表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/40

鉄拳ジャスティス -3

第二話

-その三


銀時君は作者のお気に入りです。あんまりでてきてないけども。

 被害者の名前は山下敬之(やましたたかゆき)。三十代前半の男性会社員。ちょっと太り気味だが、どこにでもいるような普通の会社員。仕事もまじめにこなすし、職場では結構人気者だったらしい。だが、数年前に、一度、痴漢事件の犯人として逮捕されたことがあった。このとき、裁判で無罪となった。無罪になったことはいい。だが、この事件の被害者、当時十六歳だった少女は、無罪判決が下された数ヵ月後、自殺した。たしかに無罪と判断されはしたが、本当にやっていなかったのだろうか?少女の自殺は一体どういう意味なのだろうか。一時期ちょっとした悪評がつきまとったものの、すこしたてば、そんなもの忘れ去られていくものだ。そんな小さな小さな事件など、我々人間が靴の下にこびりついた蟻に気づかず、そのまま歩いていけるのと同じくらいに、なんら意味をなすものではないのだ。その男は殺されるまで、いつもどおり普通に働いて生きてきた。他者と違う点は、実は、捕まりこそしていないものの、彼はたびたび痴漢をしていたということ。自身が害を加えた少女の自殺で反省したのかしていないのか、欲望が抑えられなくなるとき、こいつはまた同じ罪を犯す。

 銀時は手元のファイルを見て、ため息をつく。事件が起きてから四日たって、例の男から、電話がかかってきたのである。事件について、現段階でわかったことを適当にまとめたから、またいつものところから持っていってくれ、と。銀時に厄介ごとをふっかけてくる電話の男が自身の正体を明かしたがらないため、駅のロッカーを通じて、こういう資料の受け渡しをしている。犯罪者みたいだな、とか思いながら、ロッカーの中にある封筒、その中のA4サイズくらいのファイルを取り出した。そして、それを見ながら帰途についたのである。さて、今回の事件は、この少女の身近な者が超能力をもったため復習を試みた。そういうことだろう。他にもこの男の被害者はいるようなので、その本人あるいは身近にいる者という可能性もあるといえばある。

「しかし、警察は何をやっているんだか」

もともと、今回の殺人は、男をちゃんと有罪にして刑務所の中に放り込んでおけば起こらなかったはずである。被害者少女の自殺も無かったかもしれないし、新しい被害者がでるということもなかったはずだ。あれ?そういえば、なぜ、新しい被害者がいると分かっているんだ?A4の文字がやたらめったら印刷された紙束は、銀時の疑問に答えるかのように、ちょうどそのことについて書かれた部分を見つけた。

―証拠が無い。

「いやいやいや、証拠が無くても有罪になるのが、こういう事件じゃなかったのか?」

―そもそも、被害者は、誰も姿を見た者がいないのである。自殺した少女は、三億円の宝くじをひきあてるような偶然で、犯人の姿を一瞬とらえたのだが、あろうことか犯人は、同じ時刻に別の場所で目撃されていたのである。

 話の流れがだいたい読めてきた。おそらく、この男、異能の力を持っていたのだろう。そういうものをもった人間は、まず、それを利用して自分の欲望を満たすことを考えるものだ。そして、やはり。やはりだ、ファイルにもそう記されていた。

 事件の概要を理解したなら、次に何をするべきか、考えるまでも無かった。ファイルの中の資料の最後の部分は、住所やら名前やらがほとんどだった。つまり、こいつらについて調べろと、そういうことだった。

「面倒なところは押し付けて来るんだよな。あのやろう、いつか正体見つけたら、二度とあんな口の利き方できねえように痛めつけてやる」

そんなことを考えながらも、銀時はいたって涼しい顔をしていた。なぜならば、そこまで腹が立っているわけでもない、すでに慣れてしまっているからだ。男が異能に関する事件をかぎつけて、銀時がそれを解決するというパターンに。

 

 銀時がファイルを受け取ってから、数日たった。学生にとっては、主に部活とかをやっていない学生にとっては、待ちに待ったといえよう土曜日である。この土曜日に、銀時はいつもなら、暇そうな友人をとっ捕まえて、カラオケに行ってみたり、ゲーセンに行ってみたり、あるいは、宿題に追われてみたりするのだが、今日は違った。起きた時間は、いつもの休日と同じく九時ごろ。とりあえず、窓を開け放ちしっかり換気して眠気を吹き飛ばすと、すぐに朝食を作り始める。作り始めるといっても、銀時は料理などできないので、トースターに食パンを放り込んで五分待つだけだ。その五分の間に洗顔をすませ、ついでに必要なものとしてカバンの中に放り込んでおいたものを確認する。食パンを口の中に放り込んで、この後いつもなら、とりあえず今日はどうしようかな、なんて適当に考えてだらだらするのだが、今日は、さっさと家を出て行ってしまった。両親宛に置手紙を残して。ちなみに、置手紙の内容は「自分探しの旅に出ます。探さないでください。……なんつって」ばかばかしい。

 勢いよく出かけた銀時の目的は、自分探しの旅だなんてすばらしいものではなかった。家捜しである。他人の家を家捜しするのである。ドラクエだとかに代表されるRPGでは、主人公たちが家捜ししていろいろとアイテムを手に入れるのは、許されることであり、またプレイヤーの楽しみの一つでもあると思うのだが、現実世界で他人の家を家捜しするということは、つまり、泥棒である。今から彼は、数日前に男から渡されたファイルに書かれた住所を訪れる。訪れるといっても、まず、人がいるかどうかを確かめ―事前に仕事かどうかは確かめてあるのだが、念のため―いないとなれば、渡されたファイルにくっついていた合鍵で玄関から堂々と進入する。その後は、気の済むまで、時間の許すかぎり、がさごそと家の中を探し回るのである。探すものは現金でもなく、預金通帳でもなく、金目のものでもない。その人が超能力者であるという証拠、または、事件にかかわっているという証拠。前者、超能力者であるという証拠は、おそらく出てこないだろうが、後者、事件にかかわっているという証拠ならまだありえるだろう。

 平凡の仮面をかぶった奇妙な町、判戸町のさわやかな太陽の下を、黒い髪を風になびかせて走る。自転車を、目的地の少し離れたところに置くと、その時点で既に人目を避けながら、行動を開始する。その端正な顔立ちはなんとなく楽しそうな雰囲気だ。銀時が言うには、たしかに泥棒みたいだと言われると響きが悪いし、実際、そんな気もするのだが、人に見つかったらアウトという状況下で、隠れながら速やかに任務を遂行するのは、緊張感やスリルがあって結構楽しい。そして、それが正義のためであるならば、罪悪感もあんまり無いし、悪い気はしない。……そのうち銀時が泥棒になってしまわないか心配である。

実を言うと、第二話でさえほとんどノープラン。

小説を書くときは計画的に。


そういえば、結構重大なお知らせ?があります。いや、お知らせというよりは、重大な自己満足です。

ユニークアクセスが1000こえましたよ!イヤッホォオオオオオオウウウ

え?2ヶ月で1000って少なくないかって?いやいややいやいやいやいや、そそそんなはずは。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ