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Crosswise

彼らの日常賛歌

-第一部「 Starter and Assaulter 」

 -第一章「 細い線 」

  -第四話「 Crosswise 」

  -その一


ここから解決編、です。

 五人が一同に会した、火曜日から二日後。木曜日の放課後だ。五月が少しずつ終わりに近づいて、そろそろ五月病から復帰した人が増え始めてくる頃合。この頃になると、空は、放課後になったからといって、夕焼けに染まることはなかった。明星家の真向かい、高峰家に三人の男が集合していた。言わずもがな、桐得、銀時の二人の七城生と、銀時を裏で操っていた男、高峰潤一郎である。他の超能力者である夕季は、現在、水曜日は親の用事で放課してすぐ帰らなければならず、三日連続ですっぽかした演劇部への見学のため、学校だ。美術部である由理も同じく学校にいる。

 そういうわけで、二人で住んでいるとは思えないほど、無駄に広い二階建ての一室。畳何条分かは数えていないが、少なくとも広いと言える程度の大きさの部屋で、木目の風合が趣のある机の上に、だらりと顔を伏していた。年長である、潤一郎が。

「客人の前で、そういう姿を見せるのはよくないと思うが」

家の広さや、そして、何の気なく置かれている小物の、しかし、いくら財布から金を出し入れしたのだろうと思うような品々を見て、銀時は気後れしていた。しかし、そのとなりに座る桐得はいつもどおりの薄表情だ。

「誰が客だ。俺は女性以外を客として迎え入れるつもりはない」

とはいえ、この家に二人を呼んだのは、ほかならぬ潤一郎である。

「じゃあ、俺たちは何なんだ」

「つまり、客以外だ。……客以下というべきかな」

どおりで、茶すら出てこないわけだ。

 机の上でだらりと死んでいた潤一郎は、身を起こすと、真剣な顔つきになっていた。机をはさんで向かいあう二人の少年に向き直る。若々しく端正な顔だが、高校生の父親としてふさわしい年齢ではあるらしい。聞けば、四十歳を目の前にしているとか。

「お前らを呼んだのは、今後の方針を決めるためだ」

 潤一郎にとって、自分の正体を明かすのは最も避けたいことだった。自分にまつわる情報は出来るだけ隠し、裏から銀時を操って事件を解決する。銀時と潤一郎とのつながりは、一つのファイルと、潤一郎から一方的にかける電話だけだった。一方がやられても、その薄いつながりから他方を知ることは出来ない。何も、そんな心配をする必要は無いように思われるが、潤一郎は知っていた。この町には、異能の力を持つ者たちによる組織、団体がいくらか存在することを。それは、二人組みであったり、四、五人のグループであったり、あるいは、潤一郎が知るかぎりでは、過去に数十人という規模の組織があった。その組織というのが、善意からくる団体である可能性もあるし、その逆、犯罪集団である可能性もある。今、潤一郎は、そのような組織の有無を知っているわけではないが、おそらく、あるはずだと考えていた。だからこそ、一方から他方をたどることの出来ないような、弱いつながりでいようとしたのである。

 銀時は、その能力からして、多勢に無勢という状況でなければ、勝つことは容易だろう。だが、もし、潤一郎がそのような集団に捕らえられ、利用され、銀時を陥れるようなことになってしまったら、一人の若者の未来を、四十年弱も人生を楽しんだ人間が潰すのをよしとすることはできない。

 そんな考えを知らないままに、不意に現れた明星桐得は、めちゃくちゃにしてしまった。三人の若者が、異能という言葉の下に、潤一郎と直接のつながりを持ってしまった。

「俺は、お前らに、ずっと正体を隠しておくつもりだったんだがな。誰かさんのせいで、それがおじゃんになった」

潤一郎は、非難がましく、桐得の薄表情を睨みつけた。対して、その視線を受けた相手は、そのまま打ち返すかのようにじっと目を見ていた。場の空気を読んでいたら、もとい、圧倒されていたら、何もしゃべれなくなりそうだと思った銀時が割って入った。

「いや、まぁ、いつまでも隠れていることなんてできないだろ?」

大人が子供をしつけるような説教口調だ。

「できるできないの問題でない事物もある」

「政治家みたいな言い分だな。問いと答えが若干ずれている」

嘲るような桐得の声。銀時の中での桐得のイメージが、無口無表情根暗な人間として固定され始めた。

「大人は往々にしてこういうものだ。お前らもいずれ、こうなるんだよ」

たばこでも銜えていたら似合いそうな、やさぐれた台詞だった。

「とにかくだ」

逸らした顔を、また二人の少年に戻した。

「こうしてお前らに顔を見せてはいるものの、今後も、やはり、出来るだけ直接会うことは控えたい。家に招き入れるのも今日が最初で最後だ」

「どうしてだ?また、ロッカーに入り浸るのは、面倒くさいぜ」

「理由は、一人が倒れて、そこからドミノ倒しのように全員が共倒れしてしまうのを防ぐためだ。そのためには、俺たちは薄いつながりでいるべきだ。ほとんど個々として独立しているような形で」

銀時は難しい顔をしていたが、すぐに噴出した。桐得は、目を閉じて眉間に皺を寄せている。

「つまり、俺たちに対抗するような悪の組織があるってわけか」

「……あるから言っているんだ。現実の悪の組織は、子供向け番組の悪とはまるで違う。しかも、俺は、目をつけられている可能性もある。そんな俺とつるんでる餓鬼は格好の餌だからな」

銀時の顔から気楽さが抜けた。対して、桐得の冷静さは、むしろ暢気の域に達していた。

「つまり、俺たちガキは、あんたを餌にして逃げればいいんだろう」

 潤一郎は、向かい合う無表情が、むしろ人のことを馬鹿にしているのを隠すためのものではないかと思い始めた。実際、そうなのかもしれない。普通なら、こんな無礼な言葉を平然と昨日会ったばかりの人間に吐き捨てることができるはずはない。

「俺は、あんたの自分が大丈夫ならそれでいいという、その考えには賛成できない。全員が共倒れするのを防ぐんじゃなくて、戦地の兵士が倒れても、参謀の自分は被害を受けたくない、そういう考えだろう」

桐得は、相手の考えを読めるわけではなかった。ただ、銀時の後ろ盾になるのではなく、むしろ銀時を操っているらしいのが嫌だった。そして、今の話を聞いて、桐得は、こいつは、完全に保身に回っていると思った。思い立った直後だ。桐得が相手を叩くのは、相手が間違っているという結論を導き出したらすぐだった。

「保身。なるほど」

無表情の内に秘められた感情を読み取るすべなどない。潤一郎は、ため息を吐いた。確かに保身のように聞こえる。いや、そもそも、自分自身、保身を考えて行動していたのかもしれない。銀時の視線が若干痛い。

「それに、一つだけあんたは勘違いしていることがある」

「何だ?」

次から次へと、こいつは。

「確かに、今回の事件は、俺たちは協力関係にあるといっていい。俺が無理矢理に夕季を引っ張った。それに俺は銀時へ潔癖を証明するための監視対象となって、あんたは銀時のおまけだ。こうやって、四人の超能力者チームが出来上がったわけだが、事件が終わったなら、おそらく、俺たちはまた集まるということはないんじゃないか?超能力を使った事件なんて、そうそう起きるものじゃないだろ」

「ごもっともです」

潤一郎は何か諦めたように、そう言った。

第何話のその一にのみ、前書きでいろいろ書いてみようかな。

とりあえず、この第四話から、事件を解決させに行きます。

一話と二話は事件提起と彼らの出会い、三話は彼らの出会いのみ、そんな感じですね。


前書きの書き方を統一してみました。

0話は、完全なプロトタイプ、試作品なので、手を加えてはいません。手を加えるとしたら、大推敲するときになります。

大推敲。一章が終わった頃に、現在の、この文面を一度全て保存した上で、手を加えるつもりです。特に、0話。文体が変わってしまったので、ね。


それと、もう一つ、楽屋裏を廃止しました。

楽屋裏は、キャラクターが敵味方関係なく語り合えばいいと思って、作ったものですが、眠い中微妙なテンションの悪乗りで書くので、微妙なものにしかなりません。

というより、キャラの少ない現状では、かけませんw

それに、明確な主題が無いので、どこにいけばいいのやら。

結局、今日部屋に引っ張り出された扇風機の前で、あーと言っていたときのひらめきと、楽屋裏の基本スタンスを融合させて、さらに主体を持たせて、新しい別作品にしてしまうことにしました。

いつかまた、長編物として書きたいと思います。


そういえば、この彼らの日常賛歌以外にも、また、いろいろと小説の案はあるんです。

ファンタジーが二本。ファンフィクションが二本。超能力など無関係な、しかし、少し非現実的ですが、普通の恋愛小説が一本。SFが、これは空想科学祭用になりそうですが、二本。

どれも、長編で、書くのがすこぶる難しくなりそうですが、空想科学祭のための作品と、もう一つ少なくとも七月中に、この中から熟した実を選んで書き始めるつもりです。

そのとき、彼らの日常賛歌の更新頻度が、低迷、とはいえ現状を見るかぎり、二作品同時進行でも一週間に一回以上は容易そうですが、低迷してしまうかもしれません。

そのときは、えーと、さっさと彼日更新しろよばかやろー!とか思わずに、二作品目も見てやってくれるとありがたいです。

七月中、ということですから、遅くてもあと、二、三週間後には、新作、ということになりますかね。

とにもかくにも、つまり、私の言いたいことは「乞うご期待!」



……長ぇ。

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