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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第二章

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177.マンゴージュース・貝殻拾い

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 翌日、朝から孤児院へ転移した。

スーザン、ドミニク、護衛にはシャルロッテを伴って。


服装は平民が着るような赤いワンピースにエプロン。ブラウンのかつらとだて眼鏡をかけた。

別に大聖女だってバレてもいっかなーとか思うけど、市井ではこっちの方が動きやすい。


 今からマンゴージュースの仕込みを始めます。

基本十歳以下の子供達のお仕事だけど、大きい子達にも手伝って欲しいから皆で参加。


「はーい、皆さんちゅうもくー!

今日から、皆さんにはマンゴージュースを作って、街で売ってお金を稼いでもらいまーす!」


「「「はーい!!」」」


元気があって大変よろしい。

まずは手をキレイに洗ってマスクを着用。

衛生管理は大切です。


最初に道具や瓶を熱湯浄化。

要領はポーション作る時と同じですね。

火や熱湯を扱うから大きい子が担当して下さい。


熱湯浄化している間に他の子は庭園で採れたマンゴーをキレイに洗って、半分に割って、種を取って下さい。

皮は剥かずにそのまま圧搾機に放り込みます。

圧搾機もお湯をかけてキレイに洗ってから衛生的に使いましょう。


圧搾機上部のハンドルをぐるぐる回して圧をかけて下さい。

はいはい、みんなにやらせてあげるから。

押さない押さない。

揉めるから順番にね。


ぐるぐる ぐるぐる ぐるぐる

じゅわーっ

じょろじょろー


「「「わー!出てきたー!」」」


搾られたジュースが圧搾機の出口から流れてくると歓声が上がった。

ジュースの新鮮な香りが広がる。

うーん、おいしそ。


搾りたての果汁一〇〇%のジュースはデザート感覚でいただくにはいいけど、喉が乾いている時には濃厚すぎる。

少しだけ水で希釈して飲みやすくして、酸化防止にレモン果汁を加えた。


それを熱湯浄化した瓶へ詰めていく。

瓶は牛乳ビンに近いものだけどそれよりも少しだけ口が細長い。

コルクで栓をして完成。


 作ったジュースは三十本ほど。

それを気化熱を利用した冷蔵庫、ポットINポットで冷やす。

それは大きな素焼きの壺の中に小さな壺を重ね、その隙間に砂を詰めて水で濡らしたもの。

それを三台用意して一台あたり十本づつ入れた。

冷えるまで数時間かかるだろうから売りに行くのは午後にした。


 販売価格は銅貨六枚。

瓶を返却すれば銅貨三枚を返す。

冷えてるという付加価値が付いてるから気持ちお高めの価格設定。

瓶は返却されたとして三十本売り切れば銅貨九十枚(銀貨九枚)の売り上げになる。


ここでの銅貨一枚の価値は、手のひらに乗るような小さめのパンが二つ買えて、銅貨五枚で大きな丸パンが一つ買える。

ここの孤児院では一食当たり大きな丸パンが四つ必要だと言うことだった。

それを子供二十七名、成人五名、そしてテレサ院長の総勢三十三名で切り分けて食す。

わたしが支援するまでは大きな丸パン一つを小さく切り分けて一人一切れづつとスープとバナナ半分という食事もあったそうで、食べ盛りの子供達にはとてもひもじい思いをさせていたようだ。

単純に考えると一日当たり大きな丸パン十二個、銅貨六十枚が必要となる。


銅貨九十枚の売り上げから瓶の補充やレモン、マンゴーの買い足しなどに当てたとしても何とかなるんじゃないかな。


 子供達にはお金を持ってそうな人に売りましょう!と言ってある。

実際どのくらい売れるのかはやってみなくちゃ分からないけどね。

子供達の頑張りに期待する。



 マンゴージュースの仕込みの後は、真珠養殖にとりかかる。


と言ってもまだ工房が完成していないし、養殖用の網かごも納品されていない。

まだまだ準備不足だけど、出来ることからやっていく。

とりあえずは母貝を採ってくることと、核作りをすることにした。


 皆で桶とかごを持って海へお出かけだ。大きな子は小さな子の手を引き、幼児は成人してる人が抱っこする。


「マリーさんは大聖女様の使者様だったんだねー。」


「マリーさん、マリーさんは大聖女様と仲良しなのー?」


「昨日、孤児院に大聖女様が来てくれたんだぜー。僕達は会えなかったけど。」


わたしに海辺の殻剥き小屋でいろいろ話しかけてくれた子も、そうでない子も気さくに話しかけてくれる。


マリンはわたしが大聖女であることを話してないようだった。わたしも敢えて話さないけど。


心なしか数日前に初めて会ったときより、皆顔色もよく元気になった気がする。充分な食事が摂れるようになったのだろう。


「そうね、大聖女様とは仲良しよ。

大聖女様がここの孤児院の皆がいい子達ばかりだから、マリンさんと一緒に貴方達を助けなさいって仰ったの。」


ふとマリンを見ると、マリンは静かに目礼した。


「僕もいつか大聖女様に会えるかなー。そしたら直接お礼を言うんだっ。」


「あたしもー!」


「ぼくもー!」


「ふふ、そのうちきっと会えるわ。

貴方達の気持ちは充分に伝わってるわよ。」


 おしゃべりしながら徒歩十分。

海辺へ到着した。

そこは以前真珠貝の殻剥きをした小屋の近くで、殻剥き小屋から少し離れた場所にわたしの工房が建築中だった。


 成人組は海へ潜って母貝を集め、フジツボとか余計な付着物をそぎ落としきれいにしてもらう。

わたし達は核にするための貝殻集めだ。


「貝殻は、五ミリよりやや大きめの欠片にして、それを砥石やヤスリで削って五ミリの珠を作ります!

だから厚みのある貝殻を拾って下さいね!」


「「「はーい!!」」」


海辺で子供達が散り散りになって貝殻を拾う。

徐々に核に加工するのにいい感じの二枚貝の貝殻が集まる中、幼い子には『厚みのある貝殻』というものが理解できないようで、巻き貝や綺麗な石、アサリや小さなカニなどが混じってくる。

まあ、それはご愛嬌ということでとりあえず持ち帰ることにしよう。


「マリーさん、あっちにたくさん貝殻あるよ!」


「たくさん?どこに?」


「こっち!こっち!」


一人の女の子に手を引かれて連れて来られたのは、貝殻捨て場だった。

山のように積み上げられた貝殻のほとんどが真珠貝の貝殻で、内側の面が真珠層によって艶やかな虹色に輝いていた。


「凄い量ね。

なんだかもったいないわ。」


「これ、要る?」


「厚みのある貝殻だけ拾って行きましょう。」


「はーい。」


これ、何かに利用できないだろうか。


そう考えて、前世で卵の殻や貝殻がお酢に溶けるのを思い出した。

だけどこのままお酢に浸けても真珠層まで溶けてしまう。

内側だけお酢に触れないよう防護する方法・・・糊を塗るみたいな・・・。


そうだ。

確か布地の染織技術で、染めたくない部分に蝋を塗る技法があったはず。

ろうそくを溶かして塗ってみようかしら?


「マリエッタ様、如何なさいましたか?」


貝殻の山を見つめながら考えごとをしていたわたしにスーザンが声をかけた。


「捨てられた真珠貝の貝殻よ。

何かに利用できないだろうかと思って。」


「まあ!真珠貝とは貝殻まで美しいのですね。」


スーザンは貝殻を一枚手に取ると、しげしげと見つめた。


「その美しいのが内側だけっていうのが残念なのよね。

スーザン、至急お酢を瓶三本、ろうそくを一箱手配して欲しいの。」


「何に使われるんですか?」


「貝殻をキレイにするのよ。」


「お酢とろうそくでキレイになるとは思えませんが・・・すぐに手配致しましょう。」


スーザンはドミニクの方へ駆け寄ると、すぐさま指示を出す。

指示を受けたドミニクは浜辺を去って行った。


わたしは貝殻の山からなるべく形の整った貝殻を選び、桶へ入れると孤児院へ持ち帰った。



 孤児院へ戻り、皆で貝殻をキレイに洗う。

ブラシで擦って汚れを取る。

このくらいの作業なら小さな子でも手伝える。こびりついた付着物はヘラを使ってそぎ落とした。


綺麗な石やアサリ、カニは申し訳ないけど別の桶へ除けた。

それを採ってきた三歳くらいの子の前に「はい、貴方の分よ。」と置けば真剣な眼差しでカニと格闘していた。


ちなみに集めた母貝は、かごの中に入れて錘を付けて浅瀬に沈めておいた。

同じ真珠を採ることを生業としている人に盗まれないよう、日が沈むまでは見張りを付けて。


 洗った貝殻は、糸鋸を使って小さく切る。主に十一歳以上の子の仕事だ。

その切り出された小さな欠片を、スティック型のヤスリや砥石を使って丸く削り出す。


ギーギーギー

シャッシャッシャッ


貝殻って意外と硬い。

糸鋸の刃がなかなか入っていかなくて、思ったより時間がかかりそうだ。

歪みの無い綺麗な球体にするよう注意を促す。


核は五ミリの大きさで一粒銅貨五枚の出来高制にした。

核の大きさを揃えないと粒の揃ったネックレスはできないからね。

だから五ミリが基準。

五ミリより大きくても小さくても誤差があれば、その誤差の大きさによって銅貨四枚、銅貨三枚と買い取り価格を下げることにした。


「核が大きければ大きな真珠が出来るのではないのですか?」


ドミニクにそう聞かれたけど、核が大きいと吐き出されてしまう可能性が大きくなる。

うまくいけば大玉真珠が出来るけど、吐き出されてしまえば意味がない。

そう説明した。


 核作りは子供達に任せてわたしは別作業。

とりあえずの試作品だから、貝殻は十枚くらいでいいかな。


まずは鍋にお湯を用意して、ろうそくを湯煎にかけて液状に。

それを貝殻の真珠層の表面を被うようにスプーンで垂らしてぬりぬり。


何をやっているのか気になるようで時々子供が覗きにくる。

出来上がるまでのお楽しみです。


貝殻を入れた桶の中にお酢をどばどば注いで、あとは放置。

ぷつぷつと小さな泡が貝殻から生まれた。確かこれは二酸化炭素だったと思う。


一晩このままにしておきたいから倉庫の片隅に置かせてもらった。



 子供たちは昼過ぎにマンゴージュースを売りに行く予定。

成人組はもう一度海に潜って来るって。


 核はどれだけあってもありすぎることはないけど、ひたすら貝殻を削り続けるのは地味な作業だし疲れるし飽きる。

子供達はお勉強や、家事もやらなきゃいけないし、下の子の面倒も見なくちゃいけない。

あまり無理をせずに頑張って欲しい。


 とりあえずマンゴージュース販売は本格始動したし、真珠養殖事業は秋から母貝の抑制(核挿入前に母貝の活動を抑える)に入るからそれまで母貝取りと核作りを続けてもらう。


明日もう一日だけ様子見に来て・・・お酢に浸けた真珠貝の出来栄えも確認しなくちゃいけないし。

その次に来るのは秋にしよう。

その頃には新しい孤児院もマリーパール工房の社屋も独身寮も完成しているだろう。


 後はマリンとドミニクに任せてわたし達は別荘へと転移した。


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