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具体的な表現はありませんが、残酷な場面があります。

恐れていた事が現実となった。

荒々しい息遣いで村長宅に踏み込んで来た旅人が、村長をいきなり斬りつけたのだ。


斬ったのはあの日の旅人だった。

あの日との違いは、旅人が鉄で出来た鎧で武装している事。


村に旅人が訪れたのは、私が村長に報告してから10日が過ぎた頃だった。

その時の旅人はまだ皮の胸当てしか着けておらず、剣を持ったままオドオドと村の様子を伺いながら動いていた様に思える。


しかし村人の無関心に気付いた旅人が少しずつ態度を変化させて行き、今まで訪れた旅人と同じように村の家々を覗いては食材や備品を勝手に盗み始めるのは早かった。

村人は『いつもの事だ』『仕方ない』と黙って、旅人が去るのを待っていた。


しかし旅人は村を去らなかった。


居なくなったかと思えばふらっと村に来て物色して盗みを働く。

その度に旅人の纏う装備が増えて行き、気付けば全身に鎧を纏い武装されていた。


もう旅人というより何処かの傭兵崩れと言うのが合っているかもしれないが、それくらいならまだ良かった。


問題は昼夜の逆転が起きたこと。

特に夜が無くなる日が続いた。


もしかすると旅人が三角州の緑地帯に出現してから村を訪れるまでにも、10日と言わずもっと経過していたかもしれない。

とにかく旅人が現れたあの日から、村の日常が変わってしまった。



夜が消え眠れない日が続いて、段々と昼夜の感覚が麻痺して行く。

村人の中には夜という感覚を失ってしまった者もいた。

「どうせ夜は来ないんだから」

と言い張り日没後も家に入る事なく仕事をしていた隣人は、夜が来た日にゾンビに襲われた。


そしてゾンビになった瞬間に昼が来て、太陽の光に焼かれて死んでしまった。

その場所には腐肉だけが残っていたらしい。


そんな光景を目にし明日は我が身と不安になる村人も増え、旅人に村から離れて貰いたいと考える様になったのは仕方ない流れだと思う。

『旅人がある一定の距離まで離れると昼夜逆転の現象が無くなる』という噂話に掛けてみようと、村長に相談したのはつい先日の事だった。


『近寄るな。話しかけるな』いう掟を破る事になるが、それがアル村を守る為に正しい事だと私を含め村人みんなが思っていた。

そして今日、村に一つの催事場で村長と旅人の話し合いの場を設ける事となった。


話し合う為には旅人を見つけなくてはならない。

旅人の拠点が村の出入り口にある事は分かっている。

出入り口は崖に出来た自然の切れ間が5メートルほど続いてトンネルになっている場所だ。

旅人はそのトンネルの内側を勝手にくり抜いて、ドアを設置し簡易拠点にしているのだ。


数日前から村長自ら拠点に足を運んでいた。

だが、旅人に対して言葉を発しようとすると体が固まり何も言えなくなるという現象が起きたという。

それでも村長は村の為だからと何度も何度も旅人に近付いた。

村長だけでなく村人も、旅人を見掛けると近付いて声を掛けようとしたが、やはり固まってしまう現象が起きた。

私も同じだった。


何度も目の前に現れては固まる村人によって行き先を塞がれる事になった旅人は、その度に不機嫌な表情で村人を迂回して移動していた。

無言で邪魔をされる事に相当なイライラを積もらせていたのだろうと思われる。


悲劇は起きた。


その時、私は村長宅の家畜用の餌を撒く仕事を請け負って隣接する小屋の中にいた。


村長宅と小屋の間には簡単に出入りできるウエスタンドアがあるだけ。

位置的に外に居る私が見えなかったのか、旅人はこちら側に目もくれず村長宅から出て行った。



メェー

コケーケッケ

それからどれだけの時間がだったのだろう。

餌を貰おうと纏わりついて来た家畜の鳴き声にはっとして、私は小屋から外へ飛び出して村中を駆け回った。


勇者は消えた。

村人も消えていた。


村長宅へ戻ってみても、死体さえもなかった。

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