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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第一章

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24.使用期限

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 最近のわたしはポーションの調合にはまってる。意外と楽しいのだ。


 薬師の先生にお願いしたら、夜間、王城内にある宮廷薬師の方々が帰った後のポーション工房を使ってもいいと許可を貰えたので、時々、習ったばかりのポーションを何度も調合してみたり、独自に研究してみたりしている。


 なぜここまで夢中になれるのかは、自分自身分からない。


ただひとつ分かっていることは、『御身代』としてしか居場所のないわたしにとって、マリエッタ・シューツェントという名の一人の人間として『やりたい』と意思表示をして、唯一やらせて貰っている事だと言うことだった。

もしかするとポーションを調合している間は解放感のようなものを感じているのかも知れない。


 将来、『御身代』の任を解かれたら、薬師になろうと本気で考えている。退任時に謝礼金が出るらしいから、それを元手にわたし専用のポーション工房を作ってもいいかもしれない。

それなら結婚をしていなくてもひとりで生きていけるだろう。


 そんなことを考えながら、大型の鍋でたくさんの湯を沸かす。そしてもう一つ中型の鍋を用意し、疲労回復のポーションを調合し始める。


 この世界にあるポーションという薬は、使用期限が短い。雪降る寒い季節でも二週間、夏の暑い季節なら、冷暗所保存で五日間だ。


そんな使用期限では短すぎるように思えた。

特に夏場だと在庫を腐らせてしまうのがもったいなくて作り置きができない。

最悪、本当に必要なときに品切れだったり使用期限切れで使えなくて処置が遅れた、なんてことだってあり得る。


 薬師の先生に聞いた話によると、ポーションの瓶や蓋を『熱湯浄化』と言って、沸騰した湯の中に十分ほど浸していることが分かった。


「いつ熱湯浄化をしているのですか?」


という問いには、空瓶を回収した直後に洗浄して、それを熱湯浄化をしているが、それがどれほど前に熱湯浄化をしたものかは分からない。との事だった。


それではポーション液を瓶詰めする前に雑菌が付着してしまうではないか。そう思った。


 前世でのお母さんが、梅ジュースを家庭で作ったり、家庭菜園で穫れた苺をジャムにして瓶に詰めたりするのを手伝った事がある。


その時、瓶を煮沸消毒するのは、瓶詰めをする直前だったはずだ。しかも、瓶や蓋だけでなく、お玉やスプーン、布巾まで煮沸消毒していたはずだ。


 前世の手作りジャムの瓶を煮沸消毒した時の方法を使えば、使用期限が延びるかも知れない。


そう考えて、瓶や蓋、お玉、布巾、トング、漏斗などの道具を煮沸消毒するべく、たくさんのお湯を沸かした。


お湯が沸き、瓶や蓋、その他の道具を『熱湯浄化』(前世で言う煮沸消毒)をする。


熱湯から出したら、触れるまで粗熱をとる。並行作業で作り上げた出来たてのまだ熱いままのポーション液を瓶に注ぎ込み蓋をする。


ポーション液が熱いままで蓋をしたので、蒸気で瓶内の圧力が高くなっているため『脱気』をする。


蓋を少しだけ緩めて、「フシュッ」という音がしたら中の圧力が下がった証拠だ。直ぐさま蓋を締め直し、冷ませば出来上がりだ。


「よしっ、できた!後は使用期限の検証だわ。」


今の季節は夏。一ヶ月経っても飲めるようならば大成功だ。冬なら三ヶ月は余裕だろう。一日一本服用するとして、予備も考えて四十本必要かな。


 わたしは四十本の疲労回復ポーションを作り上げ、気が付けば大型と中型の鍋を火をかけたせいで工房中が熱気でむんむんだった。季節も夏ということもあって、汗だくになってしまった。


「ま、窓開けよ・・・。」


 窓を開けようとしてレバーに手を掛けた時、他に誰も訪れるはずのないこの部屋へ、来訪者を知らせる扉を叩く音が聞こえた。


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