良い夫婦の日SS
「良い夫婦というのはどんな夫婦を指すのだろうか?」
「どうしたのサクちゃん、藪から棒に」
「いやな、我々は将来どんな夫婦を目指せばいいのだろうかと思ってな」
「サクちゃん…好き!」
自分との将来をちゃんと考えてくれているサクヤに旭は感激し抱き着いて頬にキスをした。言動はいつも仰々しいが心根は真面目なのだ。
良い夫婦とはどんな夫婦なのか、旭はサクヤとおやつにシュークリームと紅茶を頂きながら議論する事にした。
「我が思う良い夫婦とは互いに助け合い高め合える夫婦だと思っている」
「なんか堅苦しいしイメージ出来ないなあ…身近にそんな夫婦いる?」
「想像して真っ先に思いついたのは水の神子と炎の神子夫妻だ」
「ミナト叔父さんと暦ちゃんかあ、確かにそんな感じするかも。それぞれお仕事を頑張っているもんね。でもあんまラブラブな雰囲気じゃないんだよねー…2人一緒にいる所あまり見ないし」
旭としてはサクヤとラブラブでイチャイチャするのは譲れなかった。噂をしていると風の神子の間に暦が頼んでいた楽譜を持って来たので、良い夫婦について質問を投げ掛けた。
「暦ちゃんはミナト叔父さんと良い夫婦だと思う?」
「うーん、良い夫婦…とは言えないかもしれないわ。仲は良いと思うけど生活リズムが違うから一緒に寝てないし、食事も1日に1回一緒に出来たらいい方ね。お互い仕事と研究に夢中でイチャイチャなんて最後にしたのはいつかしら…これじゃ恋愛小説家失格ね」
フッ、と自嘲して暦は紅茶を啜る。聞いてはいけない事を聞いてしまった気がして旭はシュークリームを食べて無言を誤魔化す。
「だとしても水の神子と炎の神子夫妻は良い夫婦だ。生活リズムが違っても婚姻関係を続けているという事はお互いを尊重し合っているからで、それは愛情表現の1つだと我は思う」
「サクヤ…ありがとう、なんか元気出たわ」
真っ直ぐなサクヤの言葉に暦はふわりと穏やかな笑みを浮かべた。大好きな人との関係を誰かに認められるのは嬉しいことだと旭は強く共感したし、許嫁の優しさに惚れ直した。
「たまにはミナトさんとイチャイチャしてみようかしら?早速行ってくるわ」
すっかり機嫌が良くなった暦は足取り軽く風の神子の間から出て行った。
「私達もイチャイチャしよっか?」
触発された旭はサクヤににじり寄り腕を組んでじっとりと熱い視線を向けた。
「そっ…それはだな…夫婦になってからにしよう」
「えぇー!」
顔を赤くさせてタジタジになっているサクヤに旭は不満に声を上げたが、照れている顔が可愛かったので今日はこれくらいにしてやろうと妥協してから、早く夫婦になりたいと思いを馳せるのだった。