不良品
掲載日:2021/08/14
私は工場に勤めていた。
ICチップなどの目視検査が主な仕事で、今日はカメラモジュールが工程に流れていた。
「君、これも検査で通して」
上司がバキバキにヒビのいったレンズのものを持ってきて言った。
「これ、不良品じゃないんですか?」
「こういうのが今からいっぱい流れてくるから、全部合格にして通して」
みんな渋々言われたようにした。
休憩所で歳かさの男の人が「工場ではよくあることさ。生産量の辻褄合わせ」と言っていた。
若い人ばかりの職場で、みんな高給取りだった。
しかしそれも長く続かない。
会社は一斉に人員削減を謳い、私達はばらばらになった。
雇用対策で日常茶飯事だったらしい。
ある時、若い人が会社を相手取り裁判を起こし、勝訴した。
私は新聞でそれを知って、まだ、救われる思いがした。
「この携帯、調子悪いなあ。買い替えたばっかなのに」
「不良品じゃないの?」
「えー、検査とかちゃんとやってあるんじゃないの?」
「いいから、取り替えてもらっておいでよ」
彼はぶーぶー言いながらショップに行った。
「今度は良いよ」
「良かった」
ぬるま湯に浸かってなんにも考えずなんでも受け入れていると、とんだ目に合うかもしれない。




