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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第二章

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176/231

176.マリンに報告

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 ハーパーベル伯爵とのパシク孤児院譲渡契約も無事締結した。


今は南神殿の神殿長執務室に集まってお茶してる。さっきまでいたハーパーベル伯爵邸ではアイスティーを一口も飲んでいなかったのでここで出されたアイスティーがすっごく美味しい。


はー疲れた。

一番疲れたのはスーザンだろうけど。

彼女もかなり鬱憤が溜まってたみたいでアイスティーを凄い勢いで飲み干してる。

それに神殿長も、付き添いの白神官も少し疲れた顔をして無言のままだ。

皆ハーパーベル伯爵の言動に思うところはあるみたいだけど、敢えて口には出さないようにしてる。


 でも世の中色んな人がいるのね。

ハーパーベル伯爵は孤児達のことを何一つ考えずに目先の利益ばかり考えてる人だった。

あの人が領主だなんて領民は苦労を強いられるばかりだわ。

それにマリンのことはどうなってるんだろう。

出迎えや見送りの時、玄関ホールにいなかったということは一人だけ大聖女が来ることを知らされていなかったってことでしょ?

それにマリンが着ていたシンプル過ぎるドレスとイザベラやチェルシーが着ていたドレスを比べると・・・。

他家の問題に口出しするつもりはないけど、いかがなものかと思ってしまう。


 だけどこれでもうパシク孤児院の庭園で見かけたボロボロの遊具も、踏み抜きそうな床板も、雨漏りしている屋根も全て直してあげられる。いいえ、直すどころか建て替えてあげられる。


パシク孤児院へ行って、大聖女の直轄になったことと、建て替えることを伝えに行かなきゃ。


 わたし達は休憩を終えるとパシク孤児院へと転移した。







 転移したのはパシク孤児院の院長室。

驚いたふうなテレサ院長とマリンが目に入った。

先に来ていたドミニクが転移水晶を設置したのが院長室だった。

行くことは伝えてあったけど、何時になるのが伝えてなかったから突然現れたわたし達に二人は慌てて礼を執った。


「ごきげんよう、テレサ院長、マリンさん。どうか楽にして下さい。急ぎ伝えたいことがあるの。」


「ようこそおいで下さいました、大聖女様。今すぐ飲み物を・・・。」


「今頂いてきたから飲み物は結構よ。座りましょう。」


わたし達は院長室のくたびれたソファーに腰をかけて、向かいにテレサ院長とマリンが座った。


「先日は大聖女様だと気か付かず大変なご無礼を・・・。」


テレサ院長と一緒に頭を下げながらマリンが謝った。


「どうか頭を上げて。変装していたんだもの。どう?驚いたでしょ?」


わたしはヘラリと笑って見せる。

するとマリンもニコリと笑ってくれた。


「はい。とても驚きました。

大聖女様に大変失礼をしたと焦ったと同時に、子供達を助けに来て下さったと胸が熱くなりました。」


「前回こちらへ視察に来て、テレサ院長とマリンさんの子供達に対する献身に心を打たれたわ。

女神様から貴女達を助けよとお導きがあったの。子供達が生活していけるよう、わたしもできる限りのことをしていくわ。」


それからこのパシク孤児院がわたし直轄になったこと。

次期孤児院院長にマリンを指名したこと。

パシク孤児院の土地や建物もわたしの物になったので、これから建て替えをすること。

それらのことを説明した。


「ほんに、ほんに、何とお礼を申したら良いか・・・。」


テレサ院長は開いているのか閉じているのかよく分からない細い目に涙を滲ませながら繰り返しお礼を言った。


おばあちゃんの涙というものにはどうにも胸が締め付けられる。

長年苦労を重ねてきたお方に喜んでもらえたのなら、ここを手に入れてよかったんじゃないかと思えた。


マリンも深々と頭を下げてお礼を言うと、テレサ院長と手を取り合って喜んだ。


「マリンさん、次期孤児院院長に貴女を指名してしまったけど良かったかしら?」


「はい、いずれにせよテレサ院長の後は私が面倒をみていくつもりでした。」


「そう、良かった。

マリンさん、いい機会だから副院長として正式に職員になりませんか?

テレサ院長と同額の給金を支給するわ。」


貴族の令嬢というのは当主の許可がなければ自由になるお金などない。

恐らくマリンに自由にできるお金はないだろう。

下級の白神官と同額の給金となるが、きっとマリンの助けになる。


「ありがとうございます。

大聖女様のお言葉に甘えさせて頂きたいと存じます。心からこの孤児院へ尽くしていくことをお誓い申し上げます。」


「頼りにしています。」


マリンは榛色の瞳を潤ませながら嬉しそうに微笑んだ。


 スーザンが下級の白神官の俸給は月金貨五枚程度だと説明していると、扉を叩く音がした。


「ドミニクです。建築技師の白神官を連れて参りました。」


いい感じのタイミングでドミニクが建築技師の白神官を連れて来た。


「ご苦労さま。」


「工房の方は順調で二週間後には完成します。」


「そう、早いわね。」


もうすでに海辺の工房の建築は着手していて、そちらで作業指示を出した後こちらに来たとのこと。

動くの早くて何より。


ここからは孤児院建て替えについての打ち合わせをした。

テレサ院長とマリンの意見を取り入れた設計をする。


建築技師の白神官は孤児院建設の経験があるらしく、既にある設計図を少し変更する程度で済むらしいので二、三日後には、資材の発注をするそう。


取り壊しまでもうしばらくかかるから、雨漏りについては応急措置だけ施すことになった。


 そしてこの孤児院は元は廃校になった学園であっただけあって建物も敷地も広い。

建物の規模は縮小されることになり、真珠養殖事業の社屋も建てられるというので、そうしてもらうことにした。

工房名はどうするのかと聞かれたから、真珠を扱う工房だから『マリーパール工房』という名前にした。


 それでも土地に余裕があるので、『マリーパール工房』の従業員用の独身寮も建てることにした。


未だ孤児院から離れられない成人した者達のため。

その者達を従業員として雇用して給金を支払うつもりでいるけど、給金は相場に合わせるつもりだ。

ハーパーベル領は税金が高いので、相場通りの給金では住むところもままならなくなる。

これからも孤児院の近くで孤児達を見守って欲しいし、頑張って働いて欲しいから寮という形で支援したい。

因みに独身寮の入寮資格はパシク孤児院出身に限らず、『マリーパール工房』で働く独身者なら誰でも受け入れることにした。


 孤児院の建て替えについてわたしから言えることは何もないので、ある程度重要な打合せが済むと帰ることにした。


細かい打合せは建築技師の白神官とドミニクとマリンにお任せ。

明日は朝から来ることを伝えて、別荘へと転移した。







 別荘へ帰った時にはもう日は沈みかけていた。

テラスで心地良い潮風を浴びながら夕陽を眺める。


「ケビン、ケビン、今話せるかしら?」


腕輪の水晶玉に向かって呼びかける。


『ああ、大丈夫、今俺一人だ。』


「おかげさまでパシク孤児院の譲渡契約は無事締結したわ。

ケビンのここでの任務も終わりよ。

次の任務まで少し日が空くことになるけど。どうする?先に国へ帰る?」


『いや、こっちで情報収集の伝手を作っておきたいからお嬢達が帰る時に一緒に帰るよ。』


「わかったわ、三日後に帰るわよ。」


『了解。ところでお嬢、約束忘れてないよな?』


約束とは、ケビンがわたし専属の諜報員になることを条件に、兄のロビンと一緒に夜会へ出席することだった。


ロビンとケビンの家、アンダーソン子爵家は、護衛騎士として王女であるエリーを護りきれなかったことで評判が落ちてしまった。

その後ロビンが大聖女であるわたしの護衛を続けていることで信頼は回復しつつあったが、ここ最近は護衛についてもらう機会が減ってしまい、そのせいで大聖女の不興を買って辞めさせられたのではないかと噂が立ち、再び評判を落としてしまった。


そのアンダーソン子爵家の名誉回復のため、わたしはロビンと一緒に夜会へ出席する約束を交わしていた。


「もちろんよ。私、ダンス苦手なの。

ロビンに足を踏まれる覚悟をしておくように言っておいて。」


『大丈夫だ。秋の収穫祭の後にやる夜会へ参加してもらう予定だから、練習すれば間に合う。』


「えー・・・わかったわよ・・・。」


どうやらダンスの練習は不可避らしい。

三日後にケビンは宿を引き払いこちらへ来ると言って通話を切った。


 本音を言うと、夜会へ行くのはちょっと不安。なんせ御身代やってた時はライオネル殿下かアントニオ様かリカルド様くらいしか話しかけられなかったから。

大聖女候補になってからもまともに夜会へ出たことないし。


 一応、主要な貴族の名前と爵位は憶えているけど、話しかけられたらどうすればいいのか・・・。


夕食時に何気なく話題にしてみた。


「───という訳で、わたし社交界での身の処し方が分からないのよねぇ。」


「そういう時は介添え人を伴ってはいかがでしょうか。」


───介添え人。

社交界に不慣れな若い女性に付き添いアドバイスしたり、絡んでくる男性から守ってくれたりする経験豊富な女性。


「いいアイデアだと思うけど、残念ながら頼れる知り合いがいないの。

どうしよう・・・。」


「それではナディール王国出身の聖女に頼んでみてはいかがでしょうか?」


うーん。

聖女ならわたしの部下になるから頼めば断られないと思うけど、よく知らない人に頼むのも・・・。


「スーザンにやってもらえたら一番なんだけどなぁ・・・。」


ついポロリと口からこぼしてしまった。

スーザンはナディル帝国の元公爵令嬢で、元帝王の婚約者だ。

こちらの貴族が集まる場に連れて行ったら敵意を向けられる可能性だってある。

そんな場所はスーザンだって避けたいはずだ。


「私でよろしければお伴致します。」


「え?!いいの?」


「はい。マリエッタ様の専属秘書になった時からどのような場へも赴く覚悟は出来ておりました。

それに今はナディールの一国民でございます。胸を張ってマリエッタ様の隣に立ちましょう。」


「た、頼もしい・・・。」


お言葉に甘えて夜会にはスーザンに付き添ってもらうことになり、護衛にグローリアが付いてくれることになった。


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