エイプリルフールSSその2
時間軸は42女心以降
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「サクちゃん私、赤ちゃんが出来ました」
突然の旭の告白にサクヤは耳を疑った。身に覚えが無かったし、自分の知る限り彼女は正しい子供を作る方法を知らない筈だ。そうなると答えは1つ、狂言であるという事だ。
嘘だと指摘するのも無粋だと判断したサクヤは許嫁の可愛い戯れに付き合う事にした。
「めでたいな!遂に我に直属の闇の眷属が出来るという訳だな!出産はいつ頃だ?名前は何にしようか?」
「えーと、出産は来年で…名前はサクちゃんに名付けて貰おうかな…?」
食い付くサクヤに旭は戸惑いながらも事前に考えておいた設定を口にした。
「相分かった。来年までに男と女両方考えておこう。さあ、体を冷やすと良くないのだろう?安静にしなくては」
旭の手を引きサクヤはソファへと誘導させて座らせると、神官に用意して貰った膝掛けを乗せた。
「困ってない?突然の事だし、順序も違うし…」
「問題無い。喜ばしい事はどんな順番でも喜ばしい事だ」
しゃがんで両手を取って笑うサクヤに騙している事への罪悪感に旭は次第に顔を曇らせていった。
「ごめんなさいサクちゃん…嘘なの」
ネタバレするなら事態が大きくなる前がいいと判断した旭は消え入りそうな声で謝罪した。
「そうであったか」
「本当にごめんなさい…」
「気にしなくて良い、楽しみが延びただけだ」
「サクちゃん…」
優しい許嫁の言葉に旭は次第に目が潤んでいく。この人を好きになって良かったと心から思いながら触れている手を強く握った。
「それに最初から冗談だと気付いていた」
「えっ、なんで分かったの⁉︎」
「フッ、闇の力を極めし者の第六感というものが発揮されたのさ。そんな事より本日は晴天だ。散歩でもどうかな?」
騙されたフリをされた事よりも、何故嘘を見抜いたのか旭は理解が出来ず思わず問い掛けたが、誤魔化されてしまった。これ以上追及するより、2人で楽しい時間を過ごす方を選んだ旭はコクリと頷き立ち上がると、早速散歩へとしゃれ込む事にした。