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Crosswise -3

第四話

-その三


四人動く。

 月曜日の放課後。二人の少年と一人の少女、そして一人の若者、もとい、男。その四人は、とあるアパートの近くにいた。二人の少年は、白い長袖のシャツに灰色のズボンとネクタイ姿。一方は、ほっそりとした体つきに、鋭い目つきの平凡な顔つきで、短い髪を風になびかしていた。他方は、一方よりも数センチ身長が高く、髪を逆立てて、端正な顔つきで、体格もいい。長い艶やかな黒髪をまっすぐと腰の辺りまで伸ばした少女は、白を基調としたセーラー服を着ていた。三人とも、七城高校の生徒である。その横に立つ、四十手前の、しかし、ずいぶんと若く見える男は、肩のあたりまでの長さで無造作に切った髪を風に揺らしていた。そのせいか、やはり、四十手前という歳には見えない。

 四人の内、背の高い少年が動き出した。他の三人も遅れて動き出す。三人は適当にそのあたりをぶらつく。背の高い少年は、まっすぐとアパートへ向かった。

 少年は、アパートの階段を登っていく。各階に誰か人はいないかと確認しながら、歩いていき、そして、目的の部屋の前まで来ると、しかし、そのまま通り過ぎた。少年、阪口銀時は既に人ではない。人を超越した鬼の聴覚を澄ませば、通り過ぎた部屋に人がいるかどうかを確認するくらい容易い。左ポケットに手を突っ込みながら、右手の携帯でメールを打つ。

「誰もいないぜ。いつでもよさそうだ」

その後は壁にもたれかかって、銀時はふぅとため息をついた。ふと目に留まった木々はしんと静まり返っていて、彼らの行動を注視しているように見えた。

 メールを受けて、残りの三人もアパートに集結する。目的の部屋の前で、若々しい男、高峰潤一郎を中心に、三人が並ぶ。

「で、どうやってあけるんだ?」

潤一郎の右に立つ、明星桐得が得意の薄表情で問いかけた。

「俺の能力を使ってこじあける」

「便利な能力ですね」

夕季は、一応、相手が友達の親なので、敬語を使っていた。潤一郎は、別に敬語など使わなくてもいいと思っていたのだが、言うのも億劫なのでそのままにしておいた。よそよそしいのが気持ち悪くても、しかし、桐得の言うとおり、この事件が終われば、赤の他人に戻るのだ。はぁと潤一郎はため息を吐いた。さっさと終わらせてしまおう。二人が注視する中で、右手のひらをドアノブの近くにたたきつけた。いや、叩きつけたと言うよりも、押し込んだ。潤一郎の右手が触れた部分から、鉄は液体となって、しかし、重力の影響など無いかのように、ふわふわとそのあたりを漂い始めた。潤一郎は突っ込んだ手を器用に動かして鍵を探り当てると、そのまま開けて、手を引っ込めた。手を引っ込めると、液体と化していた金属は元の場所に戻り、元の固体へと戻る。

「変な能力だな」

桐得が感想を述べた。

「お前の能力は、一体どんなものなんだ」

桐得が答えないだろうと言うことは、なんとなく想像がついていたので、桐得の方を向き直ることもなく、潤一郎は部屋へと入っていった。その後に、夕季、桐得の順に続く。銀時がぼんやりと見ていた木々はざわざわと騒ぎ出していた。

 三人は律儀にも靴を脱いで入った。玄関の奥に部屋が一つ、部屋の右手には、家具のせいで分かりづらいが、四畳半くらいの居間、さらに奥へ行くと部屋が二つほどあった。一番最初に入った潤一郎は、おもむろに手前の部屋を、その次に入ってきた夕季は居間を調べ始めたので、桐得は奥の部屋を見てみることにした。

「寝室か。……止めたい」

 日本的な引き戸を開けた先は、小さな寝室だった。ベットが一つ置いてあって、そのほかタンスやら、鏡やらが置いてある。銀時はこんな一つ一つを丁寧に探しているのだろうか。だとしたら、その根気は褒めてしかるべきだ。いや、その変態性は嫌ってしかるべきだ。おもむろにタンスの一段目を開けた。すぐに閉めて、後悔した。女性の下着を見て、確かにタンスだから入っているわけだと自分を馬鹿にしつつ、今頃になって家捜ししていることに罪悪感を覚え始めた。窓の外を見ると、事件現場が見える。犠牲者は二人。その犠牲者のために、犯人を捕まえるために、今の自分の行為は必要なものだと気合を入れて、タンスを避けて物色し始めた。他人に見られたくない者は、タンスの奥に入れて隠してしまうのも有りだなと一瞬考えたが、もう一度引き出しを開ける勇気は無かった。

 居間で、夕季は奇妙なものを見ていた。銀時が見つけていたらしい例の書類だった。確かに、そこには数多の人の身体的特徴と写真、名前が記されている。何度見ても何に使うのかはさっぱり分からなかった。とりあえず、そのあたりの丸い木のテーブルに置いた。何に使うのかは分からないが、いいものであるはずはない。後で、処分してやろう。一般人としての常識のような考えが、夕季に嫌悪感を抱かせていた。

「何部屋?物置じゃない、だろ?」

 疑問符を点滅させながら、潤一郎はピアノの上に座って、足で四角く高い木の机の上の本をつついた。足を組んで、顎を右手でなぜながら、眉間に皺を寄せる。数秒考えて止めた。ピアノから飛び降りて、机の上をあさり始めた。何部屋だろうと関係ない。そうやって無造作に机を荒らしていると、面白いものを見つけた。日記である。人の日記、ましてや、女性のものを見るのはよくないし、日記なんて見ている暇は無い。だが、潤一郎は好奇心を優先した。ぱらぱらとめくっていると、しかし、また、面白いものを見つけてしまった。

前回から結構間隔があいてしまいましたorz


まず、一つ、短編の話を。

あれ、短編設定から連載設定に変更できなかったんですね。知らなかったもので、「きつね」小説を一度消してまで、連載設定として再投稿してしまいました。

連載設定にして、一体なにをするつもりなのか。連載というよりは、短編集として、砂糖ひとさじ程度の甘さ控えめな話を書き連ねて生きたいんです。

まぁ、息抜きみたいなね。


そして、この彼日について。

第四話は今回で終了です。あれ?微妙な終わり方だな。はい、この話はつなぎみたいなものだったので。接続詞です。whenとかifとかthatとか、そんなやつみたいなもんです。

それと、この第一章ですが、第五話、あるいは、第六話で終わります。この章、あんまりミステリな要素が無かったですね。出会いと、バトルな回。まぁ、バトルはちゃんと頭使いますが。

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