海の日SS
美少女(以下略)海の日SS
時間軸は本編完結後以降かな。
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クオンに海を見せてあげたい。
そんな夫の提案から命は現在港町の海水浴場にいた。メンバーは命とトキワとクオンは勿論、姉家族も一緒だった。
初めての海に大はしゃぎの様子のクオンを命はパラソルの下で破顔して眺めていた。
「ちーちゃんも水着持ってくれば良かったのに」
隣で同じく荷物番をしている姉の言葉に命は首を振った。急な海水浴だったし、最近幸せ太りなのか、お腹周りが気になっていたので、手持ちのビキニを着る勇気が無かったのだ。
一方で姉の祈は日頃自警団で鍛えているからか、以前姉妹お揃いで購入した花柄のビキニ姿で、引き締まった体を惜しげもなく見せつけていた。
「でもその白いワンピース似合ってるよ!トキワちゃんがプレゼントしてくれたんだっけ?」
「うん、こんな清楚な服初めて着るから恥ずかしいけど…まあ、喜んでくれたからいいかな」
先日神殿に商人がやって来た時に、目に着いて絶対命に着て欲しいと衝動買いしたそうだ。必死にせがまれて試着したら、天から舞い降りた女神だとしばらく拝まれたのを思い出した命は苦笑いをした。
「そういえば、昔みーちゃん達と一緒に来た時はナンパされちゃって大変だったな…」
「あー、みーちゃんが妊婦さんのフリして追い払ったんだっけ?あれは傑作だよね!」
「私は気が気じゃ無かったよ…まあ、今回は流石に子持ちの人妻にナンパする人はいないだろうけど」
結婚指輪も嵌めて虫除け対策は万全である。祈が飲み物を買って来てくれるというので、命はその間、のんびり読書でもしようと、籠バックから読みかけの小説を取り出した。
「泳がないの?」
突然隣に見知らぬ水鏡族の男が座って話しかけてきたので、命は声にならない悲鳴を上げた。
「み、水着を持って来てないもので」
それに泳げないと言えば弱味を見せる気がして、命は無愛想に本に視線を落とした。
「あっちで売ってるよ?買ってあげようか?」
「いいえ結構です」
「じゃあ一緒にアイスクリームでも食べない?ご馳走するよ!」
やはりナンパのようだ。命は本を閉じて伝家の宝刀である結婚指輪を男に見せつけた。
「お断りします。私、今日は夫と子供と来ているんです」
これで引き下がるだろうと命は勝ち気に微笑んだが、男は気にも留める様子がなかった。
「いいじゃん、たまには独身に戻って遊ぼうよ」
ヘラヘラと指輪を隠すように手を掴んできた男に命が嫌悪感に顔を歪ませ所で祈が帰って来たので、縋るように視線を向けたら、背後に見慣れない男を2人従えていた。
「あらちーちゃん、そちらはどなた?」
「知らない!突然隣に座って来て困ってるの!」
男の手を振り払い、命は助けを求める様に姉の腕に抱きつけば、気不味そうに男は去って行った。
「…ところでこの人達は?」
「なんかジュース奢ってもらったから、お礼に一緒に遊ぶ事にしたの」
まさか姉までナンパされて更にはそのまま連れて来ると思わず、命は夏の暑さのせいではない目眩を覚えた。
「2人とも、本当にジュースありがとうね!さて、何して遊ぶ?ビーチバレーとか?」
祈の提案に男2人はコクコクと嬉しそうに頷き、早速ボールを海の家に借りに行った。
「お姉ちゃん!一体どうするのよ?私あの人達と遊ばないからね!」
既婚者なのに夫以外の男と遊ぶだなんてハレンチだと非難する妹に祈は手を振り大丈夫だと笑う。
「私も遊ばないから」
そう言って祈が波打ち際で遊んでいたレイト達を呼びに行った事により、命は姉の作戦を瞬時に理解して彼女の強かさに口角を引き攣らせるのだった。