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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第二章

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97.目の敵

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 私がデストワーグナー家の者だと知ると、マリエッタ様、ライオネル王太子、公爵家ご子息であり男爵位のリカルド様のお三方の表情が緊張で強張った。

あのお方達はナディール王国の方々。私が敵国の宰相の家の者と知れば警戒するのも仕方のないこと。

私も敵対するような眼差しを向けられるのは慣れているわ。気にしてはダメ。

私は、私に与えられた役割を淡々とこなすだけよ。

私はここでしか生きて行けないのですもの。他に行く所も帰る所もないのですから。


「マリエッタ様のお過ごし頂くお部屋はこちらになります。

こちらのお部屋は大聖女専用のお部屋でございます。」


「その様なお部屋をわたしが使ってもよろしいのですか?」


「ソフィーア様からそうするよう申し付かっております。

ソフィーア様は普段はご自宅から転移水晶を使って大神殿に通っておられますので、お気になさらなくても大丈夫かと存じます。

マリエッタ様のお連れの側仕えと護衛騎士のお部屋も隣にありますので、今はそちらに待機して頂いております。

明日、お召しいただく登山用の衣服もお部屋の方にご用意してあります。

本日の予定は以上となっておりますが、お疲れでなければ休憩の後、大神殿の施設をご案内することもできます。

如何なさいますか?」


「いえ、今日のところは疲れたのでこれで結構です。」


「かしこまりました。

何かごさいましたら、私は秘書官の執務室に居りますので、ご連絡頂ければ直ぐに参ります。」


「分かりました。案内、ご苦労さまでした。」


「では、私はこれで失礼致します。」


 マリエッタ様の表情は堅かった。簡単に警戒心が解けることはないのでしょう。

あのお三方はリリーティアの時とは違い、人前で妙にベタベタする様子は無かった。しかし、お互いを愛称で呼び合っていた。


マリエッタ様は今でこそ大聖女候補という立場におられるが、つい最近までただの男爵令嬢であったはず。そのような令嬢が馴れ馴れしく婚約者のいる王太子と愛称で呼び合うなど・・・。

ああ、嫌だわ。

あの悪夢を思い出すよう・・・。


「どういう手を使った?」


いきなり待ち伏せしていたかのように現れたのは、ナディール王国の王太子、ライオネル・ナディール様。

大変見目麗しく、艶やかな黒髪に深いエメラルドグリーンの瞳。

眼光鋭く、まるで鷹のようなお方。


「どういう手とはどのような事をおっしゃっているのでしょうか?」


「帝国の者が王国出身の大聖女候補に近付くとなれば、何か手を回したと考えるのが普通であろう。」


「考え過ぎにございます。

私の能力を買って頂いたに過ぎません。」


「なるほど能力か。確かにソフィーア様が一国の思惑通りに次期大聖女の秘書官を選ぶはずはない。

其方は確かアレクサンダーの元婚約者だったな。

その有能さ故に王妃の座に就いて国政を担うより、大聖女に近づいて世界を掌握しようとの策略か。」


え?世界の掌握?!ちょっと私のこと買いかぶり過ぎですわ。どんだけ有能だと思われてるのでしょうか?


「そんな思惑など微塵もございません。私がマリエッタ様をいいように出来るはずございません。マリエッタ様が私のいいなりになりたいのであれば別ですけど。」


「やはりそういう魂胆か。」


え・・・微妙に話が通じないお方ですわね。


「其方、これだけは覚えておけ。マリエッタに何かすれば我が国の総力を挙げて、周辺国と協力してでも其方の祖国を必ずや潰す。ただの脅しではない。」


「どうぞそのように。」


私はあの国から追放された身。今は何の関係もないのです。

それにマリエッタ様に何か危害を加えるつもりなんて毛頭ありません。

王太子というお立場の人にここまで凄まれると、さすがに恐怖を感じずにはいられない。怖いと思う気持ちを心の奥底にぐっと押し込む。


「ふっ、さすが帝国の公爵家の令嬢か。表情一つ変えずに受けて立つと申すか。」


え・・・そんなこと言ったつもりないんですけど。


「マリエッタのことは其方の好きにはさせん。其方が少しでも変な動きをすれば命が無いものと覚悟せよ。」


そう言い残してライオネル王太子は去って行った。

先の戦で妹のエリザベート王女を亡くされた影響なのでしょうか?

過保護とも思えるその態度に、私はマリエッタ様を羨ましく感じ、逆に誰にも守って貰えず国外追放の身となった自分を恨めしくも思った。


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