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プロローグ/嘘吐きと崇拝

彼らの日常賛歌

-プロローグ


エピローグはまだだ。しかし、既に見え始めている。

 いわゆる神の子とやらは嘘吐きに違いない。では、なぜ、今日までその嘘が信じられ続けているのか。なぜ、国の思想となっているのか。簡単だ。嘘を吐いた時期がよかったのだ。周りが馬鹿ばかりなら嘘をたやすく信じてくれるだろう。逆に、今、同じ嘘を吐いたなら、まず白い目で見られて、次に頬をひっぱたかれ、最後は病院へ連れて行かれるだろう。

 もっとも、その嘘が人々の「何かにすがって安心したい」いう心理につけこんだもので、上手い嘘であったというのもまたしかり。その基本があって、疑うという行為をしらない馬鹿さがあって成立したものだろう。

 崇拝とは、不安をかき消してくれる。

 崇拝とは、実に簡単に行えるものだ。

 崇拝とは、力を持つ。

 先ほど、私は確かに、今となって嘘を吐いても誰かの崇拝を得ることはできない。頭を指差され、パーの形にした手を見せ付けられるだけだ。だが、それをどうにかしてしまう方法がある。一つ、マインドコントロールと呼ばれるものだ。具体的な方法なんて知らないが、馬鹿を引っ掛けると、いくらでも金を吸い取る事だってできる。二つ、これはどんなものよりもシンプルだ。教祖として吐く嘘が、嘘でなければいい。

 そうだ。目の前で神のごとき奇跡を見せてやればいい。そして貸し与えてやればいい。力の片鱗を。喜んで、崇拝をくれるだろう。


「とはいえ私は、崇拝が欲しいわけじゃないんだがね」

四方が壁に囲まれた部屋は人が住んでいるようには思えないほど殺風景だった。あるのは、白いだけ、長いだけの机と、それに対応するシンプルな椅子が数個。そこに数人の男女が座って、何か作業をしている。それを一人、脇に立って本を読んでいた男が、ふと独り言をつぶやいたのだ。

「どうされました?」

「ただの独り言だよ。頭を使って、使いすぎると、ときにそれを声にだしてしまうことがある。今のはそれさ」

男の持っている本は何だろうか。聖という文字が見えなくもない。

「いや、しかし、実に面白いね。これは。原書が読んでみたいよ」

右手に持った本をひらひらさせた。扱いが荒くたい。男の言った面白いというのは、笑えるという意味か。男はまた本に目を戻し、いや、また顔をあげた。

「そういえば、君。桜庭というのを知っているか?」

「桜庭?いえ、知りません」

「そうか。最近この町に引っ越してくる家族のようなんだがね」

この町に新しい住人が増えるわけだが。男はたいそう愉快げだ。その声に全員の作業が止まり、男のほうを向いた。もとから静かだった部屋の空気が、さらに静まり返る。部屋に緊張がはりつめるようだ。

「どうなるんだろうね。彼らは異能に目覚めるんだろうか。楽しみだとは思わないかい?」

作業をしていた数人の口元が緩む。賛同の声が聞こえる。だが、この雰囲気は何か異常だ。何か普通ではない。反対するものが誰もいない。全員の声がどこか狂気を帯びているような気がする。ふと、一人が意見を出す。

「私が見ておきましょうか」

「いいや、その必要はない。観察させる人間は既に用意してある。今聞きたかったのは、君たちに興味があるかどうかだ。無かったなら、私は観察をやめるつもりだったのでね」

割と、どうでもいいのかもしれない。ただ、ちょっとした暇つぶし、だ。

 彼らはそれぞれの作業に戻る。机の上の書類だとか、何か研究しているようでもあるし、ただ、脇に立つ男の作業は本を読むことのようだった。


 そう、私が求めるのは崇拝されることではない。新世界だ。この腐りきった世の中は、もう治らない。なら、一度捨てるのだ。そして、新しい世界を再構成する。そのために必要なパーツとして、崇拝だ。いや、崇拝というより、それが持つ力のほうだ。今はまだ他の準備が整っていないが、徐々に手に入れていく。そして、目的に近づいていく。

 嘘吐きは神の子だそうだ。なら、本物である私は神にでもなるのだろうか?

 

プロローグ-完-

 

 というわけで、やっと次回から本編です。0話は本編じゃあなかったのかって?はい。大体本編じゃあない感じです。

 

09/06/22追記

 次回からなんと、文章が加速していきます。いや、加速と言うのはつまり、文章力のレベルが若干上がっていきます。自分で言うのもなんですけども。

 それでもまだまだ未熟者です。未熟です。ですが、それなりの自信をもち、あなたを楽しませられると信じて、この物語を書きます。

 どうぞ、今後とも「彼らの日常賛歌」をよろしくおねがいします。

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