1.殺意
第二話 自動人形館の殺人(全15)
男の目は血走り、涙に溢れていた。
男は、一人用のソファーに深く腰かけた、白いワンピースの美女を抱きしめた。
女の胸には包丁が突き刺さっている。
結婚を控え、幸せの絶頂だった。
なぜ? どうして?
夢だ。これは幻だ。
そう思おうとしても、抱きしめた彼女の感触は、本物に変わりなかった。
誰だ!
誰が、僕の凉乃を殺した!
男はギリリと歯を食いしばる。震える手で、苦痛に歪んだ彼女の瞼を閉じさせると、額に口づけをした。
部屋を出て、階段を駆け下りる。
山奥の洋館。
昨日から雨が続いていた。
男は一階のホール前、広い客室に入った。昨日、暖炉脇の棚、その隅にガンロッカーを見かけたのを覚えていた。同じものを昔、祖父の家で見た事がある。そこに猟銃が入っているはずだ。
鍵が掛かっていたら、壊すまで。そう思ってロッカーのハンドルを引くと、意外にも扉は小さな金属音をたてて開いた。
涼乃……
君の仇は僕がとる。必ず犯人を見つけて、報いを受けさせ、そして、君の後を追う……。
男は、一つだけ入っていた古臭い猟銃を手に取ると、弾薬をポケットに詰め込んだ。
犯人との対決まで、毎日更新します。