NecroRomans -2
高峰由理は幽霊の噂を聞いた。そしてその日、事故のあった例の場所で、その当事者らしき灰色髪の子とすれ違う。
「そういうこと」
自分でも何を言っているのだろうかと思った。だが、こういうときはとりあえず相手の意表をついておけば何とかなると由理の勘が告げていた。そもそも後で、ちょっとからかってみただけと言えば逃げられる。初対面ではあるが。
「えー?だ、って私透けてないよ」
少し動揺が見られたが、当たり前の反応か。
「透けて無くても幽霊は幽霊なんだよ」
「見たことあるの?」
「あるよ」
嘘である。そもそも由理は幽霊など信じるような人間ではない。ただ少し驚いて、その勢いで話しかけて、そして目が覚めた今でもやけっぱちで話を続けているだけだ。もう既に、由理の行動は少女を困らせるためにいたずらになっていた。もっとも、本当に幽霊だったら、なんてことをばかばかしいと思いながらも少しは頭の隅で考えているのだが。
少女は悩んでいた。突然現れた高校生に、いきなり妙なことを聞かれたと思ったら、幽霊じゃないかと指摘されたのだ。そしてどうにも、その高校生は自信満々に見えた。その高校生からしてみれば、もう適当にしてしまおうと思った挙句の自信満々なのだが、そんなことは少女に知れるはずもない。何より少女は、まだ幼いのだ。徐々に、あるいはこの高校生は本当に気付いているのではないか、という気持ちが高まってきていた。この高校生の自信満々を信じようとしていた。知られてはいけない。家族にも顔を出していない。だが、もう気付かれているとしたら、観念するべきなのか。
「もし、私が幽霊だったらどうする?」
控えめにそう問いかけた。由理は、この一言にとにかく驚いた。ほとんど幽霊だと認めたようなものだ。だが、自分は幽霊だと言われると、余計に馬鹿らしくなってきた。髪が灰色で色白だからといって、それは何の根拠にもならないし、もし事故死した中学生と今目の前にいる少女が同じ姿をしていたって、それは極限まで似ているだけかもしれない。自分から言い出したのは確かだが、止めておいたほうがよかったと今更後悔した。
「どうしようかなぁ」
そんなことを言いつつ、ふと、あることに気付いた。もし、幽霊であるならば、人間には出来ないようなことが出来たりするのではないか。それを確かめれば、幽霊であるということになる。だが、もしそれで幽霊だと確信できれば、それはそれでまずい。由理の今までの常識は七回転んで八回倒れたようにぼろぼろの体になってしまうだろう。それと、本当に、どうしようかなぁ。
「友達になろうかな」
由理は意外な答えを出した。
「友達?」
少女は目を丸くして聞き返した。
「そう、友達。まぁ、生きてても出会いがあれば友達になるけどね。いや、ならせていただくよ」
目を見開いて、驚いた顔で下から由理を見上げる少女に、笑いかけた。髪はあまり丁寧に手入れをされていないが、地はかわいいのが分かる。かわいい女子は由理の好みである。とりあえず幽霊であろうとなかろうと関係ないような気がしてきた。元から、ほとんど興味の無かったことであるし、驚いきが落ち着いてくると本当に冷めてきていた。少女が幽霊であると、由理の常識が死に絶えるが、それもどうでもよくなった。せめて、祟られなければいい。少女が幽霊で無かったなら、結構電波な少女ということになるが、それもやはりどうでもいい。電波じゃなくなるように性格を改良してやろう。そんなことを考えていたのだが、少女はショックを受けたような表情でしばらく凍り付いていた。もしかして、気に入られなかった?
「何々。そんな顔されると傷ついちゃうなぁ」
「あ、と、ごめん」
少女はしゅんと俯く。
「別に気にしなくてもいいよ」
気にされても困る。そういえば、と由理は大切なことを忘れていた。
「そういえば、幽霊さん。名前は?」
「え?」
幽霊少女は純粋に驚いていた。そして、由理も気付いた。幽霊だと分かるならば、名前も分かっているはずではないのか。相手の事を知っていて、それと全く同じ姿をし声をした像がいたから幽霊だと気付いた、と、話の流れではそういうことになっている。いやいや、本当に幽霊であるはずがないから別にどうということはない。
「そう、名前。聞いてなかったからね」
「え、えーと」
やさしく微笑む由理にたいして、少女は何やら考え込んでいたが、少したって由理に負けないほどのやさしい微笑を浮かべた。
「また会ったら教えてあげる」
「え?どういう、」
少女は人差し指を由理の唇に押し当てた。えへへと少女は笑うのだが、少し影があるようなそんなふうに由理には見えた。少女は唇に押し当てた左手を移動させ由理の目を隠すと、するりと由理の後ろへ回り込んだ。暗くなった視界はすぐに明るさを取り戻した。由理はすぐに背中を振り返る。人はまだ少ない。灰色のポニーテールなどすぐに見つかりそうなものだが、見つからなかった。あたりを何度見回してもやはり、いなかった。
「あー」
もしかして、あるいは、信じられないが、少女は本当に幽霊だった。由理が生前の自分を知らないということに気付いた幽霊少女はさっさと姿を消すことにした。そう考えると、つじつまが合っているように思えて、身震いした。結局、彼女は自分の常識を投げ捨てて、何も得ることが出来なかった。とりあえず、かかえた小さな花束を供えておこう。祟られたりしないように。由理は当初の目的だけ果たすと、まだ日は高いところにいるのに、強烈な疲れを感じ、すぐに帰途についた。
最近気付いてしまったことがあります。
前書きは『読者への警告』や『前話までのあらすじ』等を伝える欄です。
原則として小説は記入しないで下さい。
という注意書き。読者への警告や前話までのあらすじにはなっていないんですが、小説を記入してないから大丈夫、かな?
とりあえず、今回は、あらすじっぽいものをいれてみました。
そういえば、空想化学祭のプロットが思いついてきました。
今頃かよ?ええ、今頃です。いや、参加申請する前に、一つプロットを組み立て始めていたんですが、それがどうにもまとまらないので、いったん捨てて、がんばってたんです。
新しいのはお手軽なテーマだから、明日中にでも書き始めよう。うん。
そういえばPCのシーク音が異常な音になってるよ。治しに行かなきゃ、だけど面倒くさいし、うぅ、でもうるさくていらいらするしorz