!お家がお店開いてて!それで結構顔を合わせてるから!」

関わりが無さすぎてノーチャンスという訳でもあながち無さそうである。

想定されるイベントを指折り数えるが、客と店員では天と地程に差がある。

何せ客は神であり、接客するためのサービス対応にはリップサービスもあるだろう。

どれだけ褒めていても本当にそう思っているのか、口から出任せでもあり得る。

「店員さんから声をかけるのはあんまし無いと思うから、自分から動かないとかなー?なんて」

仕事に私情は挟めないからだ。

「うーん、そっかー、じゃあ、勇気を振り絞らないとなんだね!」

「うんうん、チャンスはそんなにコロコロ巡ってこないと思うからがんばってね」

やる気満々といった風にガッツポーズする仁科更。

「ありがとうこよみん!」

「うん、私に出来る事ならいつでも相談してね」

そして、後に死ぬほど後悔することになる。


実はこの女、意中の相手が居た。

生徒会会計をしている一年生の青春駆である。

中等部の頃に告白されたのだが、返事もせずに泣いて逃げた事を今でも思い出しては泣いてしまう。

というのも、その当時付き合っていた人が居たからだ。

今は高校を違えたので会うことも無いのだが、駆による告白に心動かされてしまい付き合っている人に申し訳なくなってしまったのだ。

それ以来、駆を視界に入れないように逃げたり、友達にも関係を作らないように無視をしてもらったりと罪悪感を誤魔化していた。

互いに生徒会に所属することになることが分かり、仕事だからという建前のおかげで話せている。

そう、罪悪感こそ有れど駆の事が意中の相手であり、死ぬほど好きな相手なのだが、趣味が合わなくて話が合わなすぎるのが怖くて告白出来ないで居るのだ。

そして、後悔の内容とは駆に関係する。

なんと仁科の行動は実を結んだのである。

相談を片付けたため向かう先は生徒会室。

その生徒会室に向かうのに何故か前を歩く仁科更。

生徒会室に何か用事でもあるのだろうかと安穏と構えていた。

勢い良く扉が開かれ、そこでデスクに向かっていた駆と仁科の後ろに居た暦の視線が交わった。

嫌な予感がする。

生徒会室に居る一年生男子は青春駆しか居ないからだ。

咄嗟に前に踏み出す暦。

「青春駆君が好きだぁぁぁあ!!!!」

一歩及ばず。

そして、駆はじっと仁科の方を見る。

その実、見ていたのは暦の方ではないかと思うほどに視線は交わっていた。

「私と付き合ってください!!」

駆はゆっくりと立ち上がると頭を掻きながら照れる様にして右手を差し出した。

「ありがとうございます……じゃあ、今日からよろしくお願いします」

脳が震えた。




青春駆アオハル・カケル

夢は美容師の体育会系。

それをもじって体育会計とイジられている。

実家が床屋を営んでいるが、経営不振になり伸び悩む経営に口出しをしてなんとか黒字にした事から数学や経済には少しうるさい。

運動の出来る駆と彼方はよく体育で比べられる事がありライバル視しており、そんな駆のことを生徒会会計にスカウトした。

とはいえ、二人は学年が異なり、駆は一年生であるためしっかりと敬語を使う男子である。

数学が得意ということもあり、計算高いかと思えば根性論も唱える変わり者。

「考えてもみてください。負ける確率はほぼ無いです」

「うるさいですね!!気合ですよ気合!!」


蛙化現象をするようになったのは金銭的余裕の無さ。

誰かを幸せに出来るほどの余裕が無く、日々バイトをしたり店の手伝いをしたりしている。

金が無ければ恋心を養う事も出来ないみたいだ。

子供の頃に同級生がカードゲームやゲーム機の話をしてるのを端から見てたり小遣いというものが無かったため。



実家の床屋の宣伝も込めて地毛は黒なのだが黒に青のアシメントリーを入れた長髪にしている。

目尻に泣きぼくろとくまがあり、疲れが見える。

若干暗めの声をしているがそれは日々の疲れから来るもので、本当の声はもっと高い。

肌は日焼けしており茶色で筋肉があまり無いものの、185はある長身でスタイルが良い。


中学の文化祭で史上暦に告白した過去があるが、酷い形で振られてそれ以来彼女には強い怒りを覚えている


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