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君が言うほど -3

第五話

-その三

 次の日。しつこい黒雲がざっざと、大粒の水滴で構成されたカーテンを七城高校にかけていた。数学の時間は、標準クラスと基礎クラスに分かれているため教室の半分ほどは空席だ。その上、席を移動しようが何しようが、授業を聞いていれば、何も言わない教師であるため、クラス内は割と自由だった。授業に集中しているとはいえ、桐得の近くにいようとは思わない。はやいところ、誰か友達のところへ行ってしまおうと思っていたのだが、行く前に来られてしまった。仕方が無いので、黒板に提示された問題を解きながら、由理の相手をしてやることにした。

「これってどうやって解くんだっけ?」

 黒板を見て、ノートに問題文を書き写しながら、由理が困り果てていた。夕季も解いている最中ではあるが、夕季にとっては難しいものではなかった。由理のノートのあまっている白地に即席のグラフを書いてみせる。

「―そうして、定数aがここやここ、ここにある場合を―」

グラフを指して丁寧に教える。由理は飲み込みはいいものの、丁寧に教えてやらないと理解してくれない。そして、なぜそうなるの?を連発する。高校になって数学が苦手になる文系の典型である。その問いに対して、屁理屈ではあるものの、即興でなんとなく納得できそうなものを組み立てて説明してやる夕季は、やさしいのかもしれない。そのおかげで、由理の数学も少しはマシになってきていた。

「雨、止まないわね」

窓の外を見て、ふと、夕季は呟いた。朝は黒い油絵の具を満遍なくのっぺらと塗り上げただけの空だったのだが、その姿が示すとおりに雨が降り出して、どうにも止みそうにない雰囲気だ。憂鬱そうに表情を消す夕季の横で、由理は楽しそうに笑った。

「夕ちゃんもそういう顔するんだ」

異能者たちとの付き合いでは、ほとんど今と同じ顔なのだが、普段の夕季はマイペースで明るい楽しい少女である。

「まぁ、ね。夕ちゃんもアンニュイになるときがあるのよ」

笑いながら夕季はそういった。由理も一緒になって笑う。雲が隠しきれない光が、水の粒の中を滑り渡って、表情に色をつけていた。おまけとして、黒板にも色をつけてくれるのだが、黒板の前に立つ教師の授業が、夕季の集中を奪ってしまう。それが、由理には少し癪だった。ふと、夕季の一つ前の席にいる、幼馴染を見てみると、夕季と同じように集中して授業を聞いていた。何となく似ている。そういえば、桐得も昔は夕季みたいに素直に笑っていた。そんな記憶が由理の脳裏に蘇る。しばらく会っていない間に桐得は変わっていたらしい。

「似てるなんて、夕季に言ったら怒るかな」

怒るに決まってる。問いを自己完結した由理は、似ているという言葉を鍵をかけて閉まっておくことにした。しまっておくことにしたら、黒板に書き付けられる解と発せられる解説に興味を示してみることにした。

 しばらくして数学の授業が終わる。黒板の前にいた生徒のフリーダムを、邪魔にならなければ容認していただけるすばらしい男性教師が去っていったとき、さて、飯の時間が来た。桐得はいつも、自分の席で一人で食べている。それは友達がいないとか、クラスの中に溶け込めていないとかそういうことではないのは、観察してみた結果の自明の事だ。桐得は面倒くさいのだ。移動するということが。誰かが来て食べようというのなら、それに従って一緒に食べ、時折小さな、黒い部分のない笑みも交えながら、楽しげに昼食をとっている。もっとも、楽しげというのは夕季の想像であって、笑みを交えても薄表情なので実際のところはわからない。とにかく、桐得がその場を動かないのであれば、逃げるためには夕季が動かなければ。とはいえ、友達同士で集まって食事なんてことは当たり前で、その当たり前の事にのっとるだけ、桐得から逃げようなんていうものは頭の中に無かった。

「ねぇ、夕ちゃん。一緒に食べよ?」

だがさすがに、弁当箱をもって来てにっこりと微笑んだ由理の顔を見たときは、逃げたいと思った。夕季の隣の席を、本人の了解を得ず借りて座る。後で、弁当を取りに来た男子生徒に席借りるよーと元気に笑いかけると、当然、いいよと返ってきた。断ってよ。夕季は内心ため息をつく。

「私の返事は待たないのね」

「あれ?嫌なの?」

「嫌じゃないわ。ただ、キリエちゃんの近くにいたくないのよ」

諦めて弁当をカバンからとりだしながら夕季が言った。夕季の声音はいつもどおり。声の大きさもいつもどおり。当然、前の席に座っている本人にその嫌味は聞こえている。喧嘩をふっかけるようなものだ。あるいは一方的な攻撃。一瞬驚いた由理が静止しようとしたとき、桐得の声がそれをさえぎった。

「カツラやセーラーを着て、女子高生のコスプレをするような奴に言われたくはないな」

言いながら体ごと振り向いた。相変わらずの薄表情だ。

「それは、あんたにも言えることでしょ」

苦々しげに夕季が言う。お互い、自分の性別を間違えられかねない名前の持ち主だ。

「俺のどこが女なんだ」

「名前」

「キリュウなんて女子は聞いたことが無い」

「キリュウじゃなくてキリエでしょ?」

桐得はまだ、何を考えているか分からない薄表情のままだが、夕季はその端正な顔の眉根を寄せていた。

「漢字も読めないらしい。昨今のガキは嘆かわしいな」

桐得がもったいぶったため息をはいた。

「あんたもでしょ。違うって?あぁ、大人ぶって痛々しいわね」

「誰も違うとは言っていないな」

はっと、夕季は苛々した気持ちを吐き捨てた。腕組みをして、そのせいで彼女の魅力として数えるには十分な大きさの胸が強調されるのだが、桐得の視線がそこに向かうことは一度としてなかった。代わりとして、いらついてそっぽを向いていた夕季の横顔を少し眺めていたが、すぐに飽きたらしく前に向き直って、また弁当に戻った。

 この一連の戦いを由理は弁当片手に観戦していた。ふっかけたのは夕季の方だが、表情を見るかぎり、桐得の勝ちという風に見える。由理にとっては、勝ち負けなんてどうでもよかったし、こんなただの言い合いに勝ちも負けも無いだろう。たった一つ、いや、二つ、言えることは、面白いということと、二人はやはり似ているということだった。そのどちらも、夕季に言ったら、やはり怒られてしまいそうだったので、由理は、心の中に鍵をかけておくことにした。

一週間以上放置でした。すみません。


……。


モチベ上がんねーorz

第一章が終わってくれなければ、殺伐としてなく、ほんわか楽しいギャグが書けないというのに。

アクセスが見れないだけで、結構モチベーションに影響がでますね。はやく復旧してくれることを願います。心から。


第一章は起承転結の起。これを書き終えなくては、この物語はどこへも行くことができない。とはいえ、第二章も起承転結の起と承を融合させたような感じになりそうですが。まだ、出ていない主人公もいますので。

この物語の主人公とは、それぞれの主観での描写をされるキャラのことです。それと同時に、その人を中心に見ることで一つの物語になることを考えております。

七人いる主人公の誰を中心にとるかによって物語りに意味が変わってくる。

そんな物語になればいいなと、最近になって思い始めましたプロットモウオワッタヨチクショー!

まあ、予定は未定。プロットは未定。今からでも、好きにいじれますよね。いじるためにもテーマ決めなきゃ。各々の。

あ、それから、新作書かなきゃ。空想科学祭の書かなきゃ。書かなきゃ。

楽しまなきゃ。

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