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蛙の恋煩い  作者: E’zSHOW
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蛙の夢

思いついたのは昨年の半ばぐらいだったと思います。

好きだった人が突然好きではなくなる。

それも、告白して了承を貰ったらお別れという条件を持ったラブコメを書いてみたいなと思いました。

実際蛙化現象は存在します。

不快だと思われた場合閉じられる事をオススメします。

蛙化現象。

多くの場合女性が当てはまるその症状は恋愛において致命的だ。

俺、遙彼方はるかかなたもその致命的な蛙化現象の一人である。

男は狩猟本能から狩った獲物に餌をやらないタイプで当て嵌まらないなんて言われたりするが、それは果たして俺のように嫌悪感を抱いたりするのだろうか。

恋愛するのは好きだ。

恋が実るまではその人が好きだ。

だけど、実った後にはその人を好きでいられなくなる。

俺のこの恋は実らせてはいけない。


私、目花先めとはなさきも多くの場合女性が当てはまる蛙化現象の該当者だ。

こうして好きな人を前にして、いざ告白となると罪悪感と気持ち悪さが先んじてしまうようになってしまった。

好きな人を置いて逃げては自分を責めてきた。

今日も好きな人を前にして気持ちを伝えたいという本意と裏腹に、また嫌いになってしまう事への不安がある。


蛙同士が恋をした。

実ってはいけない恋の物語。

だから、俺達は普通の恋愛には当て嵌まらない。

好意があるのに好意を伝えられない。

これは、好きだと伝えたら終わる蛙同士の恋煩いである。


【輝く一番星!遥彼方!!】

ここアカシック学園は少し変わり者の通う小中高一貫校である。

途中からの編入も可能であり、校内の人口は市町村並であることからマンモス校としても知られている。

そんなマンモス校だからこそ、その組織を運用し統率する圧倒的なまでのカリスマが必要だった。

ゆえの、選ばれたのは必然だったのだろう。

容姿端麗、成績優秀、品行方正、おまけに帰国子女である。

そんな遥彼方はるかかなたが生徒会長に選ばれたのは必然だった。

「なんだこのポスターは……」

輝く一番星!遥彼方!!

入学当初の写真が切り抜かれた生徒会出馬のポスターが貼られていた。

オマケに落書きだらけである。

優秀な成績を収めるばかりか、入学して一年間を丸々交換留学生として海外に行っていた彼は不在の間に面倒な事は休んでいる奴に押し付ければ良いというそんな安易な決め方で生徒会長になってしまっていた。

「まあ、俺のカリスマならしょうがないまであるな」

留学のホームステイ先が美容室であり、向こうに馴染める様にと金髪に染めてくれた事もあり、帰ってからもそのまま過ごしているのだ。

しかし、後ろ指を指され、ましてや怖がられる始末である。

「この頭はステイ先のキャシィがやってくれたものだ。断じて不良でも非行でもない!」

そう主張して側にいた女生徒に詰め寄る。

壁に手を叩きつけ勢い任せに言ったものの、相手は怯えてしまっている。

「すまない……まさか勝手に生徒会長にされているとは思わなくて……取り乱したソーリー」

一年間の海外留学が影響し、日本語に混ざる現地の言葉。

勢いに飲まれたものの、そのギャップにその女生徒は吹き出し笑い始めた。

「あはははは、なんですそれ!」

彼方にとって押し付けられたことは笑い事では済まないことだ。

「人の不幸を笑うとは、ホワーイ?何がそんなに可笑しいんだ?」

「変なポスターだなって思ったらおかしな人も居るものなんですね」

どうも笑いを堪えるのに必死で話のペースが緩慢である。

「笑うことはこの際許すから話を続けてくれないかお嬢さん」

「ふふふ、えっと、そうですね可笑しいのはポスターもなんですけど、たまに混ざる英単語がエセ外国人みたいで」

そう、笑われる理由はそれだった。

「くっ、しょうがないじゃないか!一年もアメリカのワシントンに行ってたんだぞ!?」

そう、遥彼方は交換留学生としてワシントンへの留学をしていた。

留学先は留学生が選ぶことが出来るのだが、彼方がワシントンをあえて選んだのには理由がある。

彼方の将来の夢は宇宙飛行士になることだからだ。

ワシントンにはNASAがある。

それを目的にしていたのだ。

「NASAの職場体験で宇宙食を食べた俺は宇宙飛行士への憧れが一層増した。やはり俺は宇宙飛行士になるべきなんだ」

頭の中で回想に入ると、気が付けば決意表明をしていた。

「ふふふ、でしたら生徒会長というのは好都合だったのではないですか?」

彼女の言うことの意味が分からない。

「真意を聞こう」

「生徒会長になれた事は不幸ではなく幸いな事だったんですよ。部活動は志望すればなれますけど、生徒会長となればそうもいきません」

選挙活動が有るのだから当然だろう。

おいそれと誰でもなれてしまっては統率が乱れるというものだ。

とはいえ、不在の間に決められていたのは腹の立つ案件だ。

「続けたまえ」

「他のだれもが得られない体験や経験を出来るし、それが貴方を成長させるだけでなく内申点に大きく関わるでしょう?」

内申点。

その言葉に彼方は何も考えるまでもなくガッツポーズをしていた。

「おっと失敬」

「失敬なのはいつまでも壁に手を押し当てて圧迫感を与えられていることだと思うのですけど」

そう言われてふと我に帰る。

「どうも冷静さを欠いていたらしい。すまない女生徒」

「女生徒ではなく、目花先めとはなさきです。それも失敬というやつですよ」

名札まで付いているのにも関わらずと胸元の名札を強調するように持つ先。

「少し、先のおかげで前向きに捉えられそうだ」

「そうですか、頑張ってくださいね遥生徒会長」

遥彼方は変わり者である。

そして、目花先も同じくして変わり者である。

この二人の接触が問題にならなかった時点で、淡々と事が進んだ時点で察せられることかもしれない。

普通、悲鳴をあげられて然るべき場面でそうならなかった理由。

二人はそれぞれ別の目的を持ってそこから別れる。


「あーもう、遥くんったら唐突に壁ドンなんてドキドキしちゃうじゃないもう!」

誰も居なくなったのを確認し、急に取り乱したのは目花先だった。

そう、先は遥彼方へ淡い恋心を抱いているのだ。

これが他の異性だったというならば問題視されていた事だろう。

彼方のする事ならなんでもとはいかないが、受け入れてしまえるぐらいには寛容である。

「夢は宇宙飛行士っていうのも可愛いし、何をしたらなれるのかわからないからとにかく勉強や運動に真面目に取り組む姿勢は格好いいし、一年間海外(アメリカ合衆国のワシントンDC)への交換留学をしてたのもストイックで魅力的、たまに出る英語が面白くてもう本当好き!」

学校に戻ってきたばかりの彼方は変わり果てていたものの、「ザッツライト」「ソレ、リカイ、リカイ」という風にカタコトや混ざる現地の言葉に何度吹き出したことか。

アメリカに居た時にホームステイ先が美容室だったらしく、地毛は黒なのだが留学先には金髪の生徒が多く黒髪が浮いているのを気にして、馴染むために金髪のツーブロックにしてもらったそうだ。

当時、それが嬉しかったからそこからずっと金髪のツーブロックを貫いている彼方。

目元は鋭く、肌は健康的な小麦色で、運動も人並み以上に出来ることから細マッチョのモテ筋体型。

声が低く、聞き取りにくい事を気にしている。

そんな彼を目花先は好きになっていた。

「輝く一番星!遥彼方!!ふふふ」

そうやって言っていると、後ろから声がした。

「おい、そうやって影で俺のことを笑っていたのか?」

振り返るとそこには彼方が居た。

「え、あれ、なんでここに?」

「先程、壁に追いやったときだろう。君のハンカチが廊下に落ちていたから届けに来たんだ」

赤いチェック柄のハンカチだ。

「あ、すみませんありがとうございます」

「まあいい、帰国したばかりで俺も礼に欠けていた。失礼極まりないと自覚した。笑われたことは不問とする」

手を振り離れていく彼方を手に持ったハンカチを握りしめていつまでも見ていた。


【控え寄ろうこのお方をどなたと心得る!】

「そこでスケさんとカクさんが黄門様の間に立って紋所を持って立つのよ!」

好きなものは時代劇。

という訳ではないです。

彼女は時代劇含めた歴史好きな生徒として有名であり、生徒会室へ自分を売り込みに来ていたのである。

「まさか、生徒会長が水戸黄門について熱く語れる人だったなんて!」

「いや、まあ、有名な作品だし何度か見たことがある程度だが」

彼女が売り込みに来たのは自分の書いた小説を学校に置かないかというものだった。

読んでいく内に水戸黄門に展開が似ていったためにそれを指摘したところ、彼女は嬉しそうに語りだしたという訳だ。

史上暦しじょう・こよみは小説家志望の同級生である。

好きな戦国武将や三国志をテーマにした異世界転生系のラノベを書いているらしいのだが、それが全く誰にも読まれないのだそうだ。

「まあ、パクリではなぁ」

「パクリじゃなくて、オマージュと呼んでくれ給え!」

「同じ様なもんだろう」

先日授業に出てきた本能寺の変が水戸黄門の世界に入ってきている。

「なんでもかんでも一緒くたにしすぎじゃないか?」

「ロマンだろう!?三国志でも多くの武将が出てきたじゃないか!」

「だとしても登場人物が多すぎてゴチャゴチャしているのは分かりにくいだろう?」

彼方なりのダメ出しをし、ながらで生徒会の仕事をしていたのだが、どうにも作業が多く終わらない。

「一人でやる量なのかこれは」

山となった書類に思わず目頭を指で摘む。

その姿たるやブラック企業に働く社畜の如く様になっている。

「一人でやる量ではないんじゃない?」

「というと?」

首を傾げる彼方に暦は手を広げた。

指折り彼女は言う。

「生徒会長だけじゃなくて、副会長に、会計に、書記に、庶務」

そこで彼方は手を叩く。

「そうか、それで終わらないのか」

本来分担すればそんなに時間もかからないのだが、生徒会には現在彼方しか在籍していない。

「……ねえ、遥くん、良かったら書記やってあげようか?」

「なぜ、書記なんだ?」

他にもある中で書記だけをチョイスする理由が不明瞭だった。

「将来小説家になりたいから、書記やってたっていうのはプラスになるんじゃないかなって……安直だったかな?」

彼方は首を振り暦の手を握る。

「いいや!夢!良いじゃないか!必ずプラスになるだろう!!」

夢のためにがんばるというのなら、彼方もそうであり共感出来るだけでなく応援したいとさえ思う。

「共に頑張ろうではないか暦!」

「頑張ろうね遥くん!」

肩を組み、膨大な書類を前に高らかに笑い合う。

「遥くん……やってもいいけど、他の役職のスカウトも急務だよ?」

「うむ、分かっている」


【景気の悪い蛙】

それは、日本に帰ってきてから髪を整えるために幼い頃から行きつけの美容室に行ったときの話だ。

「見てくれ駆」

「なんだよ父さん」

一学年下の青春駆アオハルカケルとその父である青春勝アオハルマサルは地元では有名な『斬々きりきりまい』という看板を背負った美容室の家族だ。

なぜ、そんな有名になったかと言えば、ほぼ潰れかけていた赤字経営から立ち直り黒字経営となるだけでなく、SNSを早期活用した経済戦略にも出たことでインフルエンサーとしての側面を持っているのだ。

その赤字経営を立て直したのは父である勝……ではなく、その当時小学生であった駆だった。

幼少期より運動に力を注いだ事もあり、数有る受賞の経歴を持ち、半ばタレントのような知名度を持っていた。

しかし、彼自身自分の知名度を持て余していたし、目立つことに利点を感じたことは無かったのだが、実家の美容室が祖父の経営から父親の経営に移った際に転機が訪れる。

それまで食卓に並んだ肉や魚が消え、白米が玄米となり、終いには味噌汁から具が消えた。

経営が上手く行っていないのだと察した駆は経営に口を挟む様になり、美容室の欠点を補う事に成功した。

この美容室最大の弱点とは父である勝が馬鹿であるということである。

「これ、風水的に玄関に置いとくと良いらしい」

「……返品出来るんだろうな」

勝が玄関に飾る青い水瓶。

そこには亀の模様が描かれていた。

「ちなみに幾らで買ってきたんだよ」

「十万だ」

「お前今月の小遣い無しだからな」

「殺生な!頼む駆!お父さん今月は町内会の飲み会が!!」

このように青春家の財布は駆が握ることで赤字にならないようになっている。

「そういえば遥先輩生徒会長就任おめでとうございます」

嘆き悲しむ勝を他所に駆が話し掛けてきた。

彼方は待合室で雑誌を読んでいた。

読んでいたが、家族のいざこざを眺めて帰ってきた事を実感していた所だった。

「うむ、俺の知らぬ間に出馬表明されていたらしくてな」

「それ、やった犯人僕知ってますよ」

それは行幸だと耳を傾ける。

「三年の袋野鼠ふくろのねずみ先輩です」

確か彼は昨年度の生徒会長だったはずである。

「少し協力してもらいたい」

「内容によりますよ」

「生徒会室に鼠元会長を呼び出したいのだが」

駆は数瞬と経たずに答えた。

「であれば、女子を使いましょう。生徒会の女子が丁度良いです」

「となれば……現在所属している史上書記か目花庶務に任せるべきか」

「なんですって?」

駆が食い気味に迫る。

少し圧迫感があるが、その実身長180もある駆に上から覆いかぶさられたら普通は恐怖を感じるのも仕方ないだろう。

「ど、どうした?」

「史上先輩が生徒会に所属してるんですか?」

「あ、ああ……数日前にな」

「生徒会に今所属してるのは?」

「目花庶務と史上書記の二人だ」

少しどころか眉間にシワを寄せてまるで怒りを滲ませている様子である。

「僕も生徒会に入れませんか?」

「ま、まあ……駆になら会計を任せられそうだが……男女比率も悪かったし良かったら入るか?」

「比率だとか合コンみたいなノリじゃあるまいし」

「相応の悩みもあるのだぞ?」


【蛙の宿敵】

宿敵ライバルそれは時として己を高め合う存在の事を言う。

故に宿敵ともと呼ぶこともあり、争う仲でも比肩される事での宿敵しゅくてきで有るならば、正しく敵ではない。

そんな二人が校庭に注目をされていた。

一年B組青春駆と二年C組遥彼方である。

彼ら二人は幼なじみというやつである。

幼い頃より運動神経という一点において他の追随を許さぬ事から比べられてきた正真正銘のライバル。

世間はそう認知していた。

無論、世間が勝手にそう思っているだけで、学年も違えば幼なじみであれば争う事も無い。

故にそのライバル関係というのは、周囲のレッテル。

正しくそうあってほしいという周囲の勝手な願望である。

では、彼らが今回運動神経の何を持ってして比肩されているのかについて話そう。

それは、体育テストである。

学生を経験した者は一度は必ずやるであろう20メートルシャトルランやハンドボール投げ、前屈や直立飛びといったものだ。

そして、今まさに直立飛びの真っ最中の駆は持ち前の長身から繰り出される高さの武器で1メートル近く飛び上がった。

手に付けたロジンが対空する中で伸ばされた腕に叩きつけられ、目盛りを白く汚す。

その隣で二年生がテストを行われていたのだが、丁度駆の番だった。

駆は気合十分といった雰囲気なのだが、その実駆を見ている生徒の中の一人に良いところを見せてやろうと息巻いてのことだ。

無論、生徒会長として皆に示しを付けなければならないという自負はあるものの、一人の男子であり蛙化現象の真っ只中とはいえ片思いしている自覚があるのだから、青春ぽいことをしようとするのは仕方のない事だ。

彼方の視線が一点を捉える。

「俺が1番だ」

駆よりも僅かに下。

そこに指を当てた。

体躯から来るパワーの違いか、二年生一同は歓声よりも落胆の声を上げた。

そして、勝ち誇る一年生一同。

そう、彼ら二人は学年のプライドが肩にのしかかっていたのだ。

本人の預かり知らない所である。

遥彼方はるか・かなた

夢は宇宙飛行士のお調子者。

何をしたらなれるのかわからないからとにかく勉強や運動に真面目に取り組む内に生徒会長に抜擢された。

一年間海外(アメリカ合衆国のワシントンDC)への交換留学を経験しており、現在は二年生。

それもあってか英語が得意。

帰国子女であるためか、たまにカタコトになったり英語が混ざるルー大柴みたいになる。

「ザッツライト」

「ソレ、リカイ、リカイ」


蛙化現象をするようになったのは交換留学で彼女と疎遠になり、別れる事になってから。

留学先で新たな恋人を作ってもまた直ぐに日本に帰ることになったり、何かしら後ろ向きな理由が浮かぶようになり、自分は恋をする権利が無いのだと思っている。


アメリカに居た時にホームステイ先が美容室だったため地毛は黒なのだが、留学先には金髪の生徒が多く黒髪が浮いているのを気にして、馴染むために金髪のツーブロックにしてもらった。

それが嬉しかったから、そこからずっと金髪のツーブロックを貫いている。

目元は鋭く、肌は健康的な小麦色で、運動も人並み以上に出来ることから細マッチョのモテ筋体型。

声が低く、聞き取りにくい事を気にしている。


「輝く一番星!遥彼方!!」



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