15.西日
雨は止んでいた。西の空は朱くなりはじめている。
洋館の庭を占拠していた警察、SITの多くは、すでに引き上げていた。
高木夫婦が洋館から出てきた。夫人と手をつないでいた高木は、笑顔で、早乙女に声をかけた。
「刑事さん。お見事な推理でしたな」
「お疲れさまでした」
そう言って、早乙女は高木に近づいた。
「あの、高木さん」
早乙女は彼に尋ねる。
「最後に、お聞きしてもよろしいですか?」
「ええ、何ですかな」
「ここへは、誰と来るおつもりだったんです?」
高木はバツの悪い顔で夫人を見てから、早乙女に小さな声で言った。
「いや、その、キャバクラの女の子を誘ってたんですよ。その子、工学部に通う子でね。それが、突然、うちの奴が付いて来てしまって……、まったく、途中、こっそりキャンセルの電話を入れるのが大変でした」
そう言って高木は笑った。
「だが、これからは、少しは家内を大切にしようかと思いましてな」
夫人は「女は怒らせたら恐いですわよ」と高木に言った。
二人は早乙女に別れを告げると、仲良く、自分たちの車へと歩いて行った。
手錠をした半澤がパトカーに乗り込む。介護ロボットは、ぐるぐる巻きの山田を、別のパトカーに放り込んでいた。
氷室が早乙女に寄り添う。
早乙女は彼に言った。
「工藤さん、蓮見さんを待つと言ってましたが、そのあと、幸せになれるのでしょうか」
「私にも分かりません。ただ、それが工藤様にとっての、けじめ、なのでございましょう」
二人は門を出る。
早乙女は、工藤から返してもらった紙の燃えかすを、チャック袋から出して、草むらに捨てた。
薄暗い林道の先では、剣崎と餅柿が並んで、彼らを待っている。林の中、ちょうどそこだけ西日が差し込み、明るく輝いていた。
第二話 了




