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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第一章

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37.討伐からの帰還

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 辺境伯の従者がわたし達が泊まる客室へ案内してくれた。


 わたしが通された部屋はもともと騎士団の上官のお部屋みたいで、華美な装飾は殆ど無く、風景画が一枚飾られている程度だった。絨毯やカーテンは紺色で、調度品はダークブラウンのシンプルな設えだった。


 そんな男性向けのお部屋だから、女性の使用人さんが気を遣ったのだろう。クッションや、テーブルクロスにはエステルスーン領特産の織物布が使われている。エステルスーン領特産の織物は、赤い生地に黄色や黒の糸で、簡略された植物や動物、格子柄などの模様が織り方のパターンで表現された民族工芸のような物だった。


 男性向けのお部屋に女性らしい織物布がちょっとミスマッチだったけど、使用人さんがわたし達のために用意してくれたと思うと、歓迎してくれているみたいで嬉しかった。


 今日はもうエリーも聖力枯渇で動けないから、このまま休憩に入る。側仕えのメリッサにも休憩して欲しいので、一歩も部屋を出るつもりがない事を伝えた。これでメリッサも夕食まではゆっくり出来るんじゃないかな。


 簡単に荷解きをしていると、窓の外から子供達の歌声が聞こえてきた。窓の外を見れば小さな庭園があり、避難してきた村の子供達が遊んでいた。村が略奪にあって怖い思いをしたであろうに、子供達が元気でいてくれるのはなんだかほっとする。


 子供達の歌声に耳を澄ませば、とても懐かしさを感じる歌だった。アマリィス草の事を歌った歌みたいだ。アマリィス草とは寒い地方に生息する、可憐で薄紫色の花を咲かせる植物だ。大変希少な植物で心臓病用のポーションの素材にもなる貴重な薬草でもある。


 しばらく子供達の歌声を聞きながら、ソファでまどろんでいると、にわかに城内が騒々しくなった。それと同時に窓の外から多数の馬の蹄の音が聞こえる。


 急いで窓の外を見ると、西の城門から、ライオネル王太子が率いる部隊が、討伐から帰って来た所だった。


 ライオネル王太子はご無事のようだ。王太子の後を続く騎士達を見ると、傷を負った者がちらほらいるようだったが、急を要するような人は見当たらない。しばらく討伐部隊の帰還を眺めていたが、隊の最後尾にいた者に目を見張った。


 隊の最後尾には、捕虜となった北方の少数民族の人達が荷車に、まるで荷物が積み込まれるように乗せられ馬に引かれていた。遠くから捕虜を目にする分には、そんなに驚かなかったと思う。でも、遠目で見てもはっきりと分かる。わたしと大して年の違わない若い女性や、十歳くらいの少年の姿が混ざっているのを。


「そこまで深刻だったなんて・・・。」


 わたしは『略奪する少数民族』イコール『悪』と思っていた節があり、北方の飢饉の深刻さに初めて気がつき、穏やかな気持ちではいられなかった。


 翌朝、ライオネル王太子から呼び出しを受け、聖力の枯渇から復活したエリーと共に執務室へと向かった。


「昨日は到着早々、村民の治癒で大変だったな。」


「そのために私がここにいるのよ。ライ兄上こそ、討伐の成功おめでとうございます。

騎士達は皆無事なのかしら?」


「ああ。リカルド商会の特製ポーションが優秀だからな。聖女の治癒が無くても大丈夫そうだ。」


「それは結構なことですわ。」


「今回騎士団には、聖女の治癒は必要無いんだが・・・・。

捕虜となった少数民族の者の中で、命の危険がある者がいる。今のところ死なせるつもりはない。診てやって欲しい。」


「お安い御用ですわ。ライ兄上。」


 そうしてわたし達はライオネル王太子からの依頼を受け、敵であるはずの捕虜の症状を見に行く事になった。

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