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鉄拳ジャスティス

彼らの日常賛歌

-第一部「 Starter and Assulter 」

 -第一章「 細い線 」

  -第二話「 鉄拳ジャスティス 」

  -その一


この第二話全体は、おそらく一つの言葉をあらすじと変えることができます。


チェストーッ!!


いや、本当にそうなるか分かりませんが

 一度だけだった。学校が始まるまで、夕季に桐得から連絡が来たのは一度だけだった。それ以外には何も無い。パシリにされることも、宿題見せろ馬鹿とか、そういうのも無かった。学校に行って直接会えば、何かしらあるのかもしれないと思ったが、それも無かった。しかも、桐得はどうも、上に立って夕季を従わせたいとかそういう変な趣味を持っているわけではなさそうだった。だが、もう既に、面倒なことを頼まれては、いや、命令されてはいるのだが。

「で、何か分かったか?」

 七城高校、月曜日の朝。空の七割がたを白い雲が覆っている。ほとんど雲なのに、この場合はまだ、晴れと表記するらしい。ホームルームが始まる十分ほど前に来た夕季に、前の席にいる桐得が話しかける。

「何も」

夕季はそう言って、机の右側にかばんをかけると、さっさとどこかへ行った。たった十分だが、その十分も桐得といるよりは、友達といたほうがいい。さて、夕季が桐得に命令されていたこととは、自分が転校してきたその一日前に起きた事件の、被害者について調べることだった。何かちょっとした手がかりでもあれば、ということで、とりあえず調べろということだったのだが、そんなもの、どうやって調べればいいのやら皆目見当もつかない。見当もつかないのだから、何も無くても仕方が無い。

 そのままいつものようにホームルームが始まって、一時限目、二時限目と授業が続いていくのだが、この間に何かしら事件が起きたわけでもなく、夕季と桐得は互いに話をすることも無く、本当に何も無かったので、その様子は割愛させていただく。放課後になって、七城高校では何の部に入ろうかと考えていた夕季は、友人の勧めで演劇部に見学に行くことになっていた。帰るための荷物は、教科書類を後ろのロッカーにしまいこんであるせいで、ほとんど無い。結構軽めのかばんをもって、演劇部へいざ、というところで桐得に呼び止められた。

「何よ」

立ち上がってかばんを左肩にかけた姿勢で、首だけを後ろにねじって、桐得の無表情を見た。桐得は座ったままで、無表情に夕季を見上げている。

「お前の右手の中にメモを握らせた。被害者の名前だ。そこから、全力を尽くして、何か掴め。いや、何でもいいから調べておけ」

言われて右手に紙みたいなものがあることに気づく。桐得は立ち上がると同じようにかばんをかけて、じゃあなと一声。そのままさっさと帰ってしまった。夕季も、別にその背中を見送るでもなく、右手のメモをかばんの中に適当に放り込むと、友人の待つ演劇部が普段練習に使っている多目的ホール―ホール、といっても、教室よりちょっと大きくて防音壁で、何も無いだけの部屋である―へ向かった。

 

「よっ」

帰路につく桐得の左肩をぽんぽんとたたいて、後ろから笑いかける。微笑むでも満面の笑みではなく、含むところがあるような笑いだ。対して、振り返る桐得にはやっぱり表情が無い。

「何だ。高峰か」

「何だ。とは何よう。私たち幼馴染だよ」

道を挟んで家が向かい合っているため、本当に小さい頃から知り合いだ。

「ただ家が近いだけだ」

だが、幼馴染というものは桐得にとってその程度だったらしい。いや、確かに、小説やドラマなどで出てくるロマンス的な関係ではないのだが。こいつ……。しれっとかわして行く桐得の横を歩きながら、由理はいらいらしてきた。

「そんなことはどうでもいいや。聞きたいことがあるんだけど」

「何だ?」

だが、幼馴染というものはいいものだ。なぜなら、相手の弱点だとかそういうものを一番知りやすいポジションだったりするからだ。由理は桐得の無表情を一瞬にして突き崩す方法を知っている。

「ゆーちゃんと、何かあったでしょ」

ゆーちゃん、とは桜庭夕季のあだ名である。桐得は一瞬迷ったが、そういえば、よくそんな呼び方を聞いたような気がする。いや、聞こえたような気がする。 

「何か、とは何だ?」

「仲良くなってるじゃん。付き合ってるの?」

けろりとした表情で由理は、爆弾を投げ飛ばした。いや、桐得と夕季の様子を見ていれば、そんな言葉は全く出てくるはずは無い。普通ならそのせいで、何それ、頭大丈夫かい?とでも言われそうなはずだが、桐得は違う。桐得は、恋愛ごとが絡んでくると、すぐ顔が赤くなる。今の発言に、そういう要素はほとんどない、ただのからかいみたいな言葉だが、それでも赤くなる。桐得はそういう言葉、仕草の類が苦手中の苦手だ。明らかに違うだろという場合でも、当の桐得も明らかに違うと分かっていても、苦手なことは苦手であることに変わりは無かった。

「やめてくれ」

「やめなーい。でも、冗談抜きで、前よりはマシになってるよね」

桐得は表情自体はいつもとさして変わらないが、色が完全な赤になっている。

「前よりマシとは?」

「話してるじゃんか。前は一言もしゃべらなかったのに」

桐得ははぁと息を吐いた。

「まぁ、必要なことだから仕方が無いんだ」

「ふうん?」

「仕方が無いんだよ。あいつもな」

桐得の言葉には、諦めたような響きがあった。桐得は知っている。夕季も、同じように仕方が無いんだと。それは桐得の脅しのせいもあるが、それ以前に、唯一の同類の知り合いなのだから、仕方が無いんだと。桐得は何となく、自分と夕季は似たもの同士なのではないかと、夕季のほうも同じようなことを思っているのではないかと、そんな風に思っていた。由理は、桐得の諦めたような言葉を聞いて、ふーんと言ったきり、黙ったてそのまま歩いていた。二人が家につくまで、無言で。

 さて、それから少したって、自室のベットに寝そべって、桐得は考えごとをしていた。今、この判戸町にどれくらい超能力を持った人間がいるのだろうか。桐得の考えでは、少なくとも三人いる。一人は自分、一人は夕季、一人は、一週間ほど前のあの奇妙な事件の犯人だ。白昼堂々と、通勤中の会社員や通学中の学生が大勢いるなかで、誰にも見られずに人を一人刺し殺したという、そいつも超能力者に違いない。背中の真ん中に深々と、15センチほどあるナイフの刃の部分が、ほとんど体に埋まるほどに刺すなどという行為は、当然、本人が自殺しようとしてできるものではないし、歩いていて、横を通るときにさっと刺してさっと隠れるなんてできるわけもない。トリックという線も考えてみるが、超能力がこの世に存在することを知っている彼にとって、どちらの方が有力かは明白だ。こういう、とりあえず考えてみるということは桐得の癖のようなものだった。ふいに思いついたものについて、とことんまで考えてみる。何の手がかりもなくても、とりあえず頭の中だけで考えて考えてしてみるのだ。それに意味があるかどうかはどうでもよかったりする。はぁ。一息ついたら、有意義なことをしよう。桐得はとりあえず、学校の宿題を片付けるのであった。


 ところで、この事件に興味を示す人間は、実は、桐得が考えるよりも多かった。いや、確かに近場で殺人がおきたとなると、何かしら気になるものではあるが、そういう意味ではなくて、奇妙だと感じた人間が多いという意味だ。そして、奇妙だと感じた上に、超能力だと思った人間も、実は大勢いるのだった。その大勢の内の一人、阪口銀時(さかぐちぎんじ)は七城高校にいた。

 

 

 

新キャラの予感!!


そういえば最近、楽屋裏コーナーが無いですね。

仕方ないんです。忙しいし、さっさと寝ないといけないから、後書きまで手が回らないんです。


ところで、そろそろこの小説、宣伝したほうがいいような気がしたり、あと、そろそろ、なろう内の作家さんとも交流していけたらなぁと思っているのですが、時間ねぇ。誰か2時間1000円くらいで売ってくりーorz

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