1.三密獄門
第三話 鬼島の三密獄門 (全10)
男は車を降りると、冷たく強い海風に身を震わせ、襟元を押さえた。
レンガ造りの邸宅の前に立つ。
島の西端、数百メートルの切り立った断崖の上に建つ建物の向こうは、青く透き通った空と海が果てしなく広がっていた。
玄関前の砂利にはもう一台の軽自動車が停められていた。彼が貸し出した車だ。
レンタカーの返却予定日から三日。
一昨日まで嵐、今日まで土砂崩れで道路が封鎖されていたにしても、電話すらないのはいかがなものか。
島への連絡手段、ヘリコプターや船は運休していた。
まだ島を出ていないはず。そう思って、呼び鈴を押した。
しばらく待っても誰も出ない。
車があるのなら、近くの原生森で遭難でもしていない限り、家にいる。島はそれほど大きくはないが勾配がきつい。徒歩での移動は骨が折れる。
男は大きな声で「沼袋さん!」と呼んで、ドアをノックする。反応がないので、ハンドルに手をかけて動かすが、施錠されている。
玄関脇の窓から中を覗くと、明かりがついている。
いるじゃないか。
男は建物に沿って歩きながら、窓を見ていった。二階建て。一階の窓はすべてはめ殺し。勝手口のドアは施錠されている。
男は北の窓の前で凍り付いた。
窓が左右二つある。右側は、カーテンが引き裂かれ、内側のガラスは血で塗られている。また、割ろうとしたのか、無数の小さなひび割れがあったが、強化ガラスのせいか、外側にまでひびは達していない。
おそるおそる、左側のカーテンの隙間から中を覗く。
「ひいっ!」
男は腰を抜かして後ずさりする。
狭い部屋の中は血の海。
天井、壁、赤黒く染まってない場所はない。スチールラックの一つは内開きのドアの前に倒れ、ドアを完全に封鎖している。
他に出入り口はない。無数の鉄パイプや板や、ペンキ缶やセメント袋、工具などが散乱し、血に塗れていた。
その中、三人が倒れている。頭がない。
三つの切り落とされた首は、顔や髪が血で固められ、抜き身の日本刀と一緒に、胴体と少し離れた場所に無造作に転がっていた。
男は這うようにして、その場から離れ、声にならない声で駐在を呼ぼうとした。




