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細い線が絡まる -2

第三話

-その二


運命=?


という話です。第三話は。

 結局、その後は何も無かった。桐得の提案で―夕季にとっては、命令だが―屋上に、桐得、銀時、夕季の三人は集まったのだが、一応、今後まず先にやるべきことの確認はしたものの二人のいがみ合いでほとんどの時間はつぶれてしまった。みんな仲良くなどと掲げる気は最初から無く、ただ、事件の解決のために、桐得が他の二人を利用する。それだけのことだった。

 空が赤くならぬうちに、放課後が来て、今日もまた演劇部に見学しにいった夕季以外の二人は、やることがないのでそれぞれ帰途につくことになる。だが、帰途につくはずが、お互い、家に帰ろうとはしなかった。

「さて、いくら超常的な能力を持っているからといって、あんな子供が、あれだけの情報を手に入れられるのか?」

答えは、銀時自身の教えてもらうつもりだった。もし、銀時の後ろ盾となる人物がいたとしたら、桐得という犯人候補が出てきた今、昨日、あるいは、今日、その人物に接触するはずだ。昨日尾行したかぎりでは、自宅にそのまま帰っていったから、今日会う可能性はより高くなったと考えるべきだ。尾行が気づかれていると考えなければの話だが。

 友人と手を振って正門のところで別れる。ゆったりとした足取りで、一人になった銀時は帰途につく。その姿を視界に納められる位置に桐得はいた。桐得の時間停止能力はこういうときにも役に立つ。後ろからずっとついていっては、ばれる可能性もあるが、例えば、前にいたり横にいたりしたなら、それは尾行されていると思われるだろうか。いいや、思われないだろう。

 桐得は、あくまで一つの位置を動くことはない。壁にもたれかかって携帯をいじっていたり、ベンチに座ってハードカバーのページをめくっているだけだ。だが、その集中は一人の人間に注がれている。銀時が見えなくなれば、時間を止めて、別の場所で別のことをしている。銀時の能力、いや、体質というべきか、それは“鬼”だ。人より上の身体能力をもつということだ。その力で人が近づいてくる気配などというのは確かに察知できるものだろう。しかし、近づいていなければ、察知できないはずだ。

 思惑通り、もっとも、銀時が気づいていないふりをしている可能性もあるのだが、彼は自宅への道をそれ、駅へと向かっていた。

「誰かと待ち合わせをするにはうってつけの場所だな」

銀時は、そして、同時に桐得も、駅の人ごみの中に消えていった。

 人ごみのなかで、尾行をするとき気をつけなければならないのは目標を見失うことだ。それは、時間停止能力をもつ桐得にも同じ事が言える。いくら時間を止めて相手を探すことがいえるとはいえ、一度見失えば、存外見つけにくい。もっとも、見失った瞬間に時間停止をすればなんとかなるが。銀時が向かったのは駅のロッカーだ。どんな荷物でも、誰かに見られることも、誰かに盗まれることもなく預かってくれるこの場所は、やましいことがある人間なんかが、やましいものの受け渡しに使うことが多いらしい。らしいという表現は、ドラマや小説なんかからの知識だからしかたがない。

 ロッカーが手前から奥へと四列ほど並んでいる。いや、五列だったかもしれない。どの番号のロッカーに荷物をしまうのか見たければ、銀時に見つかってしまう可能性がある。さて、どうするか。奥へ歩いていく銀時を見ながら、もし、ここで後ろ盾となる人間に直に会っていない可能性を考えていた。いや、可能性どころか、ロッカーなんて使っている時点で、ほとんど決まりだ。

 銀時がロッカーから出てきたのを見計らって、桐得は、時間を止めた。

 人ごみを掻き分けて、走る。銀時の右肩にぶらさがるメッセンジャーバッグをおもむろに開けた。中を引っかくように何かを探す。ほどなくして、それは見つかった。ロッカーの鍵だ。鍵についた白い楕円形のプレートに三桁の数字が書いてある。

 銀時にバッグの中をあさった事を気づかれないように丁寧に片付けた。片付けた、というよりは元の位置に戻したというべきか。そのままプレートにかかれた番号のある列に身を隠した。とりあえず、これで時間が動き出しても大丈夫だ。

 この鍵を奪ってしまえば、いつかは気づかれることになるだろう。しっかりと、バッグのポケットに入れておいたのだ。落とすはずがないだろうし。それに、この鍵は、また、どこか別の場所で相手に渡さなければならない。本来なら、ロッカーの中身など目もくれず、相手を確認するためにそのままつけるべきだ。だが、桐得は欲張った。まだ少し、時間が動き出すまで猶予がある。その間に、鍵を開けて、ロッカーの中身を取り出した。数枚の書類が入ったクリアファイルだ。A4の用紙に、綺麗に印刷された文字と、後から書き足された汚い文字が見えた。

 今度の時間停止は十秒ですんだ。十秒。だが、その十秒間、桐得は銀時を追えなくなる。そう考えると、長い十秒だ。もし、その間に銀時が人ごみに紛れてしまうと、見つけるのが難しくなる。

「二兎追うものは一兎をも得ず」

そんな言葉が浮かんだ。残り二秒。そろそろいいだろうと思って、桐得はその場を立ち去る。立ち去る一瞬、一人の男とすれ違った。顎に髭の生えた若い男。別にその男の格好が印象に残ったわけではなく。ただ、そのハンサムな顔に一瞬だけ目がいっただけだ。別に桐得は男に興味があるわけでもないから、ただ一瞬ちらと見ただけで、後は記憶にとどめることも無かった。

運命を信じるかい?


お前が、300円くれるなら信じる


……、信じないのか。そうか。


いや、くれよ。


運命、ゆーても、それこそ後からのこじつけであるわけですよね。

あの時あーしたらよかったとか、こーしたらよかったとか、そう思っても過去に戻ることはできない。

今の自分はこうなってしまったが、過去にあーしていたらどうなっていただろうか?いや、どうにもならないだろう。現に自分はこうなっているのだから、なるべくしてなったんだ。そうだ、これは運命だ。仕方ないんだ!

みたいなね。


でも、アインシュタインの考えた、四次元は、運命を肯定しているようにも見えます。よかったね。天才に運命は認められたんだよ。


つまり、何がいいたいかというと。

この第一章は運命にかんするお話です。

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