第三話【蛙の過去】
さて、そろそろ彼らの本題である蛙化現象について触れていく事になります。
まだまだキャラクターは出揃ってはいませんが、追々登場人物は増えていきます。
【宇宙の蛙】
この宇宙と比較してみても地球というのはちっぽけな星の1つで、そこに暮らす人間という動物のどうでもいいちっぽけな悩みの1つに過ぎない。
それは、遥彼方の悩みの1つである。
好きな人が居ても好きな人に告白するどころか、それを躊躇う様になってしまった切っ掛けのある日の事だ。
それはアメリカのハイスクール在学中に起きた。
起きたというよりも一方的に知らされた。
別れを告げるその一文。
『日本で他に好きな人が出来たから別れるね』
海外に居た自分の声は直接届ける事が出来ない。
電話で伝えようともした。
しかし、相手は反応を何も返さない。
心臓の音が生々しく鼓膜を鳴らす。
こんなにも焦っている自分が嘘の様だった。
彼女は夢に共感してくれて、海外留学に億劫になっていた所を背中を押して応援してくれたそんな人だった。
今でもそのことを思い出したら浮かぶのは優しい笑顔ばかりで、いつからそんなに女々しい男になったのかと自身を笑う。
そんな過去があり、彼方は二度と恋をしたくはなくなってしまった。
彼方は宇宙飛行士になりたい。
宇宙に出ている間、地球からは当然離れる事になる。
そんな彼方はまた側に居られない事で気を揉みたくないのだ。
ストイックな思考かといえばそんなことはない。
ただの強がりだ。
本当はその次の恋愛もその次の恋愛もアメリカでやってはみたものの、付き合って数日で好きだった感情が無くなってしまうのだ。
そして、そんな話を面白くもない重い方の話を黙って聞いてくれたのがステイ先の同じハイスクールに通うキャシィだった。
日本のサブカルチャーに興味があり、日本語はそれで学んだと言う。
流暢な日本語にたまに混ざるニチャアやワラワラという単語。
彼女は日本を履き違えている。
「彼方の好感度がイベントCG値まで上がったってこと?」
「お前は日本どころか俺の事すら履き違えている」
悩みを打ち明ける相手は慎重に選んだつもりだ。
ステイ先は美容室を営んでおり、黒かった髪がそこでキャシィによって金に変えられる事になる。
「強くなりなって意味を込めて金にしとくね」
「どういうことだ?」
どうにもキャシィの言ってることがたまに分からない。
日本語であることは間違いないのだが……。
「だって、金は覚醒する色だよ?」
「あー、確かにそれはある……ザッツライト」
「それに、金のほうがこっちに馴染めるよ」
【蛙のギター】
中学時代の事である。
その当時の事を考えれば若気の至りも最中であり、少し厨二病でも許されて然るべきだろう。
青春駆もその厨二病の一人であり、包帯や眼帯に憧れたり、鎖や指輪に興味を示したものである。
そんな厨二病真っ最中であった彼は正しく恋をしていた。
相手は1つ年上の史上暦。
昔は小さくて可愛らしい子だと思い庇護欲に駆られた。
しかし、彼女は意外とガードが固く、それだけでなく話すきっかけすらも得られなかった。
好きという気持ちではないにしろ、彼女の事を想い続けていたこともあり、目で追いかけるようになった。
中学二年となったある日、史上暦に告白した人が居るという噂が立った。
駆は居ても立っても居られない自分に内心焦りだと気が付きながらもどうしたら良いのか考えた結果、自分が考え得る一番格好良い方法で告白することにした。
アカシック学園の中等部学園祭にて、ギターを猛特訓しソロライブを決行。
ラブソングと一緒に好きな人に告白というベタと言えばベタな事をした結果として……史上暦はなんの返事もすることなく泣きながら逃走してしまった。
後になって分かったことだったが、史上暦は告白された相手と付き合っていたのだそうだ。
幸せの絶頂期と言っても過言ではないそんな時にこんな公開告白をされれば気持ち悪かったのかもしれない。
それから駆は学校やクラスにおいて無視される事が多くなった。
無視というイジメというやつであるが、小耳に挟む主犯の名前が史上暦であるということが駆の首を絞めた。
好きな人が自分のイジメに加担している。
この結果には自分に責任があるとはいえ、あんまりだと思う。
そして、生徒会で久しぶりに顔を合わせてみて二つの感情がぶつかり合う。
未だ忘れられない恋とイジメによる心の傷である。
好きだけど嫌い。
それが両立しているからこそ、駆の恋はまだ終わっていないのだ。
史上暦
夢は小説家の歴女。
戦国武将や三国志が好き。
大手投稿サイトに戦国武将転生者や三国志転生者を出しているが伸びない事が悩み。
自分の夢を叶えるためにとにかくまずは知名度を獲得しようと生徒会長の遥彼方に自分の小説を売り込みに行った結果、生徒会書記に抜擢された。
一年間海外(アメリカ合衆国のワシントンDC)への交換留学を経験した遥彼方とは当時初対面であり、現在は二年生。
歴女であるためか、たまに偉人の名前が出たり、名言が混ざる。
「それはやはり三十六計逃げるに如かず」
「その手のひら返しはまるで曹操、イラッとしたけど嫌いじゃない」
蛙化現象をするようになったのは趣味が周りと合わない事によるもの。
共通の趣味が無くて長続きせず、話をしても話が合わない事から恋愛が苦手になった。
地毛は黒なのだが、生徒会メンバー全員が何かしら髪に色を入れているので、肩までかかる髪をライトブラウンに染めた。
幼少期から変わらぬ声と胸元にそびえる双丘をコンプレックスにしており、背も142と低い。
透き通る様な白い肌で背は低いもののグラビア体型。