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01 鉄パイプで狼を殺した日のこと

なろうさんでは初投稿となります、気力♪と申します。


ジャンルはVRMMOで良いのか割と悩む作品ですが、その辺は怒られたら変えればいいや!な精神で行かせていただきます。



「...なぁメディ、俺生きてる?」

『はい。マスターのバイタルは危険値ギリギリですが正常です。運が良かったですね』

「...あー、死に損なった」

『否定、生きる意志を放棄することを私は推奨しません』

「あー、すまん。言葉の綾だ」

『よろしい』


『通信が回復し次第救急車は呼びます。今はお休み下さい』

「ありがと、メディ」

『いえ、私の仕事ですから』


新月の夜、路地にて空を見る。

それは酷く現実味はなく。しかし手に残った感触と、()()()()()()()()()()()()()()()()それが確かにあったことなのだと告げている。


「とりあえず、夢オチであることを祈るよ」

『否定、マスターは覚醒状態にありました。故に先ほどまでの戦闘は現実のものです。ネットワーク遮断によりクラウドストレージに映像は保存できませんでしたが、それは確かかと』

「そこは乗ってくれやメディさん」


こんなことになったきっかけは、きっと今日から始めたあるゲーム。


《Echo World》という怪し気なVRMMOにログインしてしまったことにあるのだろう。


⬛︎⬜︎⬛︎


自分こと風見琢磨(かざみたくま)はVRゲーム中毒である。現実ではあまり動かない体のせいで自由に動き回れる仮想世界の中に依存しているタイプの。


自分は義父の計らいで黎明期よりVRマシンのゲームをやらせてもらっていた。具体的には小学校に入る前から。当時のゲームシステムの関係と自分の相性のせいでそんなに名作アクションゲームはやっていないが、VR剣道、VRパルクールなどは友人たちが引くくらいにやり込んだ。いや、どちらのゲームの方も異名の方が有名なのだけれど。


閑話休題


さて、そんな仮想世界での様々なデータから、偉い人たちは魂と呼べるものを発見した。それが一年半くらい前の話。それに対して刺激を与える事でより低コストで仮想現実体験をできるという画期的なハードが発表された。


それが、今手元にある《Soul Linker》というびっくりマシンである。


お値段なんと1万5千円。しかもサイズはそれまでのVRマシンとは比較にならないほど極小。


具体的にはチョーカーくらい。かがくのちからってすげー。しかも持ち運び可能なウェアラブルデバイス。真面目に何この超技術。


しかし、そんなハードはあってもゲームとして成り立っているものは少なかった。なにせ、魂とかいう意味不明なものへのアプローチだ。最初期に発売されたSoul Burstなどリアリティのありすぎる体の感覚に対してグラフィックがお粗末すぎたりしたりした。気持ち的には最初期のCG映画を見ている気分。味があるといえばあるんだけれども。


しかし、発表から一年が経ち、どっかの天才が作ったSoul Linker専用の超簡単作製ツールのおかげでそれなりの製作環境が作られ、まさにVRMMO新時代の始まりだ!という感じだったりする。


尚、そのツールはフリーで配布されたので数多のインディーズゲーがストアに並ぶ事になったり。


そんなこんながあって、大手会社が大作を準備中!な今、自分がそのゲームを見つけたのはそこはかとなくスルメゲーの匂いを感じたからだったり。


それが、《Echo World》。価格は600円買い切り、ジャンルはなんとMMOミステリーアクションだとか。


超容量の軽い公式サイトの情報によると、ワールド全体での謎解き。どうして《Echo World》は同じ時を繰り返し続けるのかを解き明かせ!とのこと。 


大手の作る大作までの繋ぎにはなるだろうなーとの思いと、ミステリーならゲーム音痴の友人を誘えるかも知れないとの思いからちょっと手を出して見たのだ。


それが、この奇妙な世界との俺の出会いだった。


⬛︎⬜︎⬛︎


《王都エコーリル セントリア噴水前》


サーバー分けなどは特になく、サービス開始と同時にログインした自分は同時期にプレイを開始したプレイヤー(と思わしき)皆さんと共にいきなり困惑をしていた。


このゲーム、チュートリアルがないのだ。

メニューウィンドウは思考操作で開けるが、できるのはスクリーンショット、メモ、ログアウトの3つだけ。尖ってんなオイ。ヘルプくらいくれや頼むから。


次に、アバターの問題。なんとびっくりログインしてる人たち全員がマネキンみたいな体とのっぺらぼうな顔。身長はそれぞれだが、それだけだ。声が音にならないので情報共有もできない。どーすんのさコレ?


『推定、何かしらの基本アクションを身につけなければ先に進めないような設計になっているのかと』


メディさんありがとう。古典である某RPGのはなすコマンドを覚えないと先に進めないみたいなのかね?


となると周囲の探索を進める方が良いだろう。見える所にいるNPCは現在城門を守る衛兵さん2人。彼らのの周りではプレイヤーの方々があの手この手で反応を試している。あ、すり抜けるのね体。...ておい待て何で会話もできたないのに千手観音ごっこを始めたよお前ら。ツーカーの仲なのか?


しかしそんな若干遊ばれている衛兵さんは時たま仕事の愚痴をするくらいである。気付かないのね。


さて、こうなると単独行動をするべきだろうか?ここに集まっているのは50人ほど。大した宣伝もないこのゲームなのでこれから増えてもそう多くはないだろう。


つまり、適当に走り回るのが正解なのでは?と思うのだ。


現在いる王城前っぽい噴水広場は、北に王城、遠いが西、東、南にフィールドに繋がる城門が見える。


とすると、謎解きとかは他の人に任せて自分はアクションを楽しみに行こう。やはり自分の根は脳筋なのだ。


そうして、走って10分。体の動き方はものすごく自然だが、しかし鍛え上げられたスプリンターのようなスピードで動くことができた。ヤバイこのゲーム大当たりだ。


というのも、開発ツールがあっても人体を動かす諸々はゲームそれぞれに違うのである。なので自分のような敏感脳な奴はそういった違和感を感じ取ってしまう。それが旧世代のVRゲームの大作をプレイできなかった理由だったりする。


それは Soul Linker になって改善されたが、ここまでの違和感のなさはそうそうない。良いプログラマーがいるのだろう。


そうして、門を守る兵団をすり抜けてフィールドに向かう。そこには、手慣れた感じで狼的なモンスターの侵入を阻む軽装の兵士たちがいた。


危なげないなー。


『そういった訓練を受けているのでしょう』


というわけで、参戦しよう。馬鹿をやったとしても後ろの兵士さんがなんとかしてくれる状況ならば、どうにでもできるはずだ。


まぁ、多分デスペナるだろうけれど。剣とか持ってないし。


だが、人には体という最古の武器がある!


『疑問、蛮族ですか?』


うっさいわメディ。


というわけで参戦である。兵士さんたちをすり抜けて、左翼の端っこに回り込もうとしている狼の群に喧嘩を売る。


多分すり抜けるキック!


しかし、その蹴りは意外なことに狼に衝撃を与えた。

なにこれびっくり。兵士さんたちもびっくり。そして狼達は俺をロックオン。


空手空拳で狼とか無理だろが!という心の声を上げつつも、これまでのゲーム経験を下地にした戦闘スタイルで交戦開始。

敵狼の群れの数は六匹。増援は未知数。

こちら側には狼ハンター戦士さん達が8人ほど。とすればやる事は一つ。


狼はおちょくってトドメは兵士さん達に刺してもらおう。


『最適解だと同意しますが、プライドなどはないのでしょうか?』


犬に食わせたよそんなもん。


『目の前にいるのは狼です』


そういう事じゃなくてね!


などと、ある意味いつも通りの会話で戦闘のスイッチを入れる。

まずやってきたのは狼二匹、自然生物っぽく取り囲んで様子をみたりしないで、首と足を狙って同時に飛びかかってきた。かなり速いが、対応できないわけじゃない。


足を狙ってきた狼を踏みつけ、その反動のままに首狙いの狼を蹴り上げる。VR的なのを感じさせない体の柔らかさにちょっと感動。リアルでもこれくらいできるようになりたいなー。風呂上りの柔軟ちゃんとしよ。


『背後の戦士達に動きあり。二体の狼にトドメを刺したようです』


見えてるよー。ついでに言うなら死体が残るタイプのゲームなのね。剥ぎ取りとかするのかな?まぁなんにせよ目の前の残り4匹をどうにかしてからだろうけれど。


と、構え直した所で狼の動きに変化あり。

どこかからの遠吠えと共に生き残りが集結し始めた。


そして、完全に日が落ちる。

それと同時に空の満月が赤く輝き始め


集まった狼達は、巨大な1匹の黒狼と化した。


自然と頭に浮かぶのは、その狼の名前。


《群狼シリウス》


存在感の集まりのような奇妙な大狼が、雄々しくそこにあった。


しょっぱなからボス戦に関われるとは、なんか人柱になった気分だ。今は透明人間なのだけれども。


『透明人間が人柱にならないとは、誰が決めたのですか?』


あ、確かに聞いた事ないや。


などと言いつつ、戦い(殺し合い)の空気に顔を綻ばせるのだった。


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