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あたしも聖女をしております  作者: 斉藤加奈子
第二章

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129.ご褒美

誤字脱字報告ありがとうございます!感謝です!

 ニュースです。

なんと、テオが両手両足の指の数を超えて、二四まで数えられるようになりました!!


正しく言うと、空で一から数えるだけならかなりの数を数えられていた。

しかし足し算となると指が必要だったのだ。

それが今では十以下なら指は使わなくても計算が出来るし、二四までなら頭の中で棒を足して計算が出来る。


「凄いわ!テオ!」


「よせやい、オレのいちじるしいせいちょーにはきょーがくさせられるかもしんねぇけど、これくらいどうってことねぇよ。」


「またまたー、ご謙遜を!」


「いしししっ。」


二四どころか、百や千の桁の計算が出来るようになる日もすぐそこまで来ている!

絵本だって、七割方読めるようにもなったし、そろそろ新しい絵本を買わなくちゃね!


と言うことで、公演中のエリックが戻って来たらお買い物へ行くことになった。

前回のピーターズ広場での公演ではテオとロッキーが素敵な芸を披露してくれたので、ファンとしてわたしからのプレゼントも買ってあげたいし。


「エリックが戻るまで、集中してお勉強よ!!」


「えー?!」


「えー?じゃありません!」


引き続きテオには文字の書き取り練習をさせる。しばらくするとエリックが戻って来た。


「ただいまー。」


わたしとテオが勉強をしている姿を見て目を細めるエリック。


「おかえりー。」

「おかえりなさーい。」


そんなエリックに笑顔で返すわたし達。

わたしとテオがニコッと笑顔で「おかえり」と言うだけで大抵のことは許してくれるエリック。

それを知っているわたし達は早速お買い物へ行きたいと言うと「行こう!」と機嫌良さそうに言ってくれた。


わたし達はロナウドお爺さんに留守番を任せ、西の森市場へ買い物へ出かけることになった。


「ロッキー、お出かけするからリードを繋ぐわよ?」


「わふ、わふ。」


お出かけだと言っているのに、なぜか仰向けでお腹を見せてくるロッキー。

目の前にはふんわりと空気を含んだ魅惑の腹毛が晒される。


「ああん、もうっ。お出かけなのよ?

リードが付けられないわ。」


わしゃわしゃわしゃ。

思わずロッキーのお腹を撫で回す。

温かくて柔らかくて大好きな腹毛。

わたしの撫で回す手に合わせてロッキーは体をくねらせる。

しかし困った・・・リードが付けられない。


「ったく。ロッキー、甘えるんじゃない。行くぞ!」


エリックの一言でロッキーは起き上がり大人しくリードに繋がれた。


ロッキーはテオが引き、わたしとエリックが並んで歩く。

すぐ後ろにはメリッサが歩き、視界にはいないけど少し離れてロビンが護衛に付いていた。


 西の森市場はエリック達が拠点としている場所から歩いて十分ほどの所にある。

ロンタナ市場みたいに規模は大きくはないけど、地元の住民が生活に必要な食料や生活雑貨を調達するため、そこそこに賑わっている。

エリック達芸団もこの市場で食料を調達しているんだって。


「マリー、この前は公演観に来てくれて有難うな。」


「え?気が付いていたの?」


「何言ってんだよ。目が合っただろ?」


あ、あの時の。やっぱりわたしと目が合ったんだ・・・。

何だか嬉しいのと、ちょっと照れくさいのとで少しだけこそばゆい。


「で・・・一緒にいた二人の男は・・・誰?」


エリックの声が街のざわめきで消えてしまいそうな小さな声で聞いてきた。


二人の男・・・ライオネル王太子とリカルド様のことかしら。


「偶然あの劇場で居合わせたの。

仕事でお世話になっている方々よ。」


正体を言えるはずもないから、嘘にならない範囲で答える。


「そ、そうか。偶然か・・・。

ほら、テオ、はぐれないように手、繋ぐぞ。」


テオが握っていたリードを受け取り、もう片方でテオの手を握るエリック。

本当に仲がいいよね。この兄弟。


「ほら、マリーもはぐれないように手繋いでやるから。」


と手を差し出したのは、テオだった。

思わずクスリと笑みがこぼれて、わたしよりも二回り小さな手を握る。


少ししっとりとした小さなその手を握ると、エリックと目が合った。

まるでテオを介してエリックとも手を繋いでいるような気がして少し恥ずかしい。

エリックも照れくさそうな笑顔を見せてくれて、ああ、わたしと同じ気持ちなんだと思い、ふと心に温かいものを感じた。


 三人で手を繋いだまま本屋に入る。

そこでは『ろばといぬとねことおんどりの合唱隊』というタイトルの絵本を買った。

本屋を出ると匂いに惹かれおやつに焼き栗も買った。


「マリー、絵本ありがとう!

今度舞台見に来た時には、マリーだけにウインクしてやるからな!」


「ふふふ。ありがとう。」


ファンとしては推しメンからウインクしてもらえるなんて最高のファンサービスだ。


そろそろテントへ戻ろうとしたとき、雑貨屋さんの前を通りかかった。

ふと、あるものが目に入った。

アレにちょうどいい代物。

浅型の木製のお皿を五枚購入した。


「同じ皿を五枚も買ってどうするんだ?」


「ふっふー。テントへ戻ってからお教えします。」


テオとロッキーにぴったりのものを見つけて、ご機嫌でテントのある拠点へと戻った。


今からやろうとしていることはこのお皿を投げたり、ロッキーが駆けたりする。

そのため広い場所へ出た。


「ロッキー!行くわよー!」


「わふ?」


遊ぶの?何して遊ぶの?

という顔のロッキーに向けて、浅型の木製の皿を表裏逆さまにして水平に投げた。


「わふっ!」


「「おおっ!!」」


そう、フリスビーだ。

ロッキーの上方を飛んだお皿を、ロッキーは華麗なジャンプでキャッチした。


わたしは持っているお皿の二枚目、三枚目と次々に投げる。

ヘタクソなわたしが投げたお皿は二枚目はかなり手前に、三枚目は大きく右に逸れた。

それでもロッキーは猛ダッシュで二枚目も、三枚目もキャッチして見せた。


「「おおー!!」」


歓声を上げるエリックとテオ。

ロッキーってばなんて優秀な子なのっ?!

わたしは堪らずロッキーをわしゃわしゃわと撫で回した。

ロッキーは楽しいっ!もっと!もっと!と尻尾をパタパタ振り回していた。


「すげえっ!!マリー!

オレにもやらせてくれっ!!」


興奮した様子のテオに手にしていた残りの二枚のお皿を渡し、地面に置かれた三枚のお皿も拾ってやる。


初めて投げるフリスビーにテオも最初は手こずった様子だったが、次第に慣れてくるとわたしよりも上手に投げられるようになっていた。

わたしがヘタクソなだけかも知れないけど。


テオは飲み込みの早い子だ。

しばらく練習すればコントロールも定まるだろうし、ロッキーと息のぴったり合った連携プレーなんかも出来るようになると思う。


「マリーも面白いことを知っているね。あの様子ならしばらく練習すればお客さんの前に出せるようになるかも知れないな。」


「そうね。きっとなれるわ。」


「お茶でも淹れるよ。休憩しよう。

テオ!休憩するぞー!」


「すぐいくー!」


わたし達は買ってきた焼き栗を剥きながらエリックが淹れてきてくれたお茶をいただいた。

こういう食べ方は平民ならではだよね。

エーデル山でマーサと食べた栗の味を思い出した。


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