鉄拳ジャスティス -4
第二話
-その四
今気づいたこと。
改行を多めにすれば文字数がかーなーり増える。
さて、次くらいから鉄拳がでてきますよ!
一軒目。庭付きの一戸建てとは、金持ち臭のする家だ。白い綺麗な二階建ての家は、何となく、おとぎ話にでも出てきそうだなと思った。おそらくだが、二階のどこかに自殺した少女の部屋があったのだろう。今はどうなっているのか。
銀時は、ひとまずターゲットの裏側の家の屋根にのぼった。誰かに見られるとまずいから、もちろんこそこそと人目につかない家と家の隙間なんかを使いながら。ファイルの情報によると、今、この家の住人は仕事で出かけていていないはずだ。目を凝らし、耳を済ませる限り、誰かがいそうな気配も無い。銀時は目に付いた二階の窓枠に飛びついた。落ちるということは無いが、この状態で長くいると、見つかる可能性だとかが高くなってかなりやばいので、仕事はささっとやってしまおう。鍵のある部分は下見済みだから、ちょうど手が入る程度の大きさの穴を窓に開ければいい。銀時はおもむろに拳を突き出す。窓ガラスはいとも簡単に砕け散った。
部屋に入って、なるたけ音を立てないように窓を閉めると、まず、綺麗に片付いた部屋を見回した。壁に向かって机が置いてあった。その机の上に使う人のいなくなった教科書類が並んでいる。本が置いてある。シャーペンが転がっている。写真に閉じ込められた日常が、そこに再現されていた。部屋は埃一つ無いと言っても過言ではないほど綺麗に掃除されていた。しかし、机の上に無造作に置かれた本やシャーペンの位置は正されることが無く、そのままに転がっていると見える。帰ってきた少女がいつでも読めるように、書けるように。こんなものを見て悲しくならないはずが無い。しばらく呆然と、机の上を眺めていた。少女は、そしてその家族は、どれほど犯人を憎んだことだろうか。最悪な人殺しに復讐して、何が悪いのか。そういえば、俺は、これから、その最悪な人殺しに復讐した人間に、何かをするんだったな。何か、なんて濁したってちっとも心は軽くならないが。
銀時にとって、その止まった世界を壊してしまうなどということができるはずも無かった。しかし、きっちりと、仕事はさせていただく。銀時は引き出しをそっと開けたり、本をそっとめくってみたり、丹念に部屋の隅々まで、家の隅々まで、何かを探していく。何かが無かったら、今やっていることは単なる時間の浪費である、そのように言う人がいるかもしれないが、もし、何かが無かったなら、この家の人たちが犯人である可能性が小さくなる。それはいいことじゃないか。
「疲れたぜ。何も見つからなかったし」
いいことだ、とは、確かに思うんだが。しかし、疲れるのは確かだ。程よいを通り越したスリル満点の緊張感の中で、細かい作業をやるわけだから。右手首に巻きついている三本針を見てみると、十一時を指していた。このくらいのペースは、とりあえずいい感じというところだろうか。
入ってきたときと同じ窓から外に飛び降りた。この家にはもう用はないことを願う。二度手間になるのは嫌だし、何よりも、できれば苦痛からは目をそらしていたいからな。銀時は予定していた二軒目に急ぐ。
「成果は無し、か」
銀時がファイルに書かれていた家を一軒一軒家捜ししていた土日の次、つまり月曜日。ほとんどの人の敵である月曜日だ。そんな月曜日の昼ごろ、駅のロッカーにふらふらりと一人の男が立ち寄った。その男は奥の方のロッカーからファイルのようなものを取り出した。以前、彼が同じ場所に保管、いや、置いておいたものだ。
「どこにも証拠どころか、犯人に対する恨みの痕跡すらない、と」
男はファイルに目を落としたままで歩いているが、向かいを歩いてくる他人をするすると避ける。目が三個あったりするのかもしれない。
男は駅から少し歩いたところにあるスーパーに立ち寄った。このときもやっぱりファイルを眺めていた。
「一人だけ調べ残しがある。が、まぁ、どうせはずれだろうな」
買い物かごをとる。
「で、その他連絡するようなことは」
野菜をかごに入れる。このとき、もちろん買いたいものをちゃんと選んでいたし、あまつさえ賞味期限の長いものを探していた。
「質問?」
男の右手にあるファイルにはこう書かれていた。
―殺害された男は、偶然に一度姿を見られたが、他は見られなかったんだよな?なら、なぜ、他の被害者を特定することができたんだ。
「……なるほど、もっともな質問だな」
男はスーツのなかにファイルを隠す。個人情報が羅列されたファイルが他人に見られていいものであるはずが無い。もっとも、今まで堂々と見ていたのだが。
男は買い物を済ませると、その足で、普通に家に帰った。家に帰ると、スーパーで買ったものをとりあえず冷蔵庫に放り込み、そして自分の書斎へこもる。こもる、というのは鍵をかけたからだ。男の行動はどこか怪しげだが、別に怪しげなことをするわけではない。いや、怪しげといえば怪しげである。
男は机の上のデスクトップ型パソコンのスイッチを入れた。四方を本棚で囲まれている上、部屋の中央にある長机にもうずたかく本が積まれているのだが、それさえなければ、社長室みたいな雰囲気だ。男が座る椅子も、高そうで、そして、すわり心地がよさそうだった。男はそんな部屋の雰囲気とも、自身の年齢とも相反するように、クルクルと椅子を回す。椅子が一回転したところでパソコンが起動し終えた。椅子を回すのは癖で、昔のなかなか動かないパソコンのせいでついてしまったものだ。男はパソコンが起動すると、机の中からマイクを取り出した。そしてパソコンに繋いで、いろいろとプログラムを起動させていく。男がこれから何をするのかというと、それは至極簡単なことで、電話だ。
「おっす」
「おっすじゃねえよ」
阪口銀時という名の少年に電話をかけるときは、こういう手順を踏まなければならない。なぜならば、男は自身の声を加工して、銀時に正体を明かさないようにしているためだ。
「何だ。俺とお前の仲じゃないか」
「俺はお前のことを知らんけどな」
男がマイクに声を吹き込むと、あらかじめ組み立てられたプログラムどおりに音声処理が施される。テレビとかでよく見かけるモザイクつきのあの声だ。
「まあとにかく、本題に入るぞ」
男が話す相手、銀時少年はそんな声で話しかけてくる怪しげな相手に対して、いたって普通に返答する。
「いきなりだな」
男のほうの音声処理さえなければ、普通の友人どうしの会話か何かだ。
男はスーツの中からファイルを取り出した。右手にそれを持って、目を通しながら話を続ける。
「お前がファイルに書いてよこした質問とやらに、答えてやるよ」
キョトン。そんな音が聞こえた。
「マジでか。書いたら教えてくれんのな」
「内容によるだろ」
ちなみに、男は銀時に対して、自身の情報を全く与えていない。
「で、とにかく本題だ。なぜ、犯人の顔すら見ていないはずの被害者たちを、その犯人から被害を受けたと特定できるのか。……理由は簡単だ。犯人は分からないが被害を受けたのは確かだ、と言った人を片っ端から集めてみた」
はぁ?とため息が聞こえる。
「犯人が誰にもばれないというのなら、逆に考えるんだ。何一つ犯人の情報を知らない被害者は、その犯人から被害を受けたんだと。まぁ、確実性にはかけるがな」
「……。じゃあさ、一軒だけ残しちまったんだけど、行かなくていいか?」
「駄目だ。ちゃんと行けよ。ちゃんと、……えーと、真下さんとやらのお宅に家捜し行って来い」
じゃあな。そうやって電話を切った。男は机の上に両肘をつき、手を顔の前で組む。そしてそのまま手を額にくっつけて、はぁとため息とついた。今のは別に男の心情が口から出たものではなく。銀時の気分になって、代わりにため息を吐いてみたのだった。
更新が遅い?まぁ、たまには、ね。ね。
そういえば、空想科学祭ってイベントに参加表明てきなものをしてしみました。どうしよう。
いや、ほんとどうしよう。
構想は、あ、るんんだけどなぁー。