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細い線が絡まる -3

第三話

-その三


ミステリック!ミステリアスではなくミステリック!そんな言葉は無くてもミステリック!


つまり、謎っぽい戦いが始まるのです。

「今のは、明星少年……か?」

すれ違った少年の後姿を見て、男は、ぽつりと呟いた。本当に桐得であったか、自信はない。だが、しかしまずいことには変わりない。今の少年は七城高校の制服を着ていた。七城高校、銀時が通っている高校だ。このロッカー、銀時が物を保管して出てくるまで、外で見ていたが、他に七城の制服は見なかった。嫌な予感がした。そもそも、他の七城生が出てくるということは、学校から出てからすぐに、つけられていた可能性が高い。

 灰色の金庫群の最後列の前に立つ。周りに人がいないことを確認してから、その一つの扉に右手を押し当てた。灰色の金属は、液体と化して、ぐにゃりと右手を受け入れ、押し出された灰色は無重力に浮かぶ水のように丸くなっていた。ロッカーの中は空。確かに、この場所をいつも使っているのだ。鍵がついていないロッカーもこの一つだけだし、銀時がここに物を入れたのは間違いないだろう。

「さっきの奴か」

男がその場を去ると、金属は何食わぬ顔をして、固体に戻っていた。

 ファイルの中身は見られても、そこまで困るわけではない。そこに書いてあるのは、最後に家捜しした真下恵理の情報、新しい被疑者について、そして、協力関係を結ぶことになってしまった超能力者について書かれてある。はて、そこまで考えて、もしやと思った。銀時をつけているのは、その協力関係を結んだ奴ではないのか。銀時が得ている情報量は、普通に考えて、高校生が一人で調べられるとは考えにくい。協力関係を結んだ奴は、銀時に後ろ盾がいる、そして、それと接触するのは、自分と会った日の付近だと、そう考えて、銀時をつけた。銀時の後ろ盾にどんな奴がついているのか知ろうという魂胆だ。

 鍵は銀時が持っている。落としたりしないようにと、男は、いつもうるさく言っていた。それを鬼の能力を持つ銀時に、気づかれないように一瞬で盗んだんだろう。そうでないとしても、ロッカー自体に傷はついていなかった。前者にしても、後者にしても、何かしらの超能力だ。

 銀時はこのまま家に帰るだろう。それをつけて、協力者は一度落胆して、さて、そのまま家に帰ってくれるだろう。男は、ファイルがほしい。どんな小さな情報でも、事件の手がかりが詰まっているかもしれないのだ。この場合、男がするべきことは、何か。

 顔を見せれば、ファイルを手に入れるのも容易いかもしれない。だが、顔を見せるというのは、ゲームでいうとアドバンテージを失うということだ。より強固な信頼を得られるかもというのはあるが、だが、損失であることに間違いない。顔を見せずに、どうやってファイルを手に入れるのか。未知の超能力に襲い掛かるのは、得策とはいえない。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず。冒険に出るか」

男は携帯を取り出した。声が知られても、正体が知れるようなことはないだろう。


 またいつものようにファイルをロッカーに放置して、銀時は今度こそ帰途につく。ここ数日、いろいろなことが起こり、銀時は疲れていた。たまに軽い眩暈に襲われる。こういう人ごみのなかは余計につらい。何件か、といっても両手の指で足りる量だが、事件を解決してきて、今までは解決して、それでよかったで終わっていた。銀時は悪への怒りだけで行動している。許せないことがあるから、鬼として、いうならば裁く。だが、もしかして、その犯人たちも例えば銀時たちと同じだったとしたら。今回の事件は、確かにただの無差別な攻撃である可能性が高いが、銀時と同じように悪を憎むあまりの行動であれば、それを銀時がどうこう言うことができるのだろうか。

 世界は勧善懲悪ではない。ましてや、勧善懲悪だったとして、銀時が善であるといいきることは誰にも出来ないのだ。

 空が眩しい。畜生とため息をつきながら、いつものことのように楽観的に考えようと心がけた。だが、こんな肝心なことを、そんな気持ちでいるのはどうかとも思われる。そんな折、銀時の苦悩の渦を知ってか知らずか、携帯が銀時を呼んだ。

「よう、じゃないな。急いでいるんだ。今すぐ俺の言うとおりにしろ」

聞こえてきたのは、男にしては少し高い特徴的な声だ。男にしては高い声だが、男であることには違いない。だがしかし。

「誰だ?」

「俺だ。としか言いようが無いな。あ、いや、電話の男だ」

「そりゃ、電話してるもんな」

「機械音声の男だ。いつもお前に妙な事件の解決を要求している奴」

「なるほど、で、何かようか?」

声すら明かさないで行動していたというのに、一体どういう風の吹き回しか。銀時は少し驚きつつも暢気に構えて、歩いていた。

「ようなんてもんじゃない。やばいんだ。まず、先に小声で話しをしてくれるか?」

男の声にはあせっている色は無い。小声であるから気づけないだけかもしれないが。

「俺は今、人ごみのなかなんだがな」

まわりはがやがやとうるさい。銀時としては、にぎやかでいいらしいが。

「やばいから、小声でと言っている。次に、どっか、近くのトイレに身を隠せ」

よく分からないと思いつつも、言われたとおりにした。やはり、声色からやばさというのは伝わってこないが、よくよく考えると、声を明かすというのは、声を明かさなければならないほど切羽詰っているということだ。

 身を隠す。身を隠すということは、命でも、狙われているのだろうか。だとしても、銀時は鬼だ。鬼の力、と桐得たちには説明しているが、実際には、銀時は鬼の力を手に入れたわけではない。あれは超能力が身についたのではなく、人から半人半鬼に種族が変わったと言ったほうがいい。実際、銀時は、平常時なら、まだ人と同レベルだが、少しでもその力を発現させると、拳銃で撃たれようと、その程度なら、皮膚で銃弾が止まり、死なない。

「おし、隠れたぞ」

「落ち着いて聞け。お前は今、尾行されている」

尾行。銀時の鬼としての体質は、平常時でも、低レベルだが発揮されている。その体質の一つとして、人よりも気配なんかには敏感だ。

「お前、俺を知らんわけじゃないだろうな」

「知っている。だが、俺もお前も、尾行している奴の能力を知らない」

銀時の目つきが鋭くなる。暢気に構えていたが、少しずつ緊張感を持ち始める。

「そいつにファイルを盗られた。方法は分からないが、どうにかしてロッカー自体を壊すことなく盗まれている」

「まずいな、それは」

「俺の見立てでは、お前が言っていた協力関係を結んだ奴が、尾行している可能性が高い。そうでなくとも七城の制服を着ている奴だ」

桐得だ。ファイルを盗んで、銀時を尾行して、一体何をするつもりなのか。いい予感はしない。

「いいか、そいつを見つけて、近づいて、とりあえず、尾行するな、ファイルを返せ。と言えばいい。ファイルを出さなければ脅せ。とにかく、ファイルを取り返せ。取り返したら、それ以上は何もするな。決して殴るなよ」

それから、男は、携帯は通話状態のままで、ポケットに入れておけとも言った。わずかでも聞き取れればそれでいいらしい。

 銀時は携帯を制服の灰色のズボンの右ポケットにしまう。鬼の力を発現させようとすると、発現させた分だけ、頭に生えた角が伸びる。平常時は、触ってみないと分からないほど小さいものだが、伸びれば見つかる。目立つだろう。鬼の力は使えそうも無かった。

 ゆっくりとトイレから出る。開けた大通りに、七城の制服を探す。とはいえ、七城の制服という特徴だけでは、すこし面倒だ。探せば二、三人は見つかるだろうから。ここは、男の見立てを信じて、桐得を探すべきだろう。

 しばらくあたりを見回した。人ごみ人なみ、この中から桐得を見つけるのも難しいだろう。尾行をしているというのなら隠れているだろうし。ずっとキョロキョロしていては、銀時は不振人物だ。それに、尾行に気づいたことに気づかれてしまう。そうなれば逃げられてしまうのは確実だ。やむなく、その人ごみの中に分け入ろうとした。

「ん?鬼か?こんなところでキョロキョロと、何をしてる」

犯人の見当でもついたのか。だとしたら抜け駆けするなよ。そうつけたしながら、後ろから銀時の肩をぽんと叩いて現れた桐得は、いつもどおり表情は薄かったが、どこか非難がましい目つきをしていた。


この小説のジャンルを、ファンタジーから、ファンタジックバトルミステリーに変えてみたい。

いえ、そんなジャンルありませんし、ただの思い付きです。

ですが、現実にあり得ない戦いと謎、という意味では、そんな感じのジャンルですよね。


空想科学祭へのためのSFの構想を練っています。すると、二つくらい長編、というか中編くらいの構想ができてきました。

しかしながら、なんと、まだ一文字にもなっていません。

完全なる風刺、というか皮肉的小説、あるいは、やはりミステリー、どちらにしようかな。いずれは、どちらも書きたいけれど。

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